バカヤロウ1

「よし、みんな行くぞー!」


「おー!」


 後日また集まった6人。

 再びダンジョンに入っていく。


 セーフルームの前の道を全部しらみつぶしにしたいところではあるがそれでは時間がかかりすぎるのでセーフルームから先に進むことにした。

 同じ場所にまたゴブリンが現れていたけれどそれをサクッと倒して地図に沿って歩いていく。


 内部の構造がリセットされるタイプのダンジョンでなくて助かった。

 寄り道しないで進んで来ればセーフルームまでそれほど遠くない。


「あっ、カワイイー」


「あれは……コボルトかな?」


 人身犬頭の小柄な魔物であるコボルト。

 犬みたいな頭をしているが野生のコボルトは大体見た目に可愛くなく、意外と好戦的で人里に近いところにも現れる魔物である。


 そのコボルトの人形。

 顔はデフォルメされて犬っぽく、可愛くなっている。


 素手だったゴブリンと違って木の棍棒を持っている。

 戦闘能力的にはゴブリンと大差がないのでライナスとジで突っ込んでみる。


 通路の左右壁際ギリギリを走る。


「こっちだ!」


 単純な作戦だが声を出したジの方に振り向くコボルト。


「こっちもいるんだよ!」


 ジに気づいて声を上げて威嚇するコボルトだが逆側からはライナスが来ていることに気づいていない。

 ズバッと首の裏を切られてコボルトも中綿を飛び散らせて倒れた。


「イェーイ、らっくしょー!」


 ライナスとハイタッチする。

 まだまだ余裕がある。


 さらに進むとコボルトが3匹に増えた。

 武器を持っても動きが変わらなきゃ特に問題もなかった。


「少しずつ変化してきてるね」


「そうだなセーフルームあったし、ゴブリンが武器を持ったコボルトになった。


 そんで次はウルフか……」


 ちょっとあの人形欲しいとジも思う。

 コボルトはすぐに終わって次はウルフの人形となった。


 いや、あれは大きさ的にウルフドッグだろうか。

 何にしても可愛らしい。


「チェッ、なんかあの訓練を思い出すな」


 魔物のラインナップは今のところ初心者向けで森の浅いところに出てくる魔物だ。

 アカデミーと子供部隊共同で行われた訓練を思い出す。


 あの時もそんな感じの魔物と戦っていた。


 その後悪魔に攫われたり、死にかけたりと散々な目にあったのでいい思い出とは言い難い。

 王様と知り合えたしライナスはロイヤルガードであるビクシムに出会うことができたので、悪いことばかりでもなかったけど。


 ゴブリンが出たり、コボルトが出たり、ウルフドッグが出たり、多かったり、混ざっていたりとただ1体2体だけでなく出方も色々あった。

 

「セーフルームだ!」


 そろそろ疲れてきたと思っていたらセーフルームが現れた。

 考えられて配置されたようにタイミングがいい。


 入るとちょっとデザインは違うがソファーやテーブルが置いてある。


「うーん……」


「どうしたの?」


 みんなが思い思いに休む中、ジは1人唸っていた。

 手にはオロネアから借りた懐中時計があった。


 ダンジョンの中では時間が分からなくなるので持っていきなさいと持たせてくれたものである。


 そんな唸るジのそばに寄ってエが懐中時計を覗き込む。

 特に針がおかしな動きをしているわけでも変な時間なわけでもない。


 何をそんなに考えることがあるのか。


「時間が半端だと思ってな」


「半端って何?」


「先に進むには遅いけど、このまま休むには早いかなって時間なんだ」


「ふーん」


 次のセーフルームがどこにあるか分からない。

 すぐ近くってことはないだろうからここを諦めて進んでしまうと日を跨いでしまうかもしれない。


 けれどここで切り上げるにはまだ体力もあるし少し時間的には早い。

 それはそれでいいのだけどちょっともったいない。


「んー……みんな」


 時間も体力もある。

 どうやらダンジョンの構造は今のところ変化しないようである。


 そこでジは地図埋めをすることを提案した。

 途中にはいくつも分岐があったが1つ1つ調べたわけじゃない。


 セーフルームを中心として周りの道がどうなっているのかを早いうちに調べておこうと思ったのである。

 悪くない考えなのでみんな同意して少し周りを捜索することになった。


 作りが同じなために地図を描いていなかったら迷子になっていそうだ。

 ライナスとユディットが競い合うようにして魔物を倒す。


 エやフの魔法は出来るだけ温存していてもらって、基本は接近戦で倒す。

 順調に周りの道を埋めて、程よい時間にセーフルームに戻って休むことになった。


 子供が故に多くの荷物は持つことができない。

 中には魔獣に荷物を持たせるという人もいるけれど魔獣は出していると食費などがかかってしまうので強い魔物を荷物持ちとしてただ出しておくのは効率が悪い。


 なので持ってきているのは簡単な肌かけとテント1つ。

 こちらも女子がいるので持ってきているぐらいの感覚である。


 着替えとかどうしても必要になるのでそうした場合のためにテントで、不慣れな手つきでどうにかテントを張った。

 しかし硬い床で寝るよりもソファーで寝たいとなったのでテントは着替えたり女子の身だしなみを整えるぐらいの用途にしか使われなかった。

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