君たちは祝福されている3

 メリッサやヒスもプレゼントを渡す。

 グルゼイも用意していたものを渡した。


「あっ、えっ、わぅ……」


「わぅわぅわぅ……」


 困惑するタとケ。

 こんなにちゃんとしたプレゼントをみんなからもらうことなんてこれまでなかっただろう。


「遅くなってすまーん!」


「やっほー!


 来たよー!」


 そこにエとライナスが店にやってくる。

 一応国の兵隊さんだから訓練後に急いで駆けつけてくれた。


「もう食ってるしあげてんじゃん!


 じゃ、まずは誕プレだな!


 いつもジがお世話になっておりますー!」


 ライナスもプレゼントを渡す。

 タとケも困惑しながらもプレゼントを貰えるのは嬉しい。


「ライナスにしてはオシャレな物ね?」


「してはって何だよ?」


 ライナスがあげたのはネックレスだった。

 小さい青い石がついたものでシンプルなデザインでどこにでも着けていけそう。


「これは解毒の効果がある魔道具なんだ」


 ライナスは実は双子ちゃんに感謝していた。

 しっかりしてるようで割と雑なジ。


 特にご飯に関しては生きていけりゃいいみたいなところもあったりした。

 ライナスはそこら辺良いものだったりたくさん食べたい人なのでジとは釣り合いが取れていた。


 ライナスがいなくなってから食事の心配がどうしてもあった。

 実際のところライナスとエがいなくなってジの食事は結構雑だったりもしていた。


 そんなところで現れたタとケ。

 自分よりも幼い2人のために食事をちゃんとしたり、いつの間にか食事を作ってくれていたりとその存在は大きいものだった。


「まあそんな高いもんじゃないぞ?


 兵隊の間でやるおまじないみたいなもんだ」


 遠征とかにも出る兵士では役割はどうしても交代で行う。

 大体の役割で交代でも構わないのだけどそうもいかない役割もある。


 その1つが飯番である。

 要するに料理をする人だ。


 料理の練習などはしないので料理の上手い下手はいつまで経っても変わらない。

 だから自然と料理の上手い人が料理をするのが固定となる。


 そんな人たちのことを飯番と呼ぶ。

 飯番の機嫌を損ねると飯が不味くなるなんて言われたりもして大切にされる役割。


 昔から飯番が何となく固定されてくると今後も頼むぞと飯番にみんなから贈り物をする。

 それがこの解毒の魔道具である。


 外に出れば保管してある食材を使う。

 どうしても日にちが経つと傷んでしまうこともある。


 また食材を取ってくるようなこともある。

 明らかに猛毒なものは避けられるのだけどそうではなく腹を下す程度のものなんて分かりにくいものも多い。


 そのような飯番が1番最初に当たってしまいそうな弱い毒みたいなものを防ぐのが目的だ。

 美味しくご飯が食べられれば活力も出るし生存率も上がる。


 遠征した部隊が無事に戻れるようにと願いを込めたおまじないなのである。

 タとケは兵士でないのであげるには少しばかり意味合いが違うが料理はするので役に立つはずだ。


「ありがとう!


 ……ジ兄着けて!」


「私も!」


「えっ……あげたの俺……」


「普段から一緒に住んでる人との信頼の差よ」


 タとケはキラキラした目でジのところに駆け寄る。

 流石に子供だからプレゼント攻撃には心躍ってしまうのはどうしても止められないみたいだ。


 ジがネックレスを付けてあげる2人ともニヘラと笑う。

 そしてエもプレゼントを渡した。


「私からは髪留め。


 ……私も貰って意外と便利だったからね」


 使ってくれてるんだとジは思った。

 これまで髪留めをしているところを見たことがなかったのであんまり気に入らなかったのかなと思っていた。


 エは大切に髪留めを使っていた。

 友達とちょっと出かける時とかに付けたりしていてジの前では恥ずかしくて着けていなかったのだ。


 髪留めの方はエがつけてやる。

 ちょっとオシャレさんになったタとケ。


 しかしその時もふと母親のことが頭を掠める。


「2人とも、これは俺からだ」


 最後はジ。


「これはアダマンタイトを使った包丁だ」


「アダマン……?」


「わっ!


 キレーな包丁!」


 受け取った本人よりも周りのみんなが驚いている。

 アダマンタイトはジの家の前に突き刺さっている巨大な剣の失敗作に使われている金属だ。


 硬く丈夫な金属で超高級なものである。

 アダマンタイトで作られたものは簡単に手入れしていくだけで一生使い続けられると言われていて、鋭さもさることながら切れ味は落ちず汚れにも強い。


 普通は包丁になんてしない金属。

 ニコニコして平然と渡したけど買おうと思えばバカみたいな金額になるものだ。


 ただジは失敗作があるので自由にできるアダマンタイトが手元にある。

 なんかいつの間にかみんながいつになったらフィオスが失敗作を食べるのかと気にして見ていたりするのだけどジはちょっとフィオスに食べ方を変えてもらった。


 上から順に溶かしていたのを細かく切るように溶かしてもらった。

 表面が溶かされた影響でテロッとして見えるアダマンタイトを加工してもらって包丁を作った。


 ヘギウス商会に職人をご紹介いただいた。

 お店の予約と合わせてポケットマネーが消し飛んだけどお金は使うためにある。


 包丁はオールアダマンタイトではない。

 アダマンタイトだけで作ると包丁サイズでも重たすぎるので扱いやすいようにメッキのような形でアダマンタイトを使っている。

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