もう一つの戦い3
ロイヤルガード。
高い忠誠だけでなく飛び抜けた実力がなければなることは叶わない最高の役職。
現在3名いるロイヤルガードはこの国でも最高戦力である。
個人で軍隊にも匹敵すると言われ、王の命令以外では動くことはない。
味方であればこれほど心強いものもいない。
顔は知らなくてもベッダもロイヤルガードがなんたるかを知っていた。
「ロイヤルガード……だと?
なぜそんなものがここにいる!」
ロイヤルガードは王の側にいるか、国を守っているもの。
こんな片田舎に近い場所にロイヤルガードがいるはずがない。
「そんなくだらないウソに騙されるものか!」
ベッダの体がブレて3人になる。
「ほう?
面白い能力だな。
俺も3人になれたら便利そうだ」
「いつまで余裕でいられるかな!」
3人のベッダがビクシムを囲む。
特に抵抗をすることもなくベッダが移動することを待つビクシム。
ビクシムは今自分が3人になることができたらなにが出来るかを考えていた。
「ダークカッター!」
3人のベッダが同時に魔法を放つ。
一振り、二振り。
歩き出して、迫る闇の黒い刃の間を抜ける。
ビクシムを闇の刃が透過していったようにも見えた。
2回剣を振って少し歩いただけでビクシムは全ての魔法をかわしてしまった。
一瞬で魔法の軌道を見抜いたビクシムはどうしても回避することのできないダークカッターだけを切り捨てて自然に歩くように回避をしたのである。
そのままベッダの1人に近づく。
「1人目……ハズレか」
縦に両断されたベッダが黒い霧となって消える。
「2人目。
これもハズレか。
まあいい、お前が本体だって分かったからな」
ビクシムも消えた。
見失ったとベッダが思った時にはビクシムはベッダの横にいた。
2人目のベッダが消えてようやくビクシムが本当にロイヤルガードなのだと悟る。
「ど、どうやって……なぜ、こんなところに……」
「質問が多いな。
どうやら何に手を出したのか分かっていないようだ」
分身は倒されてしまったらすぐには出せない。
未だに相手の力の底がわからないベッダは恐怖していた。
到底勝てる相手ではない。
だからといって逃げられる相手でもない。
「これは技術だ。
力に酔った悪魔には分からないだろうな」
見失わないように真っ直ぐビクシムを見ていた。
今度は近づいてくることがなんとか分かった。
けれど分かっただけで体は反応しなかった。
いつの間にか視界が一面の青空になっている。
なぜ自分が突如として空を見上げたのか分からなかった。
今度こそビクシムを視界に捉えたはずなのに、どう逃げようかと考えていたのに。
ベッダの思考はそこで止まった。
頭が地面に転がり、体がゆっくりと倒れ始める時にはもう死んでしまっていた。
「ふん、口ほどにもない」
ビクシムは剣を鞘に納めて吐き捨てる。
「オジ様!
オジ様がいらっしゃるということはまさか……」
「アユイン!」
「えっ、お、おう……」
「お父様!」
「ええっ!?」
ロイヤルガードであるビクシムをオジ様と呼ぶアユイン。
どう見たって知り合いであることは確実なのであるがそこに現れた人物を見て比較的無事なリンデランがさらに驚く。
リンデランでも何回か見たことある程度の人物である王様がそこにいた。
リンデランはアユインが他国の貴族であると聞かされていた。
そのような子は実際いるし、リンデランやウルシュナにも気兼ねなく話しかけてきたのでやはり他の国から来ているからそのように出来るのだと思っていた。
まさか王様の子供、つまりは王女であるなんてリンデランは全く思いもしなかった。
確かに見比べてみるとどことなく2人は似ている。
横にもう1人女性を連れていて、その女性がエを連れていた。
王様は青い顔をしてアユインに駆け寄り、抱きしめる。
「大丈夫か、ケガはないか?」
「お父様、まだ終わっておりません!」
「そうだな、ここから早く帰らねば……」
「違います、ジ君が!」
「ジ?
どこかで聞いたことがあるような……」
「そんなことよりもジ君は今も1人で戦っているのです!
私たちを逃すためにたった1人で……」
「なんだと?
そのジって子はどっちに?」
「あちらに、私たちよりもずっと後ろに……」
ボロボロと泣き出すアユイン。
安心と、相当時間が経ってしまったジへの心配で感情が昂ってしまった。
「ビクシム!」
「はっ!」
アユインが指差した方向にビクシムが走り出す。
優秀な子供たちが全力を出して、相手が遊ぶようにしていても全滅しかけていた。
アユインが心配しているジという子が無事であるといいのだけれどと王様は心配した。
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