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side.Subaru





「やだぁ~久し振り!元気してた?あんな小さくて可愛かったのに、すっかり大きくなったわね~。」


「え、と…」


「私の事覚えてるかしら?ほら、良くお菓子とか上げたりして~。一緒に遊んだりもしたのよ~!」



感動の再会とばかりに、

ハイテンションで円サンに頬擦りする忍サン。




上司…しかも女性で円サンとも知り合いみたいだったから、表情には出せないが…


内心はかなり、複雑だった。





けれど当の円サンは、

彼女の事を全く思い出せない様子で。


困ったように眉根を下げ、

オロオロと言葉を濁していた。






「あ!…そっかそっかぁ~、そうよね~解んないわよね~。」


そこでハッと何かに気付いたよう、忍サンはぽんと手を打って。


自分だけ納得して、

ウンウンと頷いた忍サン。



更に何か言おうとして、口を開きかけたんだけど───…





「オーナー、ちょっとこっちお願いしま~す。」


「…あらら呼ばれちゃったわ。ごめんなさいね、円ちゃん。また今度ゆっくり話しましょうね~。じゃあ、昴くんも頑張ってね。」



店の奥からスタッフに呼ばれ、

残念そうに苦笑すると…


忍サンは去り際、

俺に向かってこなれたウィンクを飛ばし…

優雅に去って行った。




そんな一連の行動に、暫し茫然とするものの。


俺は気を取り直し、

もう一度円サンの方へと向き直った。






「そう言えば円サン、何か用があったんじゃ…」


けれど円サンは、

更に表情を曇らせていて…




「あ、ううん…今日はもう…帰るねっ!」



そう告げると、俺が制止する声も聞かず。


まるで逃げるかのように…

何気に後ろに立っていたゴミを無理やり引っ張って、レジへと向かってしまった。






去り際にゴミ虫が、

何か円サンに耳打ちしていて。



「もうっ、うるさい!」


「あだっ!」



珍しくも円サンが、怒ったようにソイツをグーで殴り飛ばしたかと思うと…


一度も俺を振り返る事も無く、

足早に店を出て行ってしまった。






「まどか、帰ったのか?」


「え……あ、ああ…」



奥から顔を出した晃亮に、

曖昧な返事をするも落ち着かず…





(…なんだ、今の……)



モヤモヤと蠢く、黒い感情。



気のせいだって思いたい。

けど今の円サンの態度は、明らかにおかしかった。


帰ると言い出した時、

一度も目を合わせてくれなかったし…。





体調でも悪かったのかもって…色々考えてみるが。

ゴミと話してた円サンは、そんな風には見えなかったし…。





俺が初めて好きになった人。

自分がこんなにも欲深いと知ったのは…


貴方と再会したあの日から。






(円サン…)


解ってる、

そんな気にするような事じゃない。


ダチとのやり取りも、

さっきの忍サンとの接触も。

日常的に、当たり前な事…


いちいち気にしてたらキリがないんだ。






(こんなんで、耐え切れるんだろうか…)



俺だけ見て、俺だけ感じて


誰にも触れないで、


触れさせないで─────…






そんな邪な心に、

支配されそうにな自分が…怖い。


初めて貴方に目を逸らされただけで俺は…

こんなにも、心乱されてしまうから。







その日バイトから帰宅した後、

円サンは普通に接してはくれてたけど…


よそよそしさは、拭えなくて。




ぎこちないまま、

同じベッドで背を向けられて…


重く永い1日が…いつの間にか、終わりを告げた。

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