12




side.Subaru





「んっ…ふぁ…ッ……」



クチュクチュと舌を繋げ、

糸を引いて目尻の涙を舐めとる。


うっとりと目を細める円サンの表情に、

思わず身体が熱くなった。







「…嫌う訳がないでしょう?」



片頬を撫でてからそっと包み込み、

真っ直ぐに瞳を縫い止める。





「俺は生涯掛けて、貴方だけを愛していくと…誓ったじゃないですか。」



例え貴方が俺から離れてしまったとしても、ずっと…。





「けどっ!…オレ、何にも持ってない…」



キミに返せるモノが無いんだと、不安そうに瞳を揺らす円サンに。


俺は優しく微笑み掛ける。






「俺が欲しいモノは…貴方しか持ってないんですよ?」


「オレ、だけ…?」



はい、と答えると首を傾げてしまう円サン。






「…もし不安なら、ちゃんと俺に言って下さい。そうしたら、」



何度でも、貴方を愛しているのだと。

全身全霊で応えてみせるから。






「うう…それじゃあオレは、何をすればいい?」


大惨事となったキッチンを見渡し、

円サンは切なげに唇を噛む。



俺は水道を止め、

冷たくなった円サンの手を取ると…






「傍に…いて下さい。」


手の甲、赤くなった箇所に…

そっと唇を寄せた。


途端に真っ赤に染まる、円サンの頬。





「…ッ……それってズルくないかな…?」



腑に落ちないとばかりに、考え込んでしまう円サン。


俺としてはそれだけでも、

充分過ぎるぐらいなんだけどな…。





それでも俺の為に何かしたいのだと言う円サンに、

愛しさが込み上げてきて。


あれこれ思考を巡らせる恋人を、

微笑ましく眺めていたんだけど…






「…あ…っ……」


何か思い付いたのか、

円サンは更に顔を赤らめてしまう。


不思議に思い、首を傾げると…






「じゃあ、さ…」


「はい?」



モジモジと、

シャツの裾を掴んで言葉を濁す円サンだったが。


意を決したのかのように、

ぱっと俺を見上げると…


次にはとんでもない事を、言い出した。







「オレっ…昴クンに、ごっ、ご奉仕するっ…!」


「…はい……───ええっ…!?」



冗談……では、ないらしい。


当の本人は至って真剣そのもの、

有無をいわさぬ目で、じいっと俺を捕らえてくるから…困る。


しかも…





「ちょ、円サン…!!」


いきなりしゃがみ込んだかと思えば、

俺の下半身に手を伸ばし…脱がそうとするものだから。


俺は慌ててその手を掴んで、押し止めた。

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