水も飯も、友も仲間も、君もいる
「はぁ……お腹いっぱい」
ジケは床に敷かれたアラクネノネドコに倒れ込むように横になった。
程よい弾力がジケの体を包み込む。
今はライナスの奢りでシウルベスターのステーキをお腹いっぱい食べてきたところだった。
噂通りの美味しさのステーキで、せっかくの奢りだしなるべく腹に詰め込んできた。
ライナスは泣きそうな顔していたけど魔剣もあげたんだしステーキぐらいは食べさせもらう。
フィオスも大きなステーキを一枚ペロンと体に取り込んでゆっくり溶かして食べていた。
「こんな約束もしてたんだよな……」
過去では叶わなかった約束。
正直ジケ自身も忘れていたような約束だった。
でも今回は叶えられた。
「ふふ、フィオス、負けた時のあいつの顔見たか?」
薬草探しはジケの圧勝だった。
全体的な能力はライナスの方が高いだろうけど薬草探しの勝負においてはジケの方が有利だった。
もっと勝てる勝負などいくらでもあっただろうにわざわざジケのフィールドで勝負してしまった。
どんな勝負であれ勝つつもりではあるけれど。
「とりあえず水問題は大丈夫そうかな」
ジケは手首を柔らかく使ってスナップを効かせてフィオスを軽く投げては柔らかくキャッチする。
過去では水が不足した時の貧民街は酷いものだった。
今回はそこまで深刻な水不足にならないかもしれないし、ジケが備えているのでそれほど酷いことにはならないだろう。
「にしても……変なことあったよな」
全くもってそんなつもりじゃなかったのに偶然パルンサンの宝物庫を見つけた。
過去では聞いたこともない話だった。
パルンサンの日記帳が本になったものが出ていた記憶はあるのでおそらく誰かが見つけてはいたのだろうと思う。
だが噂にもならなかったということは徹底して隠されていたということになる。
立ち入り禁止の区域だから見つけた誰かが隠したのか、あるいは国が見つけた可能性もある。
「まあ……わっかんないけどね」
過去のことは過去のこと。
もう確かめようもない。
確かなことは今回はジケが見つけて、ジケがお宝をいただいたのだということである。
「んべっ!」
フィオスをキャッチし損ねて顔に落ちてしまった。
「あんだろなぁ……もっとのんびりできると思ったのに」
振り返ってみると結構忙しく動いている。
想定ではもっとのんびりとしていたはずだった。
「楽しいからいいんだけど……」
別に辛いとかは思わない。
色々動き回って新しいことをしているのは楽しい。
それに人のためになることをするのは気分も悪くない。
「次は何やるかな……次は、何が起こるかな」
行動するとたくさんのことが起こる。
過去には経験しなかったこと、過去では聞かなかったこともたくさんあった。
知らない人生が広がっている。
「次は何したい、フィオス? お前となら……なんでもやってみよう」
フィオスをトスするのをやめてギュッと胸に抱える。
「風呂かぁ……」
ふとフィオスがお湯に浸かっていたのを思い出す。
「お前と風呂入るのもいいかもな」
お腹がいっぱいなのでなんだか眠くなってきた。
ジケは枕を横に置くとフィオスを頭の下に置く。
「やっぱりお前が一番だ」
クモノイタで作られた枕もかなりいいものだけどフィオスが頭にフィットして、心地よくて大好きだ。
「おやすみフィオス。きっと明日も良い日になるな」
ーー第十一章完ーー
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