コブしを振るう植物モンスター3

 水を取り出す方法はまた後で考えることにして今度はクトゥワのアドバイスに従ってコブを切り離す。

 枝をある程度残して切り取らないといけないらしく、今度はコブに繋がる枝を半分ほど残してリアーネが切り離した。


 みんな離れて見ていたけれど爆発はしなかった。

 ジケたちよりも先に研究した人のおかげでコブの切り離しに苦心しなくて助かった。


「意外と重いな!」


 ジケは切り離したコブを持ち上げようとして驚いた。

 そんなに軽そうな見た目はしていないが持ってみると想像よりも遥かに重たかった。


「ん、ほんとだな」


 割と力のあるリアーネでも結構重たい。

 ジケとリアーネで協力して馬車まで運んだ。


「ふう、なかなか大変だな」


 かなり重たいので荷車で来ていてよかった。

 けれど重さと先ほどの爆発を見ると期待はできそうだとジケは思った。


 爆発の時の水はかなりの量だった。

 コブの重さも水が詰まっているのだと考えればおかしな重さでもない。


 どうにか上手く取り出せれば結構な水が取れそうである。


「ユディット〜!」


「くっ! ……大丈夫です!」


 個体差と表現すればいいのだろうか。

 1体目のケントウシソウは重たいパンチを繰り返すような感じだったのだが2体目のケントウシソウは戦い方が違っていた。


 1体目は体をねじるようにして一発一発威力の高いコブを繰り出していた。

 それに対して2体目のケントウシソウは手数を重視していた。


 あまり体をねじることなく素早くコブを繰り出していて隙がない。

 対するのはユディットで、話が違うと戦いながら思っていた。


 明らかに戦い方が違っていて苦戦した。

 素早くコブを振り回し続けるのは中々の脅威である。


 幹まで近づけずに一瞬の隙を突かれて殴りつけられた。

 なんとか剣でガードしたけれどケントウシソウのコブの範囲外にまで殴り飛ばされてしまった。


「あんなのもいるのか……」


 みんな同じだろうなんて思っていたのに戦闘スタイルに違いがあって面白いやら、厄介やら。


「ふー……」


 ユディットは大きく息を吐き出して集中力を高める。

 かなりコブを繰り出す速度は速くて厄介であるがその分一発は軽い。


 1体目のイメージが頭にあって全て回避しようとしていたが、無理に全てをかわすよりカードや受け流しも使った方が有効に戦えそうだと気がついた。

 一発食らってしまったけれどそのおかげで相手の力も分かった。


 仕切り直したことで冷静にもなれた。

 再びユディットが切り込んでいく。


 今度は回避もしながらも剣を使ってコブを受け流す。

 そうして少しずつ前に進んでいく。


「食らえ!」


 剣が届くところまできたユディットが幹を切りつける。

 けれども幹は硬くて一撃では倒しきれない。


 魔剣だったらと思わなくもないが魔剣でも一撃で倒すことは難しいかもしれない。


「うっ! 危ない……」


 幹に近づくと自ずとコブの飛んでくる方向が正面ではなく横や上からになる。

 横からの攻撃を受け流しながら幹に近い位置を保つのは難しく、ユディットは横殴りを後ろに引いてかわすしかなかった。


 また距離が開いてしまったので少しずつ近づいていく。


「やりました!」


 ジケと同じように何回も幹を攻撃してようやくケントウシソウを倒したユディットは嬉しさで両手を突き上げた。


「こうした戦い方の違いは記録にありませんでしたね。しっかりと書き記しておかねば」


 クトゥワは戦いを見てその内容を手帳に書いていた。

 個体によって戦い方が違うことは事前に調べたものには書いていなかった。


 実際にこうして目の当たりにするとまとめられた研究結果のみでは分からないことも多い。


「しかしこれだと時間かかりすぎるな」


 1人でも倒せそうなことはいいのだけど一々近づいて攻撃を繰り返して戦っていては時間もかかるし体力も消耗する。

 ケントウシソウの攻撃は訓練にはいいけれど今は目的があってケントウシソウを倒しにきたわけなので毎回一対一で戦っていられない。


 なので次は2人動員。

 ジケとグルゼイの師弟コンビで戦う。


 ケントウシソウを挟み込むように位置取って襲いかかる。


「おっ!」


 なんとなく予想はしていたがケントウシソウはジケとグルゼイそれぞれに一本ずつコブを差し向けた。

 一本ならさほど脅威でもない。


「なんか……面白いな」


 横から見ていたリアーネが笑いを堪える。

 両サイドに向けて必死にコブを繰り出しているのかもしれないが側からみるとクネクネとコブを振り回していて、なんだかツボにハマってしまった。


「これなら!」


 コブをかわしながらジケが前に進む。

 これなら魔力感知の訓練で目隠しをしてグルゼイに棒で突かれる時の方が怖いぐらいである。


「ほっ!」


 無駄なく力みなく幹を切りつける。

 多少浅いが変に力を入れるよりもリスクも消耗も少ない。


 同様にグルゼイも前に出る。

 経験の差なのかジケよりもスマートにコブをかわして前に出たグルゼイも幹を切りつける。


「……なるほどな」


 そんなに手を抜いたものではないが想像よりも傷が浅かった。

 単純に硬いのではない。


 植物的な柔軟さもありながら硬いために思ったよりも傷つきにくいのである。


「やっぱりすごいですね……」


 ジケもしっかりとコブをかわしているがグルゼイはもっと自然とかわしている。

 まるでどこにコブが飛んでくるのか分かっているかのように少ない動きで回避をしている。


 おそらく2本コブがあってもグルゼイは容易くかわしてしまうだろうとユディットは思った。

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