お友達、もちろん協力2
「俺があげた魔力は活用してるか?」
「ああ、魔力が増えて色々助かってるよ」
ふとライナスが始まりのネックレスについて口にした。
他の人から魔力をもらえるという不思議なネックレスは今ジケの中にある。
ネックレスなのに体の中に溶け込んでしまってどこにあるのか分からないけれど体の中にあるのだということは意識すると感じる。
エニを始めとしてライナス、ユダリカ、ウルシュナ、リンデランの5人分の力を受け取っている。
フィオスの分の魔力も含めると現在6フィオスの力がジケの中に宿っている。
魔力が増えたことを喜んでいたのだけど全部が全部良いことばかりというわけでもなかった。
魔力が急に増えた影響なのかこれまでと魔力をコントロールする感覚が少し変わってしまったのだ。
今でこそ調整も出来るだろうなと思うけど増えたばかりの時は少し困惑したものである。
他のみんなにもお願いしようと思いながらもどうにも自分の口から魔力をくれというのが気が引けてしまっていた。
きっとみんないいと言ってくれる人だから一方的に魔力をもらうことに抵抗感がジケの中にあった。
「ジケ!」
「な、なんだよ?」
「何の話?」
気づいたらひっつきそうな距離でキーケックがジケのことを見ていた。
「えっとな……」
キーケックに始まりのネックレスのことを説明する。
そういえばキーケックはエニたちから魔力をもらえることになった後に仲間に入ったのでこのことを知らないのであった。
「僕も魔力あげる!」
話を聞いて鼻息荒くキーケックが魔力をあげる仲間に自分も入ると言い出した。
「いいのか?」
「いい! ジケは友達! 僕とお父さん助けてくれた! ジケが強くなるも嬉しい。僕に出来ることなら何でもする。お礼、ジケにあげたい!」
「キーケック……」
「そーいや、私もあげてないな。いつお願いされるかなーって思ってたら忘れちまったな」
「僕もいますよ!」
「リアーネ、ユディット」
「そういうことでしたら私も立候補しますよ。どうせ魔力などそれほど使いませんからね」
「クトゥワさんまで……」
キーケックを皮切りにみんながジケに魔力をあげると言う。
「んだよ、みんなからはもらってなかったのか?」
「んー、なんか魔力くれって言うのなんか悪い気しちゃってさ」
「んなことないって! 嫌なら断るし、良いならきっとどこかでお前に感謝してんだよ」
「感謝?」
「そーだよ。いっつもお前みんなのこと考えてんだろ? みんなお前にもらってばかりで何か恩返ししたいって思ってんだよ」
決して一方的ではない。
魔力をもらうということはジケだけに利益があることのように思えるがそうじゃないのだ。
みんなはジケから色々なものを受け取っている。
友達としていてくれるだけではない。
たとえば雇用してもらってしっかりとした給料だったり、安心できる家だったり、信頼してくれたり。
ジケに魔力をあげてもいいと思う人はジケに何かで感謝をしているのだ。
一方的に魔力をもらうのではない。
ジケはもう何かを与えている。
そしてそのお返しをみんながしたい。
「あれ? ちょっとウルっとしてる?」
「か、からかうなよ……」
エニに指摘された通りジケは少しウルっとしている。
色んな人に言われて頼るということに慣れていこうとしていたジケであるが、まだまだうまく頼れていないのかもしれないなと思った。
過去では何かをしても返す余裕もないような時代も生きてきた。
自分が生きていくだけで精一杯だからという理由で何もなくても仕方ないと思ってしまう節がどこかに残っていたのかもしれない。
「んー……じゃあ、みんなも、魔力くれるか?」
ちょっと照れたようにジケが聞く。
「もちろん!」
「うん!」
「俺はあげてるからな」
「私も〜」
リアーネやキーケックも笑顔で答えてくれる。
帰ったら他のみんなにも聞いてみようかな、なんてジケは思った。
ーーーーー
のんびりと荷車を走らせてきて、日も傾き始めた。
途中でライナスが荷車を降りて年長者であるドクマーと代わったりとちゃんも苦労も分担していた。
「ふおおっ、僕やる!」
ライナスの言葉を皮切りにしてキーケックはジケに魔力をあげるのだと意気込んでいた。
流石に移動しながらでは無理なので野営する時にお願いすることにした。
「じゃあ頼むよ」
「おいでピッパラ!」
キーケックは自分の魔獣を呼び出した。
キーケックの魔獣はラバピカという大きな鼻とずんぐりむっくりとした体格をした穏やかな性格を持っている魔物である。
ネズミとかの仲間らしいが顔は非常に愛嬌がある。
戦いなどに向かない魔獣ではあるが一応そこそこ魔力はあるらしい。
魔物そのものがそれを活用することはほとんどないみたいであるけれども。
手触りはちょっとゴワゴワしているのだけどキーケックは時々ピッパラを枕にしてお昼寝していたりする。
「それでどうする?」
何でもするとキーケックの鼻息が荒い。
「手を出して」
「手?」
「ちゃんと袖から出して……」
外だろうといつものように白衣着用のキーケックはダボっとした袖に隠れたままの手を前に出した。
袖越しでオッケーなのか分からないのでジケがキーケックの袖をまくって手を出してあげる。
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