謀反2

 ジを先頭にして監視塔のところまで向かう。

 町の人も異変に気づき始めているものの何も出来ない。


 城に近づいた者は問答無用で弓で射たれてしまい、一切城に接近できないまま事情もわからず不穏な空気だけが町中に漂っている。


 城に近づきすぎて目をつけられないように城を中心にして丘の周りを回るようにして監視塔跡に到着した。


「ここは」


 1度来たところじゃないかとグルゼイはすぐに気がついた。


「こっちです」


 ジが目隠しに置いておいたテーブルを避けると開け放たれた隠し通路の入り口がそこにあった。

 こんなところにテーブルなんてあったかと思い出そうとしてるけれど特に興味もなく軽く見ただけなので違うような気がしても確かなことが言えない。


 家はちょうど城から見て監視塔跡の影になっているので見えない。

 城の方を確認してみても特に注目してこちらを見てる様子はなかった。


 ジラムが四つん這いになって中を覗き込むけれど暗くて中の様子は確認できない。


「誰か火の魔法が使える方はいますか?」


「まあまずなにか居ないか確認させよう」


 グルゼイが袖からスティーカーを出して隠し通路に潜り込ませる。


「サードアイ」


 スティーカーと視覚を共有して中の様子を確認する。

 熱源を見るスティーカーの目には暗闇なんか関係なく隠し通路の様子が分かる。


 とりあえず熱を発するものは無い。

 虫の1匹すら見えない。


「スティーカー頼むぞ」


 スティーカーが口を開けて火を出す。

 リンデランを見つけた時よりも大きめの火。


「私も火を使えます」


 スティーカーともう1人の冒険者が火の魔法を使って隠し通路を照らす。

 通路は古ぼけていて、ところどころ崩れている。


 長い間人の手が入っていないことが明らか。


 今すぐに崩れそうではないけど強い衝撃が加われば分からない。

 進んでいくと道が分岐している。


「これは……どっちだろうか」


 標識や道標もない。

 進むべき方向が分からない。


「…………2部隊に分かれましょうか」


 少ない人数しかいないのでどう行動するのか判断するのは難しい。

 まずは状況把握が優先。


 城内に出られるかすら分からないので少しでも状況把握できる確率をあげたい。


 ジは当然師匠のグルゼイと一緒に行くことになり、ジラムやリアーネと同じチームになった。

 ジラムは自分の魔獣である小型の鳥をもう一方のチームに渡した。


 さらに進んでいくと他にも分岐しているとこはあったのだが天井が崩れていて通れなさそうだったのでこれ以上人を分けることはしないで突き進んだ。


「広いな」


 グルゼイの袖から頭を出して明かりに徹しているスティーカーを高く掲げる。

 進んできた先にあったのは広い部屋でスティーカーの明かりでは反対側まで光が届かなかった。


「ジ!」


「わっと!」


 他に進む道があったらどうしようかと思いながら部屋の反対側を確認しに行こうとした瞬間だった。

 反対側の天井が壊れて光が差し込んでくる。


「王よ、こちらに!」


「あれはなんだ!」


 天井から降りてくる数人の人。


 グルゼイやリアーネが武器を構えて警戒する。


「そこにいるのは……グルゼイ!」


 降ってきた人はルシウスだった。


「挨拶を交わしている暇はなさそうだな。


 ルシウス、こっちだ!」


「おい、逃がすな!」


 ルシウスが肩を貸し、抱えるようにしているイケメンおじさん、あれが王様だろう。

 肩に矢が刺さっていて顔色が悪い。


 ルシウスと何人かの護衛が王様を囲むようにしてジたちの後ろに下がる。


 そうしている間にも天井の穴からは続々と兵士たちが降りてくる。

 ジやグルゼイたちが増えたところで焼け石に水な程度に思えるほどに兵士たちが多い。


「くっ……通路に下がりましょう」


 広い部屋では分が悪い。

 ジラムの指示に従って王様を先に行かせてそれを守るようにしながら通路に下がる。


「スティーカー、あちらを頼むぞ」


 グルゼイの袖からスティーカーが飛び出してルシウスの足に巻き付く。

 先に行くルシウスたちの明かりにスティーカーを送ったのだ。


 心配せずとも暗くなったら相手が明かりを付けてくれる。

 敵の何人かが火の魔法を使って場を照らす。


「チッ……私はちょっと相性が悪いね」


 リアーネが苦々しい顔をする。

 身の丈ほどもある長剣を扱うリアーネには狭い通路で戦うのは厳しいものがある。


 剣を抜かず敵を殴りつけるリアーネ。

 兵士がぶっ飛んでいき、後ろにつまる兵士たち共々倒れる。


「明かりを持つやつが前にいけよ!」


「明かりつけながら戦えるわけないだろ!」


 入れ替わり立ち代わり、切りつけ殴り付けるグルゼイとリアーネに兵士たちが喧嘩しだす。

 明かりを持っているのが敵側なのでグルゼイたちから兵士たちの方は見えるのだが兵士たちからグルゼイたちはよく見えない。


 しかし兵士たちもそれなりに戦えても実力者がいない。

 明かりを維持しながら戦うなんて器用な真似できる者がおらず、かと言って明かりが前に出ないと敵が見えない。


 通路は狭いので同時に通れるのは2人、詰めて3人。

 戦い方としては2人並んで戦うよりグルゼイとリアーネのように入れ替わりながら戦う方がいい。

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