タダ飯は美味い2
そこでたまたまジのことが耳に入り、長期的に見ると大きな効果が見られるのではないかと考えた。
断熱効果がいかほどのものかは分からないがジならばと信用はある。
「それに王様も寂しがっていましたよ。
自分のところに連絡がないと」
「まさか王様にご連絡など……」
「まあそれもそうですね。
ではどうでしょう。
今後このようなことがあれば私のところに連絡をいただくのは」
「シードンさんのところにですか?」
「そうです。
ヘギウス家やゼレンティガム家に送れるのなら我がケンネラルにも送ることはできるでしょう?
私の方に送ってくださればそこから王様に上奏いたしましょう」
そうまでして連絡欲しいかと思う。
もうなんか監視しているレベルで情報得ているのだから要らないだろうと思うけどジから連絡をもらうことが大切なのかもしれない。
めんどくさいと思わざるを得ないのだが王族が熱心な顧客でいてくれることは大きな強みになる。
王族御用達などと銘打つつもりは毛頭ないけれどどのようなお客が利用したかは今後の客足にも影響する。
慎重な態度を取ることも多い大貴族や王族が利用したとなればそれだけで噂は界隈を駆け巡る。
立場上直接繋がることが無理なら間にシードンを挟むことも1つの手段である。
あまり目立ちすぎることもよくないので王様にいきなり来訪されるよりはこうした方がいいかもしれない。
「分かりました。
今後はそうするようにします」
「ありがとうございます。
つきまして今回の加工の件ですが」
「基本的には先に案内出して返事いただいたところからとなります。
王族だからとひいきはしません」
「うぅーむ……しょうがないですね。
事前にご連絡さえいただければこちらはいつでも大丈夫なのでよろしくお願いします」
「その前にどれぐらいの部屋をいくつやればいいかなど打ち合わせが必要になるのでそちらの連絡がいくと思います。
ある程度考えておいてもらうと助かります」
「承知いたしました」
会話が一区切りついた時にちょうど料理が運ばれてきた。
「ん!
美味しい!」
「そうでしょう?
時折この味が食べたくなるのです」
肉肉しい料理が運ばれてきた。
ユディットは一口食べて大きく目を見開いた。
お肉のジューシーな旨味が口いっぱいに広がる。
なかなか量もあってこれを食べているとなるとシードンも思いの外若い。
「そういえばあと一つお願いすることになるかもしれないことがあります」
「なんですか、そのちょっと回りくどい言い方?」
早速お代わりを注文したところで少し悩ましげにシードンが口を開いた。
「まだ確定事項ではないのですがジさんも関わることになるかもしれないのでお伝えしておきます。
今回の窃盗事件について南にあるモンタールシュという国で活動していた盗掘団が引き起こしたものですがこちらの国は我が国と友好関係にあります」
「ええ、そのことについては聞きました」
「多少距離はあるので友好関係とは言いつつも直接人を送りあっての交流は少なかったのですがモンタールシュの王が代替わりをしまして。
人的交流も深めていこうということになったのです」
「へぇ、そうなんですか」
それにどうしてジが関わってくるのだと2皿目のお肉に手をつけながら話を聞いていく。
「貴族間交流、あるいはアカデミーなどの若い人の交流などいくつか考えていたものがあるのですが今回あのような事件が起きました。
そこで向こうの建国祭に合わせて事件において功績を上げた人を招待しようという動きもあるのです。
ヘギウス、ゼレンティガムも確保に関わりました。
貴族でもありますし国の交流の起点にもなります。
そしてジさんについても招待を検討しているのです」
「俺を?」
国の交流を深めるのに貧民のジはどう考えてもふさわしくない。
盗掘団の事件については大きく関わることになったけど招待客にするには身分というものが違う。
「疑問は分かりますが向こうはあまりそうしたことは意識していません。
一部の貴族を除けば向こうの国では全ての国民が一般階級。
貧富の差はあれど貧民という形で呼ぶことはありません。
ですので向こうからすれば貴族ではない、というぐらいの認識です」
「そうなんですか……」
国が違えば文化も変わる。
貧民がそうした場にいていいのかとジは考えてしまうがモンタールシュにとってはジも一般階級で、今回の場合は褒められるべき功績を上げた一般階級市民に他ならないのである。
建国祭における貴族のパーティーなんかにそうした一般階級がいても理由があるなら全く気にしないのだ。
「あとはジさんがやっている事業にも興味を持っているとか、いないとか。
どの道まだ検討段階……向こうもこちらも話は煮詰まっておりませんがそのうちそうした話があるかもしれません」
「分かりました。
一応心に留めておきます」
「いざ本当に招待されることになりましたら国の方でもバックアップしますので」
そんな面倒なことにはならなきゃいいなと思いながらジはお腹に3皿目のお肉を詰め込む。
食べられる時に食べておく。
こんな時ばかり貧民の癖が出てしまう自分が少しだけ恨めしいのであった。
ただこの肉が美味いのも悪い。
シードンはモリモリと食べるジのことを微笑ましく眺めている。
「ふふ、こうした立場になるとみんな私の前では遠慮なくして食べなくなるのですがこうして食べてもらうと気分がいいですね」
昔はジのように食べたものだが最近すっかりと食が細くなった。
ジの食べっぷりが気持ちいいとすらシードンは笑っていたのであった。
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