未だ名もなきセカイ

光之空

プロローグ 神を殺す者たち

 毎夜毎夜、よくわからん石像に向かったお祈りしなさいと言われたのは、いつのことだったか。他者に寛容で優しくありなさいと教えられたのは、どれほどむかしのことだったか。

 ゴロゴロと音を立てながら通り過ぎていくストレッチャーを眺めながら、俺は物思いにふけっていた。壊れてしまうのではないかと思うような音が、俺を現実へと呼び戻したのだ。運ばれていたのは、高熱にうなされていた少年だった。少年の熱は、はたして普通ではありえないものだった。そして俺は、『本来の』仕事を始めるべく、椅子から腰を上げたのだった。


少年が運ばれていった個室に入ると、医者と複数人の看護師がいた。

「な、何なんですかあなた。で。、出ていってください!!」

知るか、そんなこと。何も理解しわかっちゃいない人間どもの言葉をスルーしながら俺は深く深呼吸をし、自らを精神世界へと引きずりこんだ。


「ググッ…。グゲゲゲ。ゲヘラゲヘラ」

奇怪な唸り声を上げながら少年の上に乗っていたのは、真っ赤なカエルの怪物だった。

「はぁ、今回”も”こいつか。一体どれだけいるんだ。全く…」

俺は『金山彦命』の力を使い、左手に銃を作り出した。

「お前みたいなやつがいるから俺”ら”が迷惑するんだ」

放たれた弾丸はまっすぐにカエルの眉間を貫き背後へと流れていった。


太古より神々と深く交わり繋がりを持つものは数多居た。

特に密接に関わりのあるものは現人神と呼ばれ、畏れられ崇められた。

神と繋がっているといえば聞こえはいいが、実際のところはそうではなかったらしい。村の人々に専門外のことを吹っ掛けられ、願いを叶えることができなければ、半ば村八分のようなかたちでハブられ、都合のいいときだけ利用しようとする。

次第に現人神と呼ばれる存在は姿を消していった。

八百万の神々というがそれこそこの世にはたくさんの神がいる。

良い神もいれば悪い神もいる。人々を庇護する神もいれば害意を持つ神もいる。

信仰の加減で妖怪に成り下がる神もいれば妖怪だったものが力を持ち神になるものもいる。変に神格化され神になるものもいる。

増え過ぎた神々を、間引き、殺すもの。それすなわち『神殺しゴットキラー』と呼ぶ。

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未だ名もなきセカイ 光之空 @light-hikari

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