守られるべき家9
「てめえ……こんなことしてタダで済むと思って……」
「そのよく喋る口を閉じてさっさと出ていくんだ」
「な……!」
「これが最後だ。
出て行け」
「このガキ!」
「ユディット」
「はい」
「わ、分かった!
出て行く、出て行くから!」
子供相手だと思っていたようだけど、出ていかないというなら本気でユディットに首を切らせるつもりだった。
話を聞いてイラついていたユディットも命令でなくても首を切ってしまいたいほどだったので命令とあればためらいなく首を切り落とすつもりだった。
「どうかしてる!
行くぞ、こんなボロ教会にいられるか!」
子供2人に気圧されて、チャラついた借金取りは大柄の借金取りを連れて孤児院を出て行った。
「は、はぁ〜」
「メリッサさん、大丈夫ですか!?」
ヘロヘロとメリッサが床にへたり込む。
チャラついた借金取りの態度が鼻について思わず前に出てしまった。
ヘギウス商会の中でもあんな風に女であることを見下したような態度で接してくる奴がいた。
立場のある祖父がいたから大事には至らなかったがメリッサもあんな男は嫌っていて、テミュンを守りたくなってしまった。
でも本当は怖かった。
きっと単純な腕力でも敵わず、逆上されていたら暴力には勝てない。
ジとユディットが早めに前に出てくれなきゃ泣いていたかも知れなかった。
「……これで分かった。
あいつらはまともな業者じゃないな」
安っぽいやり方だけど効果はある。
昔からなくならない分かりやすい圧力のかけ方。
目的がどこにあるのかは分からないが少なくとも貸した金の回収だけが目的じゃない。
「会長ありがとうございました……
それに、すっごくかっこよかったですよ!」
いつも落ち着いて見えて、子供らしくないジだったけれどビシッと借金取りに言ってやった時には子供らしくないを通り越してとても大人っぽく見えた。
逆立ちしたって自分ではあんなセリフは言えない。
メリッサは思わぬジの男らしさに拍手を送りたい気分だった。
「しかし……どうしたらよいのでしょうか……」
テミュンの顔は暗い。
あと10日という日数はあまりにも短い。
威勢よくまだ時間はあるなんて言ったけれどその日数で子供たちの行き先を探すことは不可能だ。
せっかく孤児院を家として心を開いてくれた子もいるのにまた路頭に迷わせてしまうことになる。
「まだ日にちはある。
諦めちゃダメだ」
「ですが……」
「あんたが諦めたら誰がここを守るんだ」
テミュンは最後の砦だ。
諦めてこの孤児院を手放してしまえば簡単だがテミュンが諦めなければ借金取りだって簡単には孤児院を奪い取れはしない。
「いいか、なんとかするなんて約束はしない。
できるかどうかかなり不安なところだけどなんか出来るように協力する。
だから諦めないでくれ」
「……分かりました。
私も、私の家を取られるわけにはいきませんから!」
こぼれ落ちそうな涙を堪えてジの目を見返す。
どうしてこの少年が孤児院を救うために立ち上がってくれたのかは知らない。
でも確かにジの言う通りテミュンが諦めてはダメなのだ。
シスターも言っていた、最後まで諦めなければきっと道は開けると。
「じゃあとりあえず子供たちに挨拶でもしておこうか」
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