第5話 14番目のターゲット(後編)
海上レストランに到着した明智小次郎や13さん、黒犬警部補にアーサーくん、明智家の娘さん、そして私。
レストランで2と7,他の数字たちと無事に合流。
それぞれが自分の数字が2,4,6,7であることを再確認してくれた。
「これで3と1以外の数字が全部揃ったことになるな」
と、明智小次郎がボソッとつぶやいたその時。13さんの口から衝撃の事実が語られた。
「3ならいるぞ。キミの目の前にな」
「私の名前は黒犬三郎です」
まさかこの警部補が私の用意し忘れていた3だったなんて。
13さん。何故、わざわざ数字を揃えに来たの? 犯人側としてはありがたい話だけど、普通は数字が揃わないように『三郎』なんて名前の人避けるよね普通。
ちなみに想定外がもう1つ発生した。
7が2の味音痴を貶めるためにブラインドテイスティングをおっぱじめやがった。
あのさぁ、これから犯人が殺そうとしてるって時に、被害予定者が余計なことをして犯人のプランを乱すんじゃないって!
まぁ、そのテイスティングは2が特大の不正解。私は問題なく正解したけど。
えっ? 簡単じゃね? この色と香りと舌触りとのどごし。普通にボジョレのムーラン・ナ・ヴァンじゃないか。えっww 2、これを何だって? シャンベルタンとかww
笑いが込み上げそうで辛かった。
なんて余興はそこそこに。そろそろ私も動こうか。
次のミッションは『さりげなくメモを床に置く』。これがなかなか難しい。
4がワインを飲みたいと言い出したり、各々が勝手にジュースやビールを厨房から持ち出したり。みんな行ったり来たりで全然落ち着いて着席してくれないのだ。
そのうち私も緊張して喉が渇いたから、ミネラルウォーターを取りに厨房に行った。
ただ、『もしかしたら味覚障害治ってるかも』と淡い期待を込めてチリパウダーを舐めてみたのは失敗。結局、心の傷を自分で抉っただけで終わった。
それから少しして急に4が苦しみ始めた。
『まさかワインに毒が!?』というように驚く13さんたち。
いやいやこれは私じゃない。じゃあ誰!? と私も慌てふためいていると、苦悶していた4は急に笑い出した。
「ハハハハハッ、冗談デスヨ」
「こんな時に悪ふざけはやめてください!」
本当にその通りだ。マジでコッチのプランに無いことはやめてくれ!
と、悪ふざけをしていた4が仕事をしてくれた。私が置いた手紙を見つけてくれたのだ。
このおかげで私たちはワインセラーに移動でき、私は皆の見ている前でブービートラップを華麗に回避した。これで私も被害者の1人であり、犯人である疑いが晴れるというわけさ。
ここでようやく明智小次郎から脱出の提案が出された。今更だけど。
さぁ、ここからたたみかけるぞ。
客席に戻った私達の目の前に9の死体。
オートロックされた出口。
セメントで塞がれた非常口。
「あんたのせいで無関係な私達まで狙われる」と、2と7に責めたてられる明智小次郎。いやむしろお前らだから。お前らに巻き込まれたのが明智小次郎だから。
そして始まる7の懺悔の時間。私が味覚障害になった原因の事故のこと。やっぱり7が事故の相手だった。答え合わせができてホッとした私。ここで別人だったらマジ萎える。
その後、毛利さんの提案で手分けした出口捜索が始まった。よっ、待ってました。
男達でレストラン中を探し始めたタイミングで、私は配電室に行ってブレーカーダウン。
暗闇の中急いで客席に戻り、夜光塗料頼りに7をナイフで一撃。灯りが点いたら皆と一緒にシレッと戻る。
これでようやく標的を2人殺せた。長かった。
あとは爆弾のリモコンスイッチを押すだけ。これでレストランごと皆そろって海の中。さすがに私も死ぬかもしれない。だからスイッチ押す前に心の準備が必要。
そんな時、気を利かせたアーサーくんが水を持ってきてくれた。なんて良い子だ。
さて一息ついたところで。押しますかポチッとな。
爆発音と共に揺れるレストラン。そして停電。6がライター点火、3がそれを止める。非常灯が自動ON。そこに窓爆破。流れ込む大量の海水。洗濯機の中みたいに回される私。レストランの天井付近のわずかな空気スペースに泳ぎ着く私。生き残ったのは予想通り。13さん、3、明智小次郎、2、6、アーサーくん、4。
あれ?
まさかの毛利さんの活躍で2が救助されていた。
その後少ししてから明智家の娘さんも浮上。どうやら車に挟まれていたそうだ。可哀想に。ここは2が責任とって不幸になってくれなきゃ世の中つり合いがとれない。
なのに私の希望とは裏腹に13さんの傷口が開くというアンラッキー発動。あんたじゃないんだよ。
だがたしかに現状はかなり厳しい。彼らにとっても。私にとっても。
私に求められている条件は1つ。この空間が水没する寸前に2を残して、唯一の脱出経路である爆破で割った窓から抜け出すこと。
そのタイミングが来るまで、あとは待つだけ。
そんな状況でもよく気が付く子アーサーくんが「出口ならあるよ。爆破された窓!」と気付いた。やめてくれ。
だけど大丈夫。要救助者は13さんと娘さんと2。この3名に対して一般市民ではない大人は明智小次郎と黒犬警部補の2人しかいない。
当然、重傷者から優先すれば13さんは3が。娘さんは明智小次郎が泳ぎをサポートする流れ。2置いてけぼり確定。
という流れを打ち砕いたのは6。
「弱音を吐くんじゃねェ。俺が連れてってやるよ」
何故だ6。見た目はあおり運転しそうなチンピラのくせに男気あるじゃねえか。
仕方なく私が先導して9人仲良く海の中を泳いで地上へ。ここで2だけ溺れるように器用に泳げればいいけれど流石に無理。息の限界の中でどうにか海上の公園エリアに辿り着いた私。
続く13さんと黒犬が浮上。13さんに手を貸す優しい私。黒犬は娘さんをお姫様抱っこ。さすが主人公。
どうせあとの4人も上がって来るんだろ? と、不貞腐れていた私の前に思わぬラッキーが。なんと2が溺れて意識を失ってくれていたのだ。
人工呼吸でもして救命措置すれば助かるかもしれないが、そんなこと私が許さない。ライフセーバーの資格を盾に、私は人工呼吸の権利を奪い取った。
「待ってください。人工呼吸は黒犬刑事、あなたがやりなさい」
突然の命令に戸惑う私と黒犬。
明智小次郎、アナタまさか。おっさんのキスを見たくないと。イケメン同士のキスを見たいということですか?
すると明智小次郎は突然「はひぃ」と変な声を上げるとフラフラとベンチに座り込んだ。嫌な予感。
的中した。
まるで横で私のやること全部見ていたような的中率で語られる眠りの小次郎の名推理。トリックも動機も見事に説明され、しかも味覚障害まで言い当てられる始末。
ん? 待てよ。どこで味覚障害に気付いたんだこの人。私、ブラインドテイスティングも正解したのに。
「彼が味覚障害であることは、私がアーサーに持ってこさせたミネラルウォーターで確かめることができました」
ミネラルウォーター?
「アーサーがあなたに渡したグラスにだけ、塩が入っていたんです」
おいおい、なんてクレイジーな。塩水を飲ませたの? 私に? さじ加減とか理解できなさそうな小学生に作らせたヤツを? 少なすぎたら体が欲する塩分として美味しく飲み干すだけになるから『塩は多めに入れておけ』って指示したんだろ多分。
子供の多め、舐めるなよ! 下手すりゃ塩分過多で死んでたぜ私。
こうして、謎は全て解かれた
ということで私は懐から取り出したスイッチを押し、念のために用意しておいた爆弾を作動。爆発と共に大きく傾くアクアクリスタル。私は娘さんを人質にして、ヘリコプターを呼んである屋上へと向かった。
「動くな!動くとこの子の命はないぞ!!」
と明智小次郎たちを脅したが、どのみちアクアクリスタル崩壊に巻き込まれる彼らは私を追うどころじゃない。ここは遠慮なく逃走させてもらう。
エレベーターに乗り込み、ヘリポートに辿り着いた私。正直に言えば2を殺せなかったのは心残り。だがあんな小物よりも私は10の方を殺したい。ヘリに乗ればそれも叶う。はずなのに。ヘリ全然降りてこない。
そして私がヘリ相手に手をこまねいている間に13さん、黒犬、明智小次郎、アーサーくんが追ってきた。
私が爆弾魔であることを棚に上げて、言わせてもらっていい? 泳げないヤツを含む民間人を放置して警官たちが何やってんの?
いや、みなまで言うな。
6だろ?
6がどうせ「俺に任せろ」って2のサポートを進言して、13さんたちの背を押したんだろ? マジで6のチョイス失敗したわ。
だから今こうして主人公・黒犬が「彼女を離せ!離さないと撃つぞ!!」とか震える手で拳銃をこちらに向けているじゃないですか。
だが面白い。撃てるものなら撃ってみろ!! 主人公さんよぉ…いや、ただの3!
なのに歯ごたえがない3。「拳銃を寄越せ!!刺すぞ!!」と脅すだけで投げて寄越しやがった。やっぱコイツ主人公じゃない。そして馬鹿なの? 拳銃が暴発するぜ?
いや、ただの馬鹿ではないようだ。拳銃を拾おうとする私の隙を見計らって、力づくで私を確保するつもりのようだ。
そちらがその気なら、私はアーサーくんを利用させてもらおう。
「坊主、お前が持って来い。この女がここで死んでもいいのか!?」
この脅しで気の利くアーサーくんは大人しく銃を拾ってくれた。
だけどアーサーくんは平気で人の水に塩を入れる子。拳銃を迷いなく発砲する子だった。凄い殺気で。大人のオーラ。まるで大人になったコナンくんがその後ろで一緒に拳銃を構えているみたいに。
そして発射された銃弾は娘さんの足をかすめた。クレイジー。銃刀法違反未成年。やっぱりアニメやゲームの影響で子供は銃を軽んじているんだな。
でもそのせいで娘さん人質無力化という事態が発生。撃たれたから全然動かなくなっちゃった。私もこれには仕方なく解放。でも解放したらしたで明智小次郎の一本背負い。そして強引に逮捕。
こうして、事件は全て解決させられた
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