コッコ、デカコッコ、ボスコッコ1
誰が呼んだかジタウン。
最初はそんなつもりなどなかったのだけどなし崩し的に近くの家をジが買い取ってジの仲間たちが住むことになっていった。
さらにその周りの人たちも家をお金で買ってくれるならと機会を狙っていた。
この度イスコが交渉役に当たってくれてまた家を買うことになった。
ジの家の隣の隣とそのお向かいを購入した。
ひとまず隣の隣の家の改修をした。
ジの家よりもさらにひどい状態でとても寒さを凌げるようなものじゃなかった。
そこをノーヴィスを始めとした職人たちが不慣れながら修理して、コッコたちが住みやすいように改修を始めた。
まずは壁ぶち抜き作業。
一階部分をコッコハウスとするために壁を壊して大きな一部屋にする。
必要な柱を残して薄い壁をみんなで壊した。
そんなに広い家ではないのだけど一階部分をぶち抜くと意外と広く見えるものだった。
さらに家自体も少し変える。
家の中の壁でだけでなく外壁も少し壊す。
そして窓を大きくした。
さらには一部の床板を外して地面を露出させて少し耕したりした。
窓から差し込む光がちょうど床板を外した地面に当たるようにしてある。
さらにワラを部屋の隅にも置いておく。
これで室内にいながら地面も堪能できるし日の光があたれば多少の草も生えたりするだろうからコッコたちのストレスも少ないだろう。
「おい……」
「コ、コケェ?」
「目ぇ逸らすな!
明らかに増えてんだろ!」
こうしてひとまずコッコハウスが完成した。
なのでコッコたちを移して住んでもらうために迎えにきたジであった。
しかしちょっと見ない間にメスコッコが増えているどんな原理でメスが増えているのか知らないがノラコッコがどこかで話でも聞きつけているのかもしれない。
別にこれからのことを考えると多ければいいのは確かなのだけどあまり数が多すぎて管理できなくても困るのだ。
「コケ」
「コケ、じゃ、ねぇ!」
スッと卵を差し出すパムパム。
「……はぁ、まあいいけどちゃんと暴れたりとかしないように他のコッコにちゃんと言っておけよ?」
「コケっ!」
キリッとしてうなずくパムパムであるが本当に分かっているのかちょっと怖いところがある。
「とりあえず行くぞ。
近くに馬車停めてあるから」
流石に大量のキックコッコを引き連れて街中を歩けはしない。
ということでキックコッコたちを輸送するのに馬車を出してきた。
馬車に乗せて運べば外から見えないし襲われる心配も少ない。
「少し狭いかもしれんが我慢しろ」
パムパムの協力もあってキックコッコたちは大人しく言うことに従う。
「うーん、あったかいけど……」
キックコッコを乗せてジも馬車に乗り込む。
キックコッコが想定よりも多くて馬車の中もいっぱいである。
外気温が低くなっているのでキックコッコたちも比較的モコッとしている。
馬車の中に集まっているとあったかい。
それどころかジの膝の上にもいる。
こんなにいるのならジも御者台に行きたいのだけど御者台の方は護衛として連れてきたニノサンとリアーネでいっぱいだ。
だから馬車の中にいるしかない。
外は寒いのでいいのだけど鳥臭がする。
「フィオス?」
馬車の真ん中でキックコッコに囲まれていたフィオスがピョンと座席に飛び上がった。
そしてぐりぐりと体を押し付けてキックコッコを押し退ける。
「ふふ、嫉妬か?」
フィオスはジの膝の上に収まる。
何かと思ったけれどフィオスにしては珍しい感情だった。
ジの膝をキックコッコに取られるのが嫌だった。
ここは自分の場所だと言わんばかりにプルンとフィオスが揺れた。
なんだか可愛くてジはニコニコしてフィオスを撫でる。
キックコッコに囲まれて若干めんどくさいなと思っていたけどこんなフィオスの姿を見られたのなら悪くもなかった。
「お前はなんで足組んでんだよ……」
「コケ?」
「いや、いいんだけどさ……」
パムパムは座席に腰掛けて足を組み、ぼんやりと窓の外を眺めている。
お前は人かと突っ込みたくなる。
本当に不思議なキックコッコ。
フィオスも大概不思議なスライムだけどパムパムもかなり変な魔物だ。
パムパムはモンスターパニックを引き起こした特殊な個体である。
だから不思議だったり変であってもおかしくはない。
ということは実はフィオスも特殊な個体だったりするのだろうかと考えた。
ジーッとフィオスを見つめる。
撫でるのが止まった手にフィオスの方から体を擦り付けてきた。
そもそも他のスライムをジは見たことがない。
過去長い人生を歩んできたけれど野生のスライムどころかスライムを魔獣としている人も見たことがなかった。
だからスライムを他の個体と比較したこともない。
弱い弱いなど言われるけれどその実態が謎な魔物であるのだ。
「まあフィオスはフィオスだけどな」
仮に特殊な個体だとしても、あるいは一般的なスライムだとしてもフィオスはフィオスである。
「主人、もうすぐ着きます」
「ほーい」
ゆったりとフィオスを撫でているといつの間にか町近くまで戻ってきていた。
やはりクモノイタを利用した馬車は揺れも少なく快適である。
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