驚きの再会2
「なんですかあなたは?
今私が会話しているのは主人ですが?」
「だから言っているでしょう。
あなたのような素性の怪しい人は会長の騎士である私が近づけさせないと。
それに勝手に会長を主人とは何事ですか!」
睨み合うユディットとニノサン。
「待て待て待て待て……」
流石のジも状況を理解できないでいる。
ケンカになるのもマズイし間に割り入って2人を止める。
「ニノサンってあのニノサンでいいんだよな?」
「そうです。
度々主人と剣を交わらせていただきました、あのニノサンでございます」
「そう……」
「再び主人にまみえることを胸にここまで戻ってまいりました!」
「おとと、大丈夫か?」
「はい……少しめまいがしただけです」
「話は後で聞くからまずは治療を受けてきなよ」
「分かりました!
失礼します」
ニノサンはジに深々と頭を下げて治療をしている神官のところに向かっていった。
「なんだか見覚えのある奴だな。
先の内紛の時にチラリと顔を見た気がするが……何があった?」
「……俺にもあんまり分かってません」
気づいたら側にいたグルゼイの質問にジも肩をすくめる。
「なんだい、ニノサンの知り合いってのはあんただったのかい」
「まあ……顔見知りですかね」
ジとニノサンに注目していた人たちもそれぞれの作業に戻っていった。
その中で1人の船員が近づいてきた。
「会わねばならない人がいるっていうから恋人かと思っていたが意外なところで出会ったものだな」
「そ、そうなんですか……」
「今回の襲撃もニノサンがいなかったら全員死んでいた。
魔法でバリアを張ってみんなを守ってくれていたんだ」
「へぇ……」
「だから頼むよ、ニノサンの主人よ。
良い奴だから大切にしてやってくれよ」
それこそ恋人にでも言ってやってくれとジは引きつった笑顔を浮かべる。
「誰なんですか、アレ!」
対抗心メラメラのユディットはまだニノサンを睨みつけていた。
ーーーーー
奇跡的な強運だったらしい。
渓谷に落ちたニノサンだったが渓谷の底は川になっていた。
かなりの急流でとてもじゃないが人が生きていられるようなものではなかったがそこにたまたま大きな木が流れてきた。
ニノサンは木に剣を刺してしがみついて溺れないように必死になった。
川を流されて体力や気力を奪われて何度もそのまま沈みそうになったがニノサンは諦めなかった。
木の形がよかったのか上手いことグルグルと回転しなかったから溺れずに済んだのかもしれない。
やがて川は海へと流れた。
その時たまたま近くを商船が通りかかった。
死にかけだったニノサンは治療を受けてなんとか持ち直した。
助かったニノサンだったのだけど話はここで終わらない。
ジに負けて命はジのものであるとニノサンは戻りたがった。
だけど実はその船は世界の色々な国をめぐる商船であってこの国に戻ってくることになるのはだいぶ先のことだったのだ。
悩んだみたいだけど恩返しがてらニノサンは船の仕事を手伝いながら帰ってくる日を待っていたらしい。
「あの時……私は確かに負けました。
全てが完璧でした。
寸分の狂いもなくシンプルで計算され尽くした戦いにやられて私は渓谷に落ちたのです」
そこまで絶賛されるとむしろ気まずくなる。
「そして風の噂で内紛は終わったと聞きました。
自首するつもりなど毛頭ありませんが私は負けた側ですから行く当てもありません。
この命使ってみるつもりはありませんか?」
「ううむ……」
「何をお悩みですか!
こんな奴いらないでしょう!」
悩むジにユディットが動揺する。
「僕がいらないかどうか決めるのは貴様ではない」
「なんだとぉ!」
何でそんなに仲が悪いのだ。
悩んでいるのはユディットが頼りないからということではない。
現状平時における人手は足りている。
けれどやはり緊急事態になった時にもうちょっと人手が欲しいと思った時もある。
今は都合上家とお店がある。
リアーネが出ていていない時にその両方を守ろうと思ったらユディットだけではどうしても足りない。
ニノサンの実力はジも良く知っているところである。
さらにニノサンは顔が良い。
すこぶる顔が良いのである。
馬車の購入者には揺れないことでマダムからも予約が入ることも多い。
この顔の良さならきっとマダムたちもお気に召されること間違いない。
店の護衛として立っているだけでも評判になる。
商品も大事だが環境、あるいは接する商会員もお店には必要な要素になる。
護衛ならば愛想良くする必要もない。
立ってるだけでお役立ちな可能性が大きい。
つまり騎士的な役割を期待してニノサンの提案を迷っているのではない。
強いからそこら辺は当然に期待はしている。
「ちなみに仕えなくていいから自由にしろって言ったら?」
「勝手についていきます」
「なんでよ……」
どうやら融通のきかない性格のようで、とても良く言えばどこまでもまっすぐな性格をしているようだ。
今はジを主人としているためにそれを曲げるつもりはない。
「俺のことなんも知らないのに仕えるとか言って大丈夫なのか?」
ただジとニノサンは顔こそ知っているが顔しか知らないような仲である。
仕えるのに相手のこと知らないなんて言語道断な気がする。
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