密猟者たちの目的6
ただの密猟者たちよりはカメを拘束している密猟者の方が人数は少ない。
「この程度で騎士か!」
今度は騎士が前に出て戦う。
振り下ろされた剣を壮年の密猟者が弾き返して騎士の胸を切り裂いた。
「こいつら……強い!」
切り裂かれた騎士の傷は深いがすぐに治療すれば致命傷ではない。
追撃を防ぎ騎士を下がらせて治療をさせようとフォローに回って乱れた隙を狙って他の密猟者が攻撃する。
明らかに先ほど戦った密猟者とは動きが違う。
個人の強さもさることながら連携も取れている。
騎士たちも決して弱くはないのに相手の練度が高すぎる。
特に先頭に立つ壮年の密猟者は実力が抜きん出ている。
このままではいたずらに負傷者だけが増えていってしまう。
「邪魔だ!」
「バセーダ!」
壮年の密猟者が一気に騎士の中に切り込んだ。
狙いは味方の治療をしている騎士。
先にヒーラーを狙った。
なんとか行手を塞ごうとしたのだが壮年の密猟者は騎士を切り捨てながらさらに前に進んでヒーラーの胸を剣で突き刺した。
「貴様!」
「仲間をやられたぐらいで冷静さを失うとはな」
壮年の密猟者は一斉に切り掛かってくる騎士を鼻で笑う。
複数人から攻撃をされていても壮年の密猟者は冷静で攻撃を一掠りもさせずに騎士を切り倒す。
「隊長、あのガキもヒーラーです!」
エも騎士たちを治していることに気付かれてしまった。
壮年の密猟者の厳しい目がエに向けられる。
「ユディット、リアーネ、エを守れ! 最優先だ!」
「はい!」
「ぶっ飛ばしてやる!」
密猟者たちは素早く切り込んできて、壮年の密猟者に道をつくろうとする。
「こんな戦場にガキか? ピクニックじゃねえんだよ!」
「おじさんこそこんなことしてないでマトモな仕事しなよ!」
「口先だけは達者だな!」
騎士を蹴散らしてエに迫ろうとする壮年の密猟者の前にジが立ちはだかる。
フィオスを盾にしたジは壮年の密猟者の剣をなんとか受け流す。
一撃で腕が痺れるほど力も強い。
進ませてはいけないのに一撃ごとにジは大きく後退せざるを得ない。
「ふっ!」
「おっと……お前ら騎士じゃないな? ……何者だ?」
リアーネの攻撃をかわして壮年の密猟者が少し下がる。
「それはこっちのセリフだ! お前らただの密猟者じゃないな!」
「はは、勘のいいガキは嫌いじゃないぞ。だがそれを知ったところでお前らはここで死ぬんだ。わざわざ答えてやる気はないさ!」
「隊長! スイロウ族どもが!」
「なんだ?」
騎士たちが密猟者と戦っている隙をついてスイロウ族たちはローブを着ている密猟者たちの方に向かっていた。
「心配するな、あっちにはウリドラがいる」
「よそ見してんじゃねえよ!」
「ふっ、心配しなくとも相手してやるよ!」
リアーネの重たい攻撃を壮年の密猟者はしっかりと受け止める。
そうしている間にもケガ人は増えて数的な優位が失われていく。
「くっ!」
「リアーネ!」
「かすり傷だ!」
壮年の密猟者の剣がリアーネの頬をかすめた。
「やあっ!」
「最近のガキは油断ならないな」
ウルシュナも隙を見て槍を突き出すけれど壮年の密猟者は軽々とかわす。
子供にしてはやる方ではあることは認めるがまだまだ鋭さが足りない。
「お前の方がまだ見込みはありそうだ」
ウルシュナからは圧倒的に経験が足りていないことを感じる。
けれど対してジは多少の経験もありそうだし攻撃にためらいがない。
いくらエといえども治療するのにも限界はある。
なんとかしなければあっという間に不利になってしまう。
カメの方も何をしているのか分からない以上早めにカメも助け出さねばならない。
スイロウ族がローブの密猟者たちを倒してくれればいいのだけど、そう思った時だった。
大きな爆発音が響き渡った。
ジたちの方で起きたものではない。
ローブの密猟者たちの方に向かったスイロウ族のところで爆発が起きていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます