宝物庫から抜け出そう2

 ジケは向こうに何があったのかをみんなに説明した。


「はぁ〜……」


「大泥棒のパルンサンの宝物庫ですか」


「んじゃあれがお宝ってこと?」


 あれとはフィオスが持ってきてくれた物の数々である。

 とりあえずマザーケントウシソウの攻撃範囲外に適当に置いてある。


「うん、その通り」


「宝石と剣は分かるけど……あの本みたいのなんだよ?」


「あれはお宝というより……うーん、まあファンにとってお宝なのかな?」


 パルンサンの活動記録というべき何冊かの冊子は人によってはお宝だといえるだろう。

 ジケもあれを使って本でも出そうと思っているので一種のお宝である。


「何にしても出口はなかったのか……」


「出口はなかったけど希望はあるぞ」


「何でだよ?」


「ちゃんとここが人工的に手を加えられた場所の奥だったからだよ」


「どゆことだ?」


 ジケたちが行った宝物庫が最奥であるということはこれまできた道を逆に行けば出口があるはずなのである。

 たまたま道の選択で奥に行く方に来てしまったというだけの話で、逆の方に出口があるという希望がある。


「なるほどぉ!」


「大変だけどこのまま道を戻っていこう。きっと出口があるはずだ」


 きっとまた罠があるだろう。

 ジケとニノサンも十分に休んだので出口を探しに動き始める。


 みんなでそれぞれ荷物を持つ。

 フィオスの担当は宝石で、フィオスの中で宝石がキラキラとしている。


 そういう新種のスライムみたいである。


「結局この盃の経緯については何もなかったですね」


 他の宝箱の中には盗んだ経緯が書かれた紙が入っていたけれど盃については何もなかった。

 紙に書いてある感じを見る限り盃にも盗んだ経緯が書かれていそうなものなのにとニノサンは思った。


「きっとあったんだよ」


「あったんでしょうか?」


「多分あの石板だよ」


「ああ……」


「後半のところ崩れちゃってただろ? 多分あそこに書いてあったんだよ」


 皮肉なものだとジケは思う。

 おそらく一番残したかったから石板に刻んでおいたのだと思う。


 しかし宝物庫の手前のマザーケントウシソウのところに水があって湿度も高くて石板も劣化して壊れてしまった。

 一方で紙に書いたものは箱の中にあったので意外と劣化せずに残っていたのである。


 もしかしたら王家のものとかそれに類するような盃かもしれないけれど、残された情報がないので確かめようもない。

 もしかしたら活動記録の方に何かがあるかもしれないので後で調べてみようとは考えていた。


 ジケたちは来た道を逆に戻っていった。

 これまで来たところの罠はもう発動しているので怖いこともなくサクサクと歩いてきた。


 そして最初に人工的なところに出てきたところまで戻り、そこから警戒を強めて進んでいく。

 おそらく罠があるだろうと思った。


 移動していくと予想通りに罠があった。

 古典的な殺意の高い罠をなんとかみんなで乗り越えて進んでいく。


「階段だ!」


 お腹も空いた。

 疲労もかなり溜まっている。


 そんな時に上に向かう階段がジケたちの目の前に現れた。

 最後の最後まで気を抜かないようにしてして階段を登っていく。


「ん……よいっ、しょっと!」


 階段を登ると金属の板のようなものがあった。

 リアーネがそれを下から体を押し付けるようにして持ち上げる。


「光だ!」


 隙間から光が差し込んでみんなのテンションが大きく上がる。


「オラっ!」


「外だ!」


 金属の板を押し上げるとそこは外であった。

 とうとうパルンサンの宝物庫の出口についたのだ。


 みんなで外に飛び出す。


「日が差してるってことは朝か……」


 となると丸一日地下にいたことになる。

 見ると近くにケントウシソウが生えている。


 群生地の横にある小さな木の林に入り口はあったようである。

 ジケたちは馬車のところまで戻ると急いで携帯食料を食べてテントの準備をして寝始めた。


 本来なら誰か起きていて警戒をしなければならないのだけどそれはライナスのセントスとリアーネのケフベラスに任せることにした。

 もうみんな限界だったのである。

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