希代の盗賊が遺したもの8
やはりユディットがケントウシソウに狙われる。
4つのコブがユディットに襲いかかり、ユディットは防御と回避両方を駆使しながらなんとか防いでいく。
「オラァ!」
まずはリアーネが切り込み、リアーネがつけた傷をジケとニノサンで狙っていく。
攻撃したらターゲットが移るかなと思ったけれど攻撃してもユディットが狙われ続けている。
「ライナス!」
「任せろ!」
かわしきってみせるとは言っていたが4つのコブに狙われると辛い。
ユディットの方がキツくなってきたのでライナスを投入する。
ライナスが攻撃範囲に入ると一瞬ケントウシソウの動きが止まってコブがライナスの方に向かう。
「こいやぁーーーー!」
ユディットが下がり、ライナスはコブをかわし始める。
スマートでなくてもいい。
ライナスが必死にコブをかわしている間にジケたちはまたケントウシソウの幹を攻撃する。
「この、倒れろ!」
タイミングを見てライナスが下がって休んでいたユディットが範囲に入って囮役を交代した。
2人の頑張りに報いようとジケが幹を切りつける。
「倒れますよ!」
深く切り付けられてケントウシソウが倒れ始める。
コブを真横に伸ばしてゆっくりとジケの方に倒れてきたので慌てて避ける。
「このままもう1体倒すぞ!」
これでコブも1体分の2つになった。
1体を倒した勢いをそのままにもう1体のケントウシソウを狙う。
ユディットも攻撃が減ってかなり回避も楽になった。
ジケたちの怒涛の攻撃にケントウシソウの幹も傷があっという間に大きくなっていく。
折を見てユディットとライナスがまた入れ替わる。
「これで……どうだ!」
リアーネが全力で剣を振る。
切られて細くなった幹では耐えきれずケントウシソウが倒れていく。
「よしっ!」
「あっ、ひでぇ」
通るのに邪魔じゃなさそうなケントウシソウは倒さずに残っている。
残っていたケントウシソウが自分の方に倒れてきたケントウシソウを殴り飛ばしてどけた。
容赦ないパンチであった。
倒れてしまえばもう仲間ではないのか。
ジケたちは一度下がって休憩する。
向こうの道に何があるか分からないのでちゃんと体力は回復させておく。
「はぁ……なんか疲れたな」
「ナイスおとりだったぞ」
「なんか嬉しくねぇな」
「まあそう言うなって」
なんだかんだ4つのコブもかわして頑張っていた。
ライナスなら倒せるとケントウシソウは思ったのかもしれないが目論みは外れた形になる。
「しかしなんでこんなところにこいつら生えてんだろうな」
改めて冷静になるとおかしい。
ケントウシソウは植物とは違う植物型の魔物であるとはいっても植物的な性質を持つことに変わりはない。
地上に生えているのだから地下にも生えているということは理解できなくはないが、地下で生きていける魔物ではないのだ。
しかも狭い部屋に密集するように生えていて説明できないことが多い。
「そもそもここも謎だかんなぁ」
まず天然の洞窟であったことは間違いない。
けれどそこに誰かが手を加えて整えて、変な罠なんかを設置している。
誰が何の目的でという疑問の答えになりそうなものが一切ない。
「腹も減ったし、そろそろ出口見つかってくれると助かるんだけどな」
ケントウシソウとの戦いに時間も取られてしまった。
下手すると外ではもう日が沈みかけているかもしれない。
「とりあえず先に進もう」
脱出するためにも先に何があるのか確かめねばならない。
休んで少し体力を回復したジケたちはケントウシソウの攻撃範囲に入らないようにしながら通り抜けて先に進んだ。
真っ暗な洞窟の中をイレニアの光だけで歩いていく。
ジケは魔力感知を広げて先を警戒しつつも罠なんかも探している。
先ほどまでの道だったら怪しい罠があったのだけどこちらの道にはそうしたものは見当たらない。
「道が広くなったな」
2人並んで通り抜けられるかどうかぐらいだった横幅が一気に広くなった。
狭い息苦しさは軽減されるけど怪しさは全開になった。
なぜなら完全に人の手が入った四角く切り取られた道になったからである。
人2人分だって別に通るだけなら十分な広さがある。
なのにどうして急に道の幅を広げる必要があるのか。
「慎重に行こう」
絶対に何かある。
全員嫌な感じがしていて横並びでもいけるぐらいの幅があったのにこれまで通り縦に並んで進んでいく。
「なんかちょっと斜めってない?」
歩きながらジケは気がついた。
地面が傾斜している。
道の先に向かって下がっていて、歩いていて少し変な感じがするのだ。
「確かに少し下ってますね」
さらに嫌な予感がする。
「ん?」
「これは、まずい!」
先頭を歩くリアーネの足元が光った。
急に魔法陣が広がって淡い光を放ち始めたのだ。
「魔法のトラップだ!」
魔法の中には事前に仕掛けておいて発動させるものがある。
魔力感知で気づくことができるものもあるが、巧みに隠されたものは中々感知できない。
「備えるんだ!」
魔法のトラップが発動したということは何かくる。
全員が一斉に身構える。
「なんだ。何もない……」
そう思った瞬間だった。
ジケたちが通ってきた道の後ろの天井が突然壊れた。
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