秘密拠点と秘密の魔物4
「何か……いる?」
少し離れたところに大きなものがいる。
けど何かがおかしい。
「こっちに来てます!」
「リアーネ、ユディット、手伝いは終わりだ! そこの変人にこっちに来い!」
リアーネがモロデラを引っ掴んでジケのところに走ってくる。
「エニは俺の後ろに」
「う、うん」
ジケはエニの前に立つ。
いつものようにフィオスには盾になってもらって魔剣のレーヴィンを抜いて構える。
「何が来るんだ?」
「……分からん」
「分からない?」
「ジケ、どうだ」
「俺にも分かりません。何かが来てるんですけどなんなのか……」
魔力感知には引っ掛かっている。
おおよその形は魔力感知で視えているというのになぜか細かいところが感知できないのである。
まるでモヤがかかっているよう。
ぼんやりと大きな何かがいることしか分からないのだ。
ジケがおかしいのかと思っていたけれどグルゼイも同様だった。
異様な存在がいる。
グルゼイも真剣な目をして何かが迫ってくる方を睨みつけている。
「来るぞ!」
「……何も」
「リアーネ、危ない!」
来ると言ったのに何も来ない。
珍しくグルゼイの感覚が鈍りでもしたのかと思った瞬間ジケがリアーネの前に飛び出した。
フィオス盾に何かが当たる音がしてジケが吹き飛ばされる。
「うっ、大丈夫か! なんだ!?」
リアーネが飛んできたジケを受け止めた。
とてもじゃないが自ら後ろに飛んだ勢いとは思えない衝撃があった。
「一体何が……」
「透明な魔物か」
グルゼイがユディットの前で剣を振った。
「あれは!?」
叫び声が聞こえて一瞬何かの姿がみんなの目にも見えた。
しかしそれはすぐにまた消えるように見えなくなる。
わずかな時間であったけれど四足歩行のトカゲにも似たような魔物にユディットの目には映った。
「ジケと俺で対処するぞ」
見えていなければ戦いようもない。
リアーネとユディットでエニとモロデラを守るように布陣してジケとグルゼイで戦う。
相手はとにかくデカい。
人の何倍もある大きさで強い魔力を感じる。
「くっ!」
相手の魔物の体の一部が伸びてきてジケは間一髪のところでかわした。
境界線がボヤけて感じられるのでどこまでが当たってしまうところなのか判断が難しい。
「姿を見せろ!」
ジケが攻撃をかわしている間にグルゼイが魔物と距離を詰めて切りつける。
「浅い……」
グルゼイもジケと同じく魔物の本体の位置が把握しきれていない。
相手のことを警戒しすぎて踏み込みが浅く、剣先しか届かなかった。
けれど痛みで怯んだのかまた魔物の姿が見えた。
「くらえー!」
その瞬間をエニは待っていた。
高めた魔力を解放して大きな炎の渦を魔物に放つ。
またすぐに姿を消した魔物だったが炎の渦は大きくてかわしきれなかった。
エニの魔法にやられた魔物は姿を現しながら地面に転がった。
「あれが魔物の正体……」
緑色の皮膚、ギョロッとした目、頭や背中が縦に伸びた体をしている。
ジケが思ったのはソコニの魔獣に似ているなということだった。
今は情報屋のトップであるガルガトを師匠としているジケの友達ソコニも魔獣の力で透明になることができた。
ソコニの魔獣の姿が今目の前にいる魔物の姿とよく似ているのである。
「あっ!」
「……まて、追いかけるな」
起き上がった魔物は点滅するように姿が消えたり出たりしながら森の中に走っていった。
倒せないこともなさそうではあるが、開けた場所ではなく森の中になると倒す難易度はさらに跳ね上がりそう。
今回の目的は魔物を倒すことではないしモロデラという戦えない人もいるのでグルゼイは魔物を追いかけなかった。
まだ相手が本気かも分からない。
深追いしては危ない。
「この場所の調査は?」
「あ、はい、もう大体終わっています」
「では一度戻ろう。何があるか分からない」
魔物が退いてくれた間にジケたちも帰ってしまうべき。
一応一ヶ所は調査できたのでジケたちは森から抜け出した。
グルゼイは冒険者ギルドに行って情報を集めたり、出会った魔物についての情報を流したりすると言って別れた。
モロデラもより手記について調べると言って家に帰っていった。
「謎の魔物……透明になれる能力がその正体のようだな」
ふとソコニは元気にしているだろうかと思う。
ソコニの魔獣は肩に乗るほど小さいものであったのに対して今日出会った魔物は逆に人が乗れるほどの大きさがあった。
「なんか急に出てきた感じあるけどどこから来たんだろうね?」
「さあな。ただみんなに何事もなくてよかったよ」
「まさか見えない敵が現れるなんてな。流石に見えなきゃ戦えない」
「でも攻撃されると透明化は解けていたので戦えないこともなさそうでしたけどね」
「そうだな。ジケとグルゼイがいれば案外戦えるかもな」
「まあきっと噂になってる魔物だと思うし冒険者たちの方で倒してくれるんじゃないかな?」
宿の戻るとタミとケリが疲れたーと言ってジケに抱きついてきた。
よく頑張ったねと頭を撫でてやると嬉しそうな顔をしていた。
「ともかく秘密拠点を探すのも楽じゃなさそうだな」
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