閑話・女子会?6

 ベッドの上に移してもフィオスはまだブルブルしている。


「きっとお肉食べ終わるまではあのままなんでしょうね」


「フィオス嬉しそうだね」


「そうだね」


「あれが嬉しそう……まあ色々だからな」


 みんなも冷める前にと料理を食べるのを再開する。

 マナーは悪いがしゃべりながら楽しんでお肉料理を堪能する。


「ただちょっとだけお腹の余裕は残しておいてくださいね」


「なんで?」


「デザートもありますから」


「デザート!?」


「ほんと?」


「ほんと」


「むむむ……」


「どうしたの?」


「でも、まだ食べたい」


 タとケも食べ盛り。

 デザートも食べたいが目の前には美味しそうな料理がまだまだある。


 デザートのためといってもそれを我慢するのは酷である。


「じゃあ明日も食べましょう」


「明日?」


「そうです。


 どうせジ君はしばらく帰ってきませんし、何日か泊まりませんか?」


「いいの?」


 タとケが目を輝かせる。

 そしてチラリとウルシュナの方を見る。


 ちゃんとここがウルシュナの家なことは分かっている。


「うちは大歓迎だ」


 当然友達が泊まることを拒否はしない。

 ついでに友達が泊まっているなら厄介な習い事をいくつか受けなくても済むなんて思惑もあった。


「だから明日もまた作ってもらいましょ?」


「うん!」


「ありがとう!」


 フィオスも可愛いけどタとケも可愛い。

 リンデランはニコニコしてタとケの頭を撫でてあげる。


「余った料理はフィオスが食べてくれますし」


「じゃあ……これとこれとこれで終わり!」


「私はこれとこれとこれ!」


 デザートのためにお腹の余裕を多少残したい。

 食べて美味しかったものと気になっているものを選んで食べる。


 そうしている間にフィオスもお肉の塊を食べ終えていた。

 流石に量が多いしフィオスが食べるならとみんなも魔獣を出して料理を分ける。


 基本的に魔獣の扱いは千差万別で固定化されたものがない。

 常に出しておくと良いと主張する学者もいれば適度に戻したり出したりした方がいいとか魔石状態にする、逆召喚で戻すのがいいとか意見も割れている。


 要するに好きにしてもいい。

 ただ人の食べ物ばかり与えて贅沢させ過ぎてもいけないなんてことも言われているが今日はいいだろう。


「そしてお待ちかねのデザートです!」

 

「わーい!」


「やったぁ!」


 フィオスがお皿ピカピカになるまで食べてくれて本日ラストのデザートタイム。

 焼き菓子だけでなくケーキや果物なんかも買ってきたので料理長が綺麗に切って盛り付けてくれた。


「ジュースもありますよ」


「おっ、やったね!」


 もちろんウルシュナ御所望のジュースもある。


「はい、氷」


「あんがと」


 リンデランが魔法で氷を作ってコップにいれる。

 そこにジュースをなみなみと注いでウルシュナは一気に飲み干す。


「プハァー!


 美味い!」


「フィオスも飲むー?」


 タがフィオスの前にジュースの入ったコップを置く。

 

「飲まない?」


「いらない?」


 けれどフィオスはジュースを飲まない。

 覗き込むように体をコップの方に動かしているけれど覆いかぶさらない。


「何ででしょうか?」


「うーん……あれじゃね?


 氷」


「あっ、まさか?」


 タが渡したコップにジュースは入っているが氷は入れていない。

 もしかしたらフィオスは氷を入れて欲しいのかとリンデランが氷を作る。


「飲んだ……」


「氷だったな」


 氷を入れたコップに覆いかぶさるフィオス。

 少しずつジュースが減っていき飲んでいることがわかる。


「本当に不思議ですね……」


 フィオスと共にデザートを楽しむ。

 デザートでもフィオスをプルプルしていたけれど肉の塊が1番反応が良かった。


「お腹いっぱい」


「動けない……」


「ふふふっ、よかったです」


 ベッドに寝転がるタとケ。

 ポコっとお腹の膨らんだ2人の間には少し大きくなったフィオスがいた。


「えいっ!」


「よっと!」


 リンデランとウルシュナもベッドに飛び込む。

 ウルシュナの大きめのベッドだけど流石に4人と1匹では狭い。


「本当は食べてすぐこんな風にしちゃダメなんですけどね」


 フィオスを中心に4人寄り集まって寝転がる。

 

「タリシャとケミュイって呼んでもいい?」


「うーん、どうする?」


「本当はまだダメだけどリンデランお姉ちゃんとウルシュナお姉ちゃんはいいよ」


「じゃあ今だけ。


 お泊まり会の間だけならどうだ?」


「それならいいかな?」


「乙女の秘密だ」


「乙女の」


「秘密……」


 タとケが顔を見合わせて、少し頬を赤く染めてニヒヒと笑う。


「タリシャ」


「ケミュイ」


 ウルシュナがタリシャを、リンデランがケミュイを呼ぶ。

 聞きなれない名前がくすぐったくてタリシャとケミュイが照れたように笑みを浮かべる。


 夜は更けていく。

 いつしかみんなも眠ってしまった。


 スライムは眠らない。

 愉快な友達に囲まれて、みんなを起こさないようにフィオスはプルプルと小さく揺れていたのであった。

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