期待に燃える魔物研究家
数日後、ケントウシソウについて調べてまとめたからとキーケックが伝えにきた。
家に行ってみると分かりやすいように紙に書いてまとめてくれていた。
「この辺りがケントウシソウの群生地ですね古い資料ほとんど変わりませんがやや南に移動はしています」
特にナワバリを広げたりするような魔物ではないが、他の魔物もそれほど積極的に倒そうとする相手でもないので同じような希望を保ったままずっと存在しているようだ。
増えてきたら人間側が倒したりして調整するようである。
クトゥワは地図を広げてケントウシソウの生息地付近を指し示す。
「生態としても以前お貸しした本に書いてあることと大きくは変わりません。ただこれを取りに行きたいというのなら少し問題がありまして」
「問題?」
「ええ、ここは王国の直轄地なのです。この土地では特殊な薬草も採れるそうで、勝手に入っていけないことになっているのです」
「そうなんですか」
「おそらくはそれほど厳しくないと思うので事前に申請しておけば大丈だとは思います。こちらも調べたところ冒険者ギルドの方で申請できるようです」
国の直轄地でも基本的に移動を制限されるような場合は少ない。
前に行ったスイロウ族たちが住まうコルモー大森林も入っていけない土地ではなく禁猟地、つまりは魔物を狩ってはいけない場所ということになっている。
しかしこちらは立ち入り禁止の土地であった。
繊細な薬草なんかは踏み荒らされるだけでもダメになることがあるとクトゥワは付け加えた。
冒険者ギルドの方に目的を明示して申請すれば冒険者の方から国に伺い立ててくれる。
もちろん冒険者ギルドを挟まずに直接国に申請することもできるようだ。
今回については魔物を倒すだけじゃなくてジケが何かしようとしているので研究調査目的でもある。
クトゥワもいるし正当な目的なので申請すれば許可は下りるだろうと見られた。
「申請に必要な書類もすでに揃えてあります」
「仕事が早いですね」
「私もこれぐらいできるのですよ」
「お父さん、カッコいい!」
出来る父親にキーケックは目を輝かせている。
書類の準備のために夜更かししてヒスに怒られたことはキーケックは知らないのである。
「じゃあそのまま申請お願いできますか?」
「分かりました」
「何もかもありがとうございます」
「いえいえ、これでもし水不足にも対応できるのならみんなのためになることですしね。それに会長殿がやろうとしていることに大きく興味があります。魔物研究家としての血が騒ぐのです」
ケントウシソウについてクトゥワも調べた。
ジケがやろうとしていることは過去にやろうと試みた人がいた。
水を溜め込む性質があるのでそこから水を取り出すことはできないかと。
しかしその人は失敗に終わった。
だがジケが目をつけたということは何かの方法で水を取り出すことができるのではないかとクトゥワの胸は高鳴っていた。
魔物の研究には有益ではないと判断される速度が早くて予算がつかなくなることも多くある。
ケントウシソウの研究だって早めに見切られてしまった可能性は否めず、実験が失敗だったから諦めたのではなく継続することができなかったから諦めたかもしれない。
しかし今回はジケの主導である。
きっと満足するまで試すはず。
仮にクトゥワがやりたいと言ってもジケは信頼して予算を出してくれることだろう。
「魔物の調査ですし、クトゥワさんのお力も貸してくださいね」
「ええ、もちろんです!」
自分を拾ってくれたジケの期待に応える。
クトゥワはやる気に満ち溢れている。
「僕もお手伝いする!」
「もちろんキーケックにも期待してるぞー!」
「ふひひ……」
実はジケよりも年上のはずなのだがキーケックは小動物的な愛嬌がある。
思わずジケが頭を撫でてもキーケックは嬉しそうに笑っていた。
クトゥワとキーケックの魔物研究家親子もいるしきっと出来るはず。
ケントウシソウから水を取り出す事業は国が行っていたので将来的に困る人はおらず、むしろ救われる人の方が多い。
「あとはケントウシソウのところまで行ったりする計画を立てなきゃな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます