甘えるのもワガママも7
「にしてもよ」
「ん?」
「意外とお前の親父さん厳しそうでもないな。
厳しそうっちゃ厳しそうだけど……思ってたよりも話は通じそうな感じ」
「なんだそりゃ?
父上は……昔から厳しいよ。
どうかって言うと放任主義って感じなのかな?
あんまり構ってもらった印象もないな」
「ふーん……」
過去では最後ユダリカに討ち取られたカルヴァン。
そんなことになるぐらいだから冷徹非道な人物像を勝手に抱いていたが今のところ無口な親父さんなぐらい。
それよりユダリカの口ぶりからすると問題なのは弟の母親の方かもしれない。
「自分で仕送り止めといたくせにお金は足りてるかとか聞いてくるし俺のこと忘れてんじゃないのかね。
……だったらなんで来たんだって話になってるなって話が堂々巡りしちゃうけど」
「……ふーん」
「やめやめ!
飯が不味くなる」
「な、なあ」
肉、魚、野菜、デザートとなんでもござれ。
何を食べるのか迷っているとウルシュナが後ろに近づいていた。
「おう、ウルシュナ」
「ちょっと手伝ってくれない?」
「何をだ?」
「あんま肉ばっか取ってるとお母さんに怒られるから隠してほしいの!」
そんな小細工してもサーシャには丸わかりな気もするが友達の頼みは聞いてやる。
「アレ、アレが食べたい!」
「なんで俺まで」
「いいじゃん、友達でしょ!」
「ト、トモダチ……」
「こっち立って!」
「う、うぃ……」
「ジはこっち!」
ウルシュナよ、気付いてないみたいだけど普通に見られているぞ。
何してるか見えてなくても怪しい行動と皿の上を見ればやってることはバレバレ。
サーシャと目が合うジ。
ニッコリ笑うのがまあ怖い。
取るとこまでは良いがもうお皿山盛りにお肉。
取った後のごまかしなどするつもりがないのか。
「取っちゃったら戻すなんてこと出来ないしね!」
お皿山盛りのお肉を持ってサーシャのところに向かうウルシュナ。
取った料理を戻すことはマナー違反。
しかも人前でそんなことを怒るわけにもいかない。
取ってるところを止められなければこの場においてはウルシュナの勝ちなのだ。
後でどうなるのかはジは知らないけど。
「おっ、ダンスの時間だな」
一通り挨拶が終わって今度はダンスの時間となる。
楽隊が出てきて軽く音楽を演奏してみんなにダンスの用意を促す。
最初は主役と見本となりやり方をわかっている大人たちが踊る。
ルシウスとサーシャもそのうちの1組。
カルヴァンも付き合いとして北部系の貴族で既婚者、パートナーが事情で踊れない人を相手にダンスをするようだ。
慣れた大人のダンスは流れるようで参考になる。
「リンデランも上手いな……」
がやはり主役はリンデラン。
パージヴェルはかなり大柄な方だがリンデランはそれに合わせて踊っている。
パージヴェルの方はまともに踊れているけれどそんなに上手じゃないのにリンデランが上手く踊るので上手く見えている。
踊りにはまだ心配あったけどリンデランが相手なら上手く見えるように踊れそうだ。
一曲踊り終わり、大人たちが引いていく。
二曲目からは大人も混じるが子供たちの時間にもなる。
そして年頃の男の子たちはリンデランにダンスを申し込もうとワッと集まる。
ここでリンデランとジの視線がぶつかる。
リンデランから踊ってほしいと頼まれたがここでリンデランからお誘いするのははしたないとされてしまう。
「ちょっくら行ってくるわ」
「えっ?
ああ……そういうことね。
いってらっしゃい」
ジはこのことはわかっていたので取った料理を少なめにしておいた。
タとケもリンデランとジがダンスすることは知っているので止めず、ジはゆっくりとリンデランのところに向かう。
待ちきれずにジの方に向かうリンデラン。
「私と踊っていただけますか?」
ジは片膝をついて手を差し出す。
「はい」
そしてそっとジの手を取るリンデラン。
カルヴァンのおかげで散った注目がまたジに集まる。
「どれぐらい踊れるようになったのか拝見します」
「足は踏まないようになったと思うけど……リード頼むよ」
「ふふっ、任せてください」
他の子供もパートナーを見つけて用意が出来たので音楽が鳴り始める。
「中々様になってるじゃないか」
ゆったりとしたペースの曲。
そんなに足運びも難しくなく余裕を持って踊れる。
「……その」
「どうした?」
「………………私ってご迷惑ですか?」
「何が?
一体どうしたんだよ?」
「このパーティーにジ君をお誘いした時にファフナさんに言われました……甘えるのと、ワガママは紙一重だと。
だから気をつけた方がいい。
お願いとして甘えることも行き過ぎれば相手に負担となるワガママとなりうる、そう言われました」
「そんなことが……」
「私はワガママ……ですか?
ジ君が優しくてなんでも出来てしまうので私はついつい甘えてしまいます。
それが負担になってて、ワガママになってて、ジ君に嫌われたら。
そう思うと胸が張り裂けそうです」
「……なかなか難しいことを言うな」
リンデランの目は真剣そのもの。
ならば真剣に答えてあげなければいけない。
だけど答えを出すには難しい話であるとジは悩む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます