有償無償、色々親切4
来る時は動きやすい地味な格好をしていたエ。
兵士、あるいは教会に勤める時も基本的には質素で動きやすい服装を選んでいるエが今は真っ赤なドレスに身を包んでいた。
髪も編み込んでいて赤くなっている顔がよく見えてしまっている。
「へへ、どーお?
……むむむ」
ウルシュナがエの肩を掴んで前に押し出そうとするがエは抵抗してびくともその場から動かない。
ここで空気を読んだのはユディット。
サッとジの後ろに一歩近づくと周りにバレないようにジの背中をつつく。
「ん……その、似合ってて、可愛いよ……」
流石にジの顔も赤くなる。
なぜなのかジの周りの男どもはジにやたらと女性関係についての話をしたがる。
色んな人が色んなアドバイスをジにする。
なんでそんな積極的にアドバイスするのか知らないけどみんなよく言うのが褒める時は褒めろって言う。
一時の恥ずかしさよりもその時の思ったことを素直に口に出せとアドバイスを受けた。
これまでもかなりしっかり口に出してきたつもりだけど周りのアドバイスも聞いておく。
普段と違った姿をしたエはとても可愛らしかった。
ジの記憶ではエが派手な格好をしていたことはほとんどない。
真っ赤なドレスなど過去を含めてないのではないかと思う。
服とはまた違う赤いドレスはエ自身が持つ赤さをより引き立てる。
2回目の人生に回帰してきた最初の時よりもほんのりと大人びてきた顔をしている。
「ん、あ、あんがと……」
エの顔がさらに赤くなる。
本当ならジにはこの姿は見せるつもりはなかった。
部屋に行ってみてちょっと話してみて、気がついたら何故かドレスを着てみることになった。
憧れがないと言ってしまえば嘘になる。
でもどこかで着る機会もないというエをリンデランとウルシュナで着飾った。
2人でエの髪を編み編みしているとサーシャからお呼びがかかったのである。
恥ずかしいから着替えるというエを押して連れてきたのだけど連れてきてちょっと後悔。
「お嬢様方をお呼びしたのはこちらを試してもらおうと思ったからなんてます」
出来る男ユディット。
ジに何かを言うように促したがそれだけでは不穏な空気になってしまうことは予想ができていた。
不穏な空気が流れ始めたタイミングでさらりと話題を変えてみせた。
若干の強引さはあるがリンデランも下手に話題を掘り起こしてヤブヘビになるのも嫌で流れに逆らわなかった。
「……お父様?」
そこでようやくウルシュナはルシウスがベッドに寝転んでいることに気がついた。
「寝てしまうところだった」
ルシウスはゆっくりと体を起こした。
「ウルシュナも寝てみてはどうだ?」
「これ、ジの?」
「そう、しんしょーひん」
「ふーん、えいっ!」
ルシウスと入れ替わりでウルシュナがアラクネノネドコに飛び込む。
「わっ、すごい!」
今まで使っていたものとは異なる感触にウルシュナが驚く。
「ねねね、リーデもエも来なよ!」
手足を広げて体全体でアラクネノネドコを堪能したウルシュナは目を輝かせて2人を呼んだ。
「えっ?
私は……」
「一緒に飛び込みましょう」
「んー……じゃあ」
エはジのところにいるのだしもう自分のアラクネノネドコを持っている。
だから別にいいと言おうとしたのだけど笑顔でリンデランにお誘いを受けて寝転がるぐらいいいかと思った。
「えいっ!」
「えーい!」
リンデランとエがベッドに倒れ込む。
ほんのわずかに跳ね上がるがすぐにアラクネノネドコが衝撃を受け止めてくれる。
「気持ちがいいですね!」
「でしょ?
これいい!」
リンデランとウルシュナにもアラクネノネドコは好評なようだ。
3人同じベッドに寝転がっている。
こうしているとエとリンデランとウルシュナも仲良くなったのだと見て分かる。
貴賤の上下に関係なく仲良くなれることはとてもいいことだ。
「なんでそんなおじいちゃんみたいに微笑ましい表情浮かべてるんですか?」
「微笑ましい光景だろ?」
「まあそうですけど……」
ニッコリと笑ってうんうんとうなずいているジを見てユディットはなんだか孫を見る年寄りみたいだなと思った。
「他にも硬さがあるのか?」
「はい、何種類か」
「私は……あなたと一緒に夜を共にする時のことを考えたらもう少し硬い方がいいかもしれないわね」
「なっ……サーシャ!
子供の前で何を」
「あら?
2人で寝るなら柔らかすぎるよりいいじゃない?
それとも……何を想像したかしら?」
ルシウスの耳が赤くなる。
あの言い方なら誰でもルシウスと同じような想像をするだろうと思う。
「もちろん、そっちでもその方がしやすいかもしれないわね」
「もうおかーさま……」
なんてことはないように笑っているサーシャであるがまだ若く見えるルシウスとサーシャではちょっと生々しさもある。
むしろサーシャがいうからこそ冗談でもなさそうに聞こえる。
ウルシュナも純情な乙女でもないのでサーシャの言わんとしていることはわかっている。
両親の情事など聞きたくないウルシュナも少し恥ずかしそうにしている。
「親の仲がいいのは良いことじゃない」
「せめてリンデランやエの前ではやめてくれないか」
「うふふ、冗談よ」
「もう遅いぞ……」
なんやかんやとワイワイしながらアラクネノネドコを試していく。
商品開発会議でも色々と意見があったがやはりそれぞれの人で硬さの好みも分かれている。
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