たまには外に飛び出して7
「そんなもんかな?」
「そんなもんだよ」
兵士でも治安維持のために魔物と戦うこともある。
むしろ平時なら人と戦うよりも魔物と戦っていることの方が多いと言える。
仮に今は無理でもそのうちには割り切って戦う必要が出てくる。
兵士や冒険者でも割り切ることができなくて辞めてしまう人も一定数存在する。
そんな人を馬鹿にするような奴もいるけど適性もないのにしがみついたり、そんなことで人を見下すような連中よりはマシだとジは思う。
ラは過去でも大人になるまで兵士を続けていた。
魔物と戦うのはめんどくさいと聞いたけれど戦うことに嫌悪感を抱いたり心の負担になっていることはなさそうだった。
どこかで魔物に慣れたとか切ることに折り合いをつけたのだろう。
過去にそう出来ていたから今でもできるはずなので心配はしていない。
他のグループは女の子が多いジたちのグループがあっさりゴブリンを倒したものだから変に自信を持ってしまった。
それは逆に油断ともなってしまった。
ゴブリン相手でも舐めてかかったために苦戦してしまい、老年兵士の男性のフォローがなければ大怪我をしてしまっていたような戦いもあった。
なんやかんやで一通りグループが戦いを終えた。
次はまたジたちのグループの番であり、また痕跡を辿りながら魔物を探していた。
「おっと、あれは……」
先頭を歩く老年兵士の男性が立ち止まる。
繁殖力が強くて広く分布しがちなゴブリンは数が多くて見つけがちである。
けれど当然のことながら他にも魔物は存在しているのである。
老人兵士の男性が見つめる先にいるのはウルフドッグ。
ゴブリンよりは上の魔物と見てもいい魔物である。
ウルフという魔物もいてウルフドッグとは別の魔物である。
ウルフドッグの方がウルフよりも一回り体が小さく、能力的にもウルフに劣る。
総数4匹のウルフドッグの群れ。
偶然ウルフドッグを見つけた位置が風下になるのでまだ相手にはバレていない。
老年兵士の男性は悩んだ。
ウルフドッグと子供たちを戦わせるべきかどうか。
子供たちでも十分勝機のある相手ではあると思う。
けれどもう少し経験を積んで動きの固さが取れてからの方がいいような気もする。
しかしここで戦闘を避けたところで鼻が良くて好戦的な魔物であるウルフドッグはこちらに気づいて襲いかかってくるかもしれない。
風上に回ったり音がすれば間違いなく気づいて襲ってくる。
先手を取りましょうと言っているのに魔物を避けた挙句に先手を取られて襲われたなんて笑えない。
見つかっていない今は大きなチャンス。
あえて今は子供たちにやらせるのは避けてグルゼイやリアーネにお願いしてもいい。
子供たちを引率する老年兵士の男性は何が1番良いのかなかなか結論を出せないでいた。
「子供たちに任せてみませんか?」
悩む老年兵士の男性にグルゼイが声をかける。
子供たちを信頼しているがゆえにそんな言葉をかけたわけじゃない。
子供だし多少怪我でもするぐらいで成長していくのだって悪くない。
過保護に守ってやってばかりじゃ成長するもんも成長しない。
怪我するぐらいの経験が子供たちをのちのち強くするとグルゼイは考えていた。
いや大人だってそれぐらいの経験を経て強くなるものだ。
決してさっさと終わらないかなとか面倒くさいなとか思ってのことでもないのだ。
一見真剣に見えるグルゼイの眼差しに教えるものとしての熱意を感じ取った。
さっさとガキを戦いに行かせろ!と遠回しに言いたいだけのグルゼイの胸の内を完全に読み違えていた。
幸いにして次のグループはジもいる。
他の子も別グループの子供たちに比べれば全然有望で動きは悪くない。
さらに回復魔法まで使える子がいる。
万全の体制ではないか。
「……そうですね。
念のためにグルゼイさんとリアーネさんも近くで助けられる準備だけはお願いしてもいいですか?」
2人が近くでしっかりとフォロー出来るようにしていれば怪我をする可能性もそんなに高くない。
老年兵士の男性は子供たちを信じてウルフドッグと戦わせることにした。
「それではあのウルフドッグと戦ってもらいましょうか。
35番のグループ、お願いします」
「よっし! やってやる!」
ラが小さくガッツポーズを取る。
ゴブリンの死体を見るのには飽き飽きしてきたし、魔物もそう簡単には見つかるものではなくて順番が回ってくるまでに手持ち無沙汰になっていた。
ようやく順番が回ってきて、しかもゴブリン相手ではないことにテンションが上がる。
すっかりゴブリンを切った感覚を忘れている。
この切り替えの早さもラの良いところである。
魔物と戦うのは2回目で時間も経っているのでだいぶみんなの固さも抜けてきている。
「頑張るよ!」
ウルシュナも汚名返上とばかりに気合いを入れる。
ジの見立てでも各々がしっかりと実力を発揮して連携を取って戦えば無傷でも難しい相手ではないと分析している。
ゴブリンよりは明らかに格上の相手になる。
一瞬の判断ミスが命取りになるのでどんな状況でもすぐにフォローに入れるように気を引き締める。
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