第4話 14番目のターゲット(前編)
私は誇り高きソムリエ・犯木八彦。
私が味覚障害になった原因を作った味音二助、藻出七子、朝日九男、飛田十左衛門への復讐を目論んでいる。
登場人物が多くて覚えるのが面倒だと思ったそこのアナタ、心配ご無用。それぞれ2,7,9,10と覚えればいい。私もそう呼ぶ。
ご覧の通り連中の名前には数字が入っている。私の名前にも。ということで『明智小次郎に恨みを持った犯人が、名前に数字が入った知り合いを次々と襲っている』と見せかけて、私の標的であるこの4人の殺害をカモフラージュする。
明智小次郎の知り合いの中からも名前に数字が入った人間をリクルート。トランプをモチーフにして1から13までを揃えた。
今回の殺害計画、まず13から11までを襲い『明智小次郎の知り合いが襲われている』ルールを警察に警戒させる。
あとは10から2までを同日撃破する。ヘリに乗る習慣のある10には目薬を別の薬に入れ替えてヘリを墜落させる。警察が私の警護に来たら、9が所有している海上レストランに移動して9の死体を皆で発見。その後で7を殺し、レストランを爆破して泳げない2を殺す。そして私はヘリコプターを呼んで脱出。
ということで襲っておきました13、12,11。その足で海上レストランに行ってトラップの準備。
まず9を殺して死体を隠す。
8(私)用のブービートラップを仕掛け
暗闇の中でも配電室からロビーまで走れるように練習し
非常口をセメントで塞いで
リモコンの遠隔操作で爆破するように爆弾をセットして
やることが。やることが多い!
爆弾設置が一番キツい。海中に爆弾設置するのキツい。潜るの自体はキツくない。だって私はライフセーバーの資格を持っているしダイビングもできるから。
重いのがキツいんだよ。ダイビング器材と爆弾の総重量は数十kg。設置していて腕モゲるかと思った。
その後どうにか全てのトラップを設置し終わった私はレストランに向かった。私が普段ソムリエとして勤めている方のレストランね。
疲れた。本当に疲れた。だけど全ては恨みを晴らすため。2と7と10を殺すため。
ん?
ふと外を見た私は驚愕した。レストランの外に明智小次郎と他何人もの警官がいたからだ。
まさかもうバレた!? 13と12と11を襲ったのが私だって、もうバレた!?
私の思っていた以上に日本の警察と明智小次郎は優秀だったということだ。
こうして、謎は全て解かれた
かに思われた。
ところがどっこい警察は待てど暮らせど「確保!」に来ない。店を出たところを囲まれて、ということもなく。自宅に戻ったところに、ということもなく。
分からない。何故、逮捕に来ないんだ?
(この時、犯木は知らなかった。レストランの向かいのお店で、明智小次郎の知り合いの他の10が働いていることを。明智小次郎たちはその10を守るために張り込みをしていたのだ)
次の日の朝、自宅の周りに警察官の姿は見当たらなかった。もしやと思いレストランの近くを見に行ったら………そこにいた。つまり警察は私の逮捕に動いているわけではないようだ。何しているんだコイツら?
まぁ気にしていても仕方がない。今日は同日撃破の決戦日。
まずは朝一に10の目薬をすり替える。これだけでヘリが墜落するから楽。トリックってやることが少ないとこんなに楽しくなるのか。
その後、私の期待通りに明智小次郎が13とその部下の警部補、あとアーサーくんと明智家の娘さんを連れて私の家に現われた。
全て計画通り。きっとこの後「残念ですが10さんが殺されました。この流れでいくと8である犯木さんも今回の犯人『濡衣太郎』に狙われる恐れがあります」と言ってもらえる。
と、思っていたのに。10は死んでいなかった。
えっ? 重傷だけど生存って・・・嘘だろ。ヘリが墜落したのに?
どうやら10が狙われるのではないかと警戒した明智小次郎と13がヘリに同乗していたそうだ。
くっ、10だけが乗るものだと思っていたのに。同乗者がヘリの落下を喰い止めるのは想定外。連続事件のカモフラージュが裏目に出た。
だが待てよ? 明智小次郎は高所恐怖症。ヘリに同乗されても役に立たないはず。13も私に襲われたダメージが残っているから活躍できたとも思えない。
となるとコイツか? 黒犬警部補!? お前がヘリを無事着陸させたんだな!
まさかの伏兵。しかも黒犬「ワインには目が無いんですよ」と仕事中のくせに私のワインセラーに興味津々。大活躍を微塵も感じさせない呑気さと空気を読めない自由行動。まるで王道のミステリー漫画の主人公じゃないか。
好敵手現るといったところか、面白い。だが13の名推理による『村上犯人説』が濃厚となった今、この私に辿り着けるかな?
その後、『私が今日会う予定をしている人が9だから、私の護衛を兼ねて皆で9に会いに行こう』と誘導することができた。
だけどここで明智小次郎が何とも納得いかないような顔をした。
「しかし、私はペットの猫探しの依頼を受けただけで、知り合いと言うほどでは」
これを指摘されると非常に厳しい。実際、9と明智小次郎のコネクションは薄い。当初から懸念していたことだ。
だがそこに救いの手が。
「濡衣太郎はそうは思っていないかもしれん。ともかく、犯木さんのガードを兼ねて、朝日さんに会ってみよう。よろしいですか犯木さん?」
13のフォローにより『9は明智小次郎の知り合いとして狙われない説』は見事に払拭された。
13。いや13さん。私のカモフラージュ被害者になってくれるだけじゃなく、濡衣太郎に罪を着せる流れの手伝いまで。何から何まで本当にお世話になります。
―――後編へ続く
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