第二十一話:勘違いと信頼の眼差し

 傾斜けいしゃの下からリンロを見上げるトゥーチョの表情は意外にも平然を保っていた。だが彼の内心は──────


 (チョッッッッボふぉぐォーーーッッッ!!! 


 あっ、あの目はっ……完全に今のオレ様の行動の全てを理解した上で軽蔑けいべつしてる目だっチョぉ~~ッ!! 


  チョうぅっ………まぁ……今回の事に関しては、オレ様にも最低だという自覚はあるっチョからリンロにあんな目をされるのも当然だっチョな………チョけど……)

  

 トゥーチョはうつむき想像した、これをきっかけにこれからの生涯リンロの不信の目に追われうなされ続ける未来を。そして震え怯える最中に彼は大切な事を思い出した。


 (そうだっチョ………。オレ様はっ! 信頼度100チョーパーセントのトゥーチョちゃんなんだっチョッ!! あんなゼツボウなんかにオレ様の今まで必死に汗水流して積み重ねてきた【厚さ無限大の信用栄光レッテル】を剥がされてたまるかっチョッ!!

オレ様にならできるっチョッ!! この絶望サンドを希望サンドに変える事くらい造作ぞうさもない事だっチョッ!! )


 そう自身を鼓舞こぶし震えを止めると、トゥーチョは再びリンロを見上げ強気な顔を見せ言った。


 「おい、リンロっ。一体全体お前は何を勘違いしてオレ様にそんな目を向けているんだッチョか?」


 「?」


 (……え、何だ。この状況に勘違いできる選択肢があるのかっ? それにたまにだけど、俺の絶対に勘が当たる時の感覚と全く同じ感覚もしたんだが……違ったのか? 

 もしそうならトゥーチョに悪い事をしちまったな……謝ろう)


 リンロが謝ろうとした直前、トゥーチョが口を開いた。


 「今のはなぁッ!! あの少年の純粋無垢じゅんすいむくな心と可愛さに気圧けおされて下がってきただけだっチョよッ!! ア~~っ可っ愛い~~っチョ~~ッ!!」


 自分で言っておいて恥ずかしくなったのか、トゥーチョは赤面した顔を隠す為即時傾斜に身を伏せた。

 それを見たリンロは一旦謝るのをひかえ考えた。


 「…………」


 (危なく勘違いしたと勘違いさせられるところだった………。でも、トゥーチョがこんな行動をとるのもきっと意思が変わったからなんだろう。まぁそれなら)


 「だがチョかしっ……こっからはオレ様のターンだっチョ」


 チラッ


 自信なさげにボソッと言葉を吐きトゥーチョがこっそりとリンロの目をうかがうと。


 「ごめんっトゥーチョっ…………どうやら俺の勘違いだったみたいだっ!」


 そう言ってリンロがトゥーチョに向けていたのは、軽蔑の眼差しではなく信頼の眼差しだった。


 (チョッ!!!)


 リンロから信頼の眼差しを向けられ事が余程嬉しかったのか、トゥーチョの声ははずんでいた。


 「チョ、チョハッ! 初めからその目を向けとけッチョよっ!」


 「…………」


 だがその言葉を聞いたリンロは、作り信頼の眼差しと作り苦笑いを浮かべたまま…………


 (いや……そうしてたら間違いなくお前は、何の気兼きがねもなくこの傾斜を上がって来た事だろう)


 そう思った

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