魔獣も仲良しこよし2

「なんだか魔獣同士も仲良さそうだね」


 ミュコは腕が触れ合うほどジケに近づいて笑いかける。

 やはりスリスリと寄っていく様子は魔獣と似ている。


 そして後ろで怖い目をしているのもエニとシェルフィーナもなんだか似ている。


「それにしても皆さんクモは怖くないんですか?」


「今更なんだよ?」


「いえ、クモの魔獣は結構怖がる人も多いので」


「そりゃお前がジョーリオ使って家から出られないようにした時は怖かったぞ」


「あ、あれは!」


 ユディットが顔を赤くする。

 ジケが最初にユディットを訪ねていった時にはユディットはジケのことを警戒してジョーリオを出して威圧してきた。


 あの時はジケもまだまだ弱かったしジョーリオの威圧感はすごかった。


「だが今は怖くない。……クモの魔獣として見ているよりもユディットの魔獣として見てるからかな」


 言葉遊びのようだがそんなものだとジケは思う。

 クモの魔獣としてだけみると苦手感はちょっとある。


 でもユディットの魔獣だと思うとそんなに抵抗感はないどころかなんだか良いやつにも見えてくる。

 不思議なものだけど、そんなものなのだ。


 フィオスもきっとスライムだとみるとあまり強そうには思えないけれど、ジケの魔獣のフィオスだとみるとなんとなくすごそうな感じもある。


「ユディットも最初はツンケンしてお堅い感じだったもんな」


「そ、そうですか?」


「そーなんだ。今だと会長、会長! ってついて回ってるイメージ」


「うぅ……そ、それもまた……」


「なんだかんだ付き合いも長くなりつつあるからな。ユディットがいてくれると助かるよ」


「会長……!」


 ジケの言葉にユディットは感動したような顔をする。

 ジョーリオにもお世話にはなっている。


「それにしても……フィオスはなんだかハーレムですね」


「……ふふ、確かにな」


 ふとフィオスのことを見る。

 いつの間にか上に乗っているのはイレニアからシェルフィーナに代わっている。


 フィオスはジョーリオの上に乗り、その上にシェルフィーナ、そして左右にはイレニアとスイットがフィオスの体を少しずつを枕にして寝ていた。

 フィオス大人気、他の魔獣たちの中心的存在となっている。


「まあでも気持ちは分かるよ」


「気持ち?」


「フィオスもジケに似てるもん」


「俺がか?」


 エニの言葉にジケは不思議そうな表情をする。


「うん。柔らかくみんなを受け入れてくれる感じ。優しくて、ちょっと可愛いかな」


 エニもジケの横に寄ってくる。


「俺も可愛いか?」


「んー、ちょっとだけ」


「そして安心するんだと思う。ジケがいてくれると心強くてみんな安心するの。フィオスもきっと近くにいるとみんな安心していられるんだと思う」


「……そうか」


 過去でフィオスが魔獣に囲まれている光景など見たことはなかった。

 しかし今回の人生ではフィオスにも魔獣の友達がたくさんできたようだ。


「……ちょっと歩きにくいな」


 フィオスは挟まれていてもジョーリオの上だからいい。

 けれどジケはミュコとエニに挟まれて少しだけ歩きにくそうにしていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る