コブしを振るう植物モンスター4

 やはり2人でやると早い。

 ジケとグルゼイの挟撃にあってケントウシソウはあっという間に切り倒されてしまった。


 面白いのは倒された後のポーズもケントウシソウによって違いがあるのだ。

 最初のケントウシソウは両コブを振り上げた体勢で倒れたが今度のケントウシソウは片方を振り上げて、片方を下げたまま倒れた。


「倒され方にも個体差というものがありそうですね」


 クトゥワは倒れされたケントウシソウの姿をさささっとスケッチしている。

 チラリと手帳を見せてもらったけれど上手いもんである。


 聞くとお金がない時代は絵でも多少食い扶持を稼いでいたこともあるそうだ。


「2人でこれなら……」


 2人で戦うとコブがそれぞれ1つずつ向かってきた。

 となると、とジケは考えた。


「準備はいいか?」


「はい!」


「いつでも行けるぜ!」


 2人で戦ったのだから自ずと次は3人となる。

 ジケ、ユディット、ライナスの3人で一斉にケントウシソウに襲いかかる。


「予想通り!」


 コブの数の都合というものがある。

 ケントウシソウのコブは2つ。


 つまりケントウシソウが頑張ったとて普通に対応できるのは2人までなのだ。

 3人になるとどうか。


 まあ結構頑張ってるなとジケは思った。

 1つのコブはライナスに向かった。


 そして残るコブでジケとユディットを交互に攻撃し始めた。

 全く予想を外れていない行動であった。


 コブ1つでもそれほど苦労がなかったのにそれがユディットにも向かえばもうそんなに怖くない。

 ライナスの方はちょっとライナス自身が回避下手くそで、近づくのに苦労している。


 その分ジケとユディットで代わる代わるに幹を切り付けて倒した。


「少なくとも2人、出来るなら3人以上なら楽に倒せそうだな」


 コブを切り離して馬車に運び、幹の方も何かに使えるかもしれないからまとめて置いておく。

 倒したケントウシソウについてはジケたちが自由にしてもいいと許可も得ている。


「ガンガン倒していこうか」


 いざとなったらエニもいる。

 致命傷になりそうな攻撃さえくらわなければエニが治してくれるのでケントウシソウを3人がかりで交代で倒していく。


 途中知恵というか、攻撃方法がやや特殊なケントウシソウもいた。

 コブを横に伸ばしてグルグルと回転するのだ。


 こうされると3人がかりでもあまり変わらないのだけど回転し続けられるわけでもないので倒すことはできた。


「ふぅ……」


 メキメキと音を立ててケントウシソウが倒れる。

 気づけば日も暮れ始めている。


「結構倒したな」


 ちなみに切り倒したケントウシソウの根っこは無視してもそのまま腐って無くなっていくらしい。

 馬車もいつの間にかコブでいっぱいになっている。


「今日はこれぐらいにしておこうか。明日は薬草の採取をしよう」


 あまり山のように乗せすぎても帰りが大変になる。

 一応監視があるので事前に冒険者ギルドに言わねばならないけれど何回ここに来てケントウシソウを倒してもいいのでここでケントウシソウ討伐は一度切り上げる。


 むしろドクマーによるともっと倒してほしいぐらいらしいが、実験が上手くいって水を取り出せるようになればもっと倒すことになる。

 そうでなくてもお願いされた分ぐらいはちゃんと倒すつもりである。


「お疲れ様」


「ん、ありがとう」


 色んなケントウシソウがいた。

 手数型は3人以上でやれば怖くないのだけどパワー重視の一撃必殺型はなかなか一発が怖くてヒヤリさせられた。


 エニからタオルを受け取ったジケは汗を拭く。

 大変だったけど面白い経験になったと思う。


「薬草が生えている場所はここから近いんですか?」


 みんなで野営の準備をしながら明日の計画を練る。

 もうちょっとケントウシソウで試したいことをやってから次はライナスたちの用事である薬草の方に向かおうと考えていた。


「そう遠くはありませんよ。ケントウシソウの群生地の向こう側です」


「分かりました。じゃあ……明日の昼ぐらいには薬草があるところにいこうと思います」


「そうしてもらえると助かります」


 本来なら魔物からは離れて野営するのが一般的であるが、ジケたちはケントウシソウの群生地からあまり離れなかった。

 なぜならケントウシソウの群生地はケントウシソウがいるために他の魔物があまり寄り付かないのである。


 だからあえて群生地で野営するのだ。


「あまり戦いではお役に立てなかったので番はお任せください」


「それじゃあお願いしますね」


 ドクマーは年齢もいっていることもあり、あまり戦いに参加しなかった。

 その代わり焚き火の番をして周りを警戒する役割を長めに担当することになった。


 ジケは布団がわりのマントを体に巻いて地面にゴロリと横になって寝始めたのだった。

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