トリ頭とは言わせない5
パムパム、キックコッコ、ジたちの順番で歩いていく。
「なんか別れた時より増えてません?」
「増えてるよな」
パムパムを見逃してやった時にも取り巻きのキックコッコは何匹かいた。
しかし今改めて見るとその時よりもキックコッコ数が多いように見える。
正確な数なんて覚えちゃいないけど多いのは確かだとジも思う。
野生のキックコッコがどこかでパムパムに加わることだってあるから旅する間に増えたのかもしれない。
「……おい、ジ」
「うん、見えてるよ……」
ダンジョンの出現方法も様々あるけれど一般的なものは洞窟型である。
本当に洞窟っぽいのだったりいきなり地面が盛り上がるようにして入り口が出来ていたりと洞窟型にも色々ある。
洞窟っぽいものは分かりにくいけれど地面が盛り上がって入り口が出来るようなものは周りから見ても異様なので分かりやすい。
そして今ジに見えているものも異様と表現してよいものだった。
巨大な木が見える。
他の木々よりも遥かに大きな木が進む先に生えていた。
「あれがダンジョンですかね?」
「まだ分かんないけど絶対おかしいよね……」
ジたちは警戒を強めるけどパムパムはなんでこともないようにスタスタと大きな木に向かっていく。
「ダンジョン……っぽそうだな」
まばらに生えていた木がひらけてその真ん中に生えている巨木はよく目立つ。
木のところまでたどり着いた。
見上げるほどに大きな木は青々と葉を茂らせていて不思議な力強さを感じさせる。
「ここが入り口だな」
ジたちがきた方向からはただの木のように見えていたが逆側に回り込んでみると木の根元にポッカリと穴が空いていた。
真っ暗な穴は覗き込んでみても奥が見えない。
試しに石を投げ込んでみるけれど何かにぶつかるような音もしない。
この穴はダンジョンの入り口であるとみて間違いない。
「地図で見るとここだな」
リアーネとジで地図を広げて現在地を確認する。
結構紆余曲折あってここまで進んできた。
慣れたリアーネがサッと大体の位置を指差す。
改めて地図で場所を見てみると意外と町からは遠い。
リアーネによるとこの場所の町に近いところまでは冒険者も来るところであるがジたちがいるのは町から見て遠い側でそこまで進む人は少ないらしい。
だからダンジョンも見つからなかったようだ。
大きな木の根元に入り口があるのは目立つし、ジたちが探さなくても遅かれ早かれダンジョンは誰かに見つかっていたことだろう。
そうなるとパムパムたちも見つかる可能性があったのでパムパムが魔獣として呼び出され、ジに出会って助けを求めたのは運が良かった出来事かもしれない。
ダンジョンを見つけたので一度撤退することになったのだけど付いてこいと言った感じでパムパムがまた歩き出したので付いていく。
ダンジョンの木から少し離れたところ、やや窪地のようになったところは背の高めな草が生えていた。
そこには草を集めて作ったキックコッコの巣があった。
つまりはパムパムの家である。
「コケ」
「えっ、くれるの?」
キックコッコたちが巣に戻っていき、パムパムも何をするのかと思ったら巣に落ちていた卵を拾って持ってきた。
卵を差し出されてジは困惑するけれどどうやら卵をくれるらしい。
「でももらっても食べるぐらいだぞ?」
鳥系の魔物と契約した人が鳥を集めて卵を産んでもらうことがある。
ただそんなに数も取れないので卵って意外と希少な食料だった。
キックコッコの卵も時々冒険者ギルドで採取の依頼が出されたりすることもあるのだ。
「コケェ」
「……食べてもいいのか?」
卵の活用法なんて他には思いつかない。
ジの言葉にうなずいてみせてパムパムは受け取れと卵を差し出し続ける。
「んじゃあ、もらうよ」
きっとこうして付き合ってくれることのお礼なんだろうと思った。
実際この卵は生まれることがない。
増やしすぎて問題になったことはパムパムも理解しているし、モンスターパニックの時のような異常な魔力の盛り上がりはなかった。
だからこの卵は生まれてこないもので食べても問題のない卵なのである。
だけど間隔を空けてちょっとずつ生まれる卵も温めてキックコッコを増やしたりもしていた。
「卵か……」
タとケにあげたら喜ぶかなと思いながら割れないように慎重にジは卵を持って帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます