あいつ兵士辞めるってよ1
軽くみんなにも相談してみた。
またモンスターパニックのようなことを起こされても困るし未発見のダンジョンはダンジョンブレイクを起こす危険があるのでとりあえずダンジョンだけでも探してみることになった。
ただまずはダンジョンの場所を探すことから始めなきゃいけない。
なのであるがそれも簡単じゃない。
パムパムは直接呼び出されている。
つまりどこから呼び出されているのかは不明なのである。
調べるにしてもその方法から考えなきゃいけない。
のでパムパムのことはとりあえず後回しにして本格的にどうするのか相談しながら考えることになった。
たとえダンジョンがあったとしてもパムパムの話ではダンジョンが現れたのは最近だしすぐにはダンジョンから魔物が出てくることはない。
そのことをパムパムに説明するとちゃんと分かってくれたようである
ヒは縁もあったことだし本人に聞いてみたら望んだので商会で雇うことにした。
「お待たせしてすいません」
「いえいえ、急に訪ねて申し訳ございません」
ヒは商会で雑用なんかをこなしてくれていた。
給料もらって大婆に何かプレゼントでも買うのだと頑張っているヒが大急ぎで家にいたジを呼びにきた。
商会で相手にしている人たちの都合上どうしてもジ抜きでは対応できない人も時々いる。
最近はマダム相手ならニノサンぶつけとけば割と解決するんだけど会長を出せ、会長とじゃなきゃ商談しないっていう人も一定数いたりもするのだ。
大体そんな人に限って事前の予約なんてなかったりする。
フィオスを抱えて走って商会に戻った。
ヒにはちゃんと家で一休みしてからのんびりお店に来るように言っておいた。
そして商会に着いてみると店の前に馬車が止まっている。
思っていたよりも質素な馬車だなと思ったら馬車に書かれた紋章を見て何となく相手の目星をつけていた。
入ってみると商談用のテーブルに1人の男性が座っていた。
少しばかりやる気のなさそうな顔をして白い神官服に身を包んでいるその男性は何回かジも会ったことがある。
神官長を務めているアルファサスであった。
かつてジが貧民街の外れにある廃墟にさらわれて死にかけた時に治療をしてくれた人であった。
大神殿に入院している時には何かと気にかけてくれたし、なぜか知らないけれどジが大神殿におもむくとアルファサスに話が通って対応してくれることもあった。
仲の良い相手ではないにしても良い人だし信頼のおける人だとは思う。
ただやる気はあまりなさそうである。
仕事はちゃんとやってくれるんだけど。
「それで何のご用ですかね?」
以前馬車を購入してくれたことがあったのでその関係かなと思っていた。
「こちらで購入した馬車は非常に快適です。
腰の重い年寄りども……失礼、他のお偉方も羨ましがっています。
そのうちこちらに注文が入るかもしれませんね」
「そうですか。
それはありがたいですね」
「是非とも個人でも所有したいところですが慎ましくがモットーですし神官長もそんなに儲かる役職じゃありませんからね」
「今度廉価版の馬車も出ますのでご検討ください」
「本当ですか?
それはいい。
検討させてもらおう」
ジの計画では馬車の廉価版を作るつもりであった。
モンスターパニックなどの影響と食糧不足のために馬車を貸し出したりとのびのびになっているがいくつか固定のパーツから選んでもらって完全受注ではない馬車を販売する。
「話は馬車に関してではないのです」
そうだろうと思った。
「エについて話は聞いていますか?」
「エについて?
何かあったんですか?」
ジの表情がくもる。
今のところエについては何も聞いていない。
何か問題でもあったのかと一気に心配になる。
「どうやらエさんは兵士を辞めようとしているらしいのです」
「エが……」
「そうなんです。
そこで1つ君にお願いがありまして」
「お願いですか?
エを引き止めろとでも?」
過去でのエは最終的に国の兵士ではなかった。
過去におけるランノが亡くなった後にエは兵士であることを辞めた。
ランノが引き金であったことは間違いないけれどそもそも兵士として活動することはあまりエに合っていなかったのである。
今回の人生ではそれが早まったのだろうと思った。
「兵士を辞めることは構いません」
「じゃあなんで」
「兵士を辞めても構いませんが教会の活動は是非とも続けてもらいたいのです」
現在エが教会にいるのはエが望んだからというより治療する術を学ぶためである。
過去でも教会の方にはいたのでそれなりに教会の方は肌に合っていたのだと思う。
「それでもしエがお辞めになられるなら教会に所属していただきたく思いまして」
「それはエ自身の考えでしょう?」
「そうなんですが一言口添えをお願いできればと思いまして」
お前のせいだよとアルファサスはちょっとだけ思っていた。
エに聞いた話でもなく噂の盗み聞きでしかないがエが兵士を辞める理由は大事な人のためだという。
兵士であると自由が利かなくてどうしても側にいることができないから辞めてしまうのだとシスターたちが話しているのを聞いてしまったのである。
そんな相手1人しかいないだろうとアルファサスはとっさにジを思い浮かべた。
あれだけ献身的にお世話をして休みのたびに会いに行っている。
他の男のためだったらアルファサスが女性不信になるところだ。
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