遺跡に向かい1

 建国祭は数日続いた。

 ジたちは適度にお祭りを楽しんで過ごしていた。


 途中リンデランたちとも合流してお祭りを楽しんだりもした。

 ミュコがジからもらったカバンを自慢するものだからジはリンデランやウルシュナ、タとケにも良いプレゼントをしなくてはならなくなったこともあったがお祭りは楽しめたと言っていい。


 何もお祭りばかりではなくモーメッマに鍵と思わしき物を渡しに行こうともしたのだけど建国祭の期間中遺跡研究所はお休みだった。

 モーメッマもどこにいるのか分からないのでお祭り期間中に渡すことは諦めてお祭りが終わった後にモーメッマを再び訪ねた。


「なんということでしょうか!」


「やっぱりこれは……」


「ええ、鍵ですよ。

 これで全て揃ったことになります!」


 ジが鍵と思われる石を渡すとモーメッマは興奮したようにそれを受け取った。

 形を一目見てこれが鍵だと気がついた。


 最後の一つを探して調査はしていたが遺跡そのものには鍵はなさそうだった。

 だからといって盗掘団はもうおらず、売られていたとしてもどこに売られたかのヒントもなかった。


 鍵の捜索は難航していて見つけるのは不可能。

 何か形を似せた石などで代用できないものかと思考していたところだった。


 偶然であっても鍵を見つけてくれたことは大きな功績でモーメッマはジに感謝していた。


「これで遺跡の調査を再開することができます!」


「そうだジさん、遺跡調査に同行してみるつもりはないか?」


「遺跡調査に同行……ですか?」


「そうだ。

 上からお達しがあってな」


 バジリトは珍しいことがあるものだと思った。

 基本的に遺跡の調査には外部の人間は連れて行かない。


 モーメッマでさえレアなケースであるのにいきなり降って湧いたように望むなら同行させてやれと指示があった。

 何があったのだとバジリトは不思議に思っているがジはその理由が分かっていた。


 上というのはきっとあの王様親子だろうなと思う。

 ジに興味を持っていたので当然遺跡やソコについても調べて知っているのだろう。


 もしよかったら遺跡の調査にも同行してみるといい。

 そう言うクオンシアラの顔が浮かんでくるようだ。


「遺跡の調査には危険がつきものだが同行するか?

 もちろん無理にとは言わない」


「うーん……」


 なかなか悩ましい提案である。

 正直遺跡を見てみたい気はする。


 興味もあるし何となく遺跡とは巡り合わせがある気がするのだ。

 ただホイホイと行きますとは言えない。


 遺跡調査が危険なこともあるし宿泊などの都合もある。

 予定が詰まっているものではないが長く家を空けることも心配だ。


 パムパムあたりが問題起こしてやいないかと考えてしまったりする。


「ジ……」


「なんだ?」


 遺跡に関わることなのでソコも連れてきていた。

 神妙な顔をしたソコがジのことを見ていた。


「俺、遺跡に行ってみたい」


 ここ数日ソコの悪夢は落ち着いていた。

 お祭りも楽しんでいたのだけど夜になると妙な不安感を覚えていた。


 それが何なのか分からない。

 けれどそれが何なのか知りたい。


 その答えが遺跡にあるような気がしている。

 だから行けるなら行ってみたいと思った。


 ジとしてはソコも気になっていた。

 ソコが行きたくないというのならジも引き下がるつもりであったのだが今はソコも行きたいと言う。


 ならば行ってみよう。


「では同行をお願いできますか?」


「分かった。

 ではそのように取り計らう。


 ただ危険があるからそれほど多くの人は連れていけない」


「分かりました」


 ーーーーー


 遺跡の調査に同行するために少し滞在を延長することにした。

 宿ももう少しリーズナブルなところに移動しようと思ったのだけどどうやらこちらもクオンシアラが払ってくれるらしくいくら泊まっていってもいいと言われた。


 じゃあと遠慮なく泊まることにした。

 テレンシア歌劇団はモンタールシュでの仕事が最後だったらしくジたちと一緒に来るつもりだった。


 しかしジが留まることになったのでテレンシア歌劇団も留まることにした。

 ついでだし小道具などのメンテナンスをするらしい。


 ミュコも遺跡調査に行ってみたいとは言っていたけれど流石に遺跡は危険なので説得して引き下がってもらった。

 ケガしたら許さないからとか言われたので無事に帰らねばなとジは思った。


「それではよろしくお願いします」


「遺跡の中にはまだ生きている罠があることも多い。

 魔物が入り込んだりしていることもあるから気をつけて」


 今回遺跡調査に同行するのはジを始めとしてソコ、ニノサンとリアーネ。

 少数精鋭でいく。


 グルゼイはタとケの保護者として残る。

 遺跡の調査には調査員である学者などの人と警護のための人がいる。


 学者やジたちは後ろの方からついていって遺跡調査に同行する形を取る。

 まずは遺跡に向かわねばならない。


 モンタールシュの首都を出発して移動する。

 首都の近くにある遺跡ではなく少しばかり離れている


「大丈夫か?」


 無理はしないで早めに移動をやめて野営する。

 夜になると少し冷えるなと思いながら焚き火に当たっているとソコの暗い顔が目についた。

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