実験開始!1
ジケとライナスの勝負もあってか薬草も必要数以上に確保ができた。
ケントウシソウのコブたくさんとひとまず太めのケントウシソウの幹を一本だけ持ち帰ってきた。
早速実験!
といきたいところであったがそうもいかない。
なぜならケントウシソウのコブは爆発するからだ。
実際に目の前で大量の水を放出して爆発してくれたのでどんなものかは身をもって知っている。
ジケはケントウシソウから水が取れそうなことは知っているけれどどんな方法で水を取るのかは知らない。
つまり手探りで実験していかねばならないのである。
そうなった時にどこかでまたコブの水爆発が起こるのは確実。
とてもじゃないが室内で実験をすることはできなかったのだ。
周りに迷惑ならない広いスペースが必要になった。
しかし町中に爆発しても大丈夫な場所なんて基本的にはない。
家一つダメにする覚悟で実験しようかと思っていたらちょうどいい場所を思いついた。
「このような場所があるのですね」
「またここに戻ってくるとはな……」
その場所とはジケにとっても因縁がちょっとだけある場所だった。
周りには何もなく簡易的な木の柵で囲まれた土地。
ここは元々古い大きな洋館が立っていた。
そう、ジケやリンデランがさらわれて地下に閉じ込められたあの洋館があった場所なのである。
パージヴェルが半壊させてしまった洋館はそのままにしておくと危険であるということでヘギウス家が責任を持って解体した。
地下牢も破壊して土で埋めて潰し、あんな事件があったことなど分からないただの土地になってしまっている。
その後の土地の管理もヘギウスに押し付けられた。
しかし貧民街にある土地を有効活用するのも難しい。
自由にさせてもそこら中にテントもどきのようなものを作って寝転がる場所になるだけになる。
だからといってそこで何かをやることも貧民相手では選択肢もないのだ。
なので柵で囲んで勝手に立ち入らないようにしてあるだけだった。
それもそのうち侵入する人が増えて誰かが勝手に使うのだろうなと思っていたけれど、未だにヘギウスの管理下でただの広い土地というところにジケは目をつけた。
だからパージヴェルに土地を使用していいかどうか聞いてみたら好きにしろと返事が返ってきた。
ということで実験場所の確保に成功したのである。
その後はどんな実験をするのかとか考えて必要なものを用意した。
「それにしてもこれは面白いアイデアですね」
今実験場にいるのはジケとクトゥワとキーケックだった。
そして3人はみんな同じ服を着ている。
上から下まで一繋ぎになっているもので手首や首のところがキュッと締まっている。
ケントウシソウのコブ実験用にジケが編み出した防水実験服である。
ケントウシソウの実験をするのにはどうしても濡れることは避けられない。
しかし一々服がびちょびちょになってはめんどくさい。
そこで防水加工をした服を作ってしまえばいいのだと思いついたのだ。
イグノックスにお願いして上と下が一つになった服の製作をお願いした。
上下を一つにした理由は出来る限り水が入り込む隙間を無くすためである。
そして手首や首のところには小さいクモノイタが付けてある。
着る時にはややダボっとしているのだけどクモノイタ同士を貼り付けてくっつけることでピタッと隙間なく締まるようになっていた。
こちらはイグノックスの提案で生まれたものだった。
一々クモノイタを貼り替える手間は生じるが普段着でもないので構いはしない。
ケントウシソウの実験を前にしてまた面白いものを作ったのだとクトゥワはちょっと感動していた。
防水の服とはあまり考えたことがなかった。
今後の実験の時にも使えそうだと考えていた。
「それじゃあちょっとずつ実験していこうか」
近道があるものも世の中多いが、全てのことに近道があるわけじゃない。
ジケの記憶の中にケントウシソウから水を取り出す方法がない以上は色々試してみるしかない。
改めてコブを触ってみる。
水を出すことを考えた時に果実なんかのように絞ることは真っ先に思いつく。
けれどもコブは硬い。
ジケが全力で力を加えてみてもびくともしない。
ケントウシソウが武器として使うだけはある。
「おや? 会長殿、馬車が止まりましたよ」
試しにジケとキーケックで持ち上げて地面に叩きつけてみたけど壊れることもない。
弾力もなくてコブはほとんど跳ねることもなかった。
もう単なる岩なのではないかと思えるぐらいだ。
そうしていると敷地を囲む柵の外に馬車が停まったことにクトゥワが気づいた。
「馬車?」
何か問題でもあったかなと思ったけれどヘギウスから何かの連絡で人を寄越すなら伝言役の騎士だろうから馬車になんて乗らない。
そうなると、とジケは馬車の中にいる人の予想をする。
「ジケ君!」
「リンデランだ!」
馬車から降りてきたのはリンデランだった。
ジケの知り合いで馬車に乗ってくる人などリンデランかウルシュナぐらいであるのでそのまんま予想通りであった。
お友達が来てキーケックは嬉しそうに両手を上げてリンデランに向かって振っている。
リンデランの方もニコニコとしてジケのところまで駆け寄ってくる。
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