第5話 笑っていいよ

君を泣かせたあいつを

殴る勇気も無く

俺の前を悪びれる事も無く

あいつは通り過ぎて行ったよ

時間が過ぎても

後悔だけが立ち尽くす


そうなんだ 俺は何時だって 

君の事では後悔ばかり


あいつはね君のことなんて

眼中に無かったんだよ

俺はそれを知ってしまったのに

君になにも言えず

顔を背けていた

情けない男だった


君はなにも知らずに

あいつだけを見ていたね

無邪気な笑顔が輝いていたよ


あいつは……平気な顔して

君に……嘘くさい笑顔見せて


クソ……

強くなりたかった

何も言えない弱さを打ちのめしたかった


巧い言葉なんて

要らないんだ

正直に言葉にしたいだけなのに


その言葉を見つけ出せなくて

しゃがみ込む心


あの日君とあいつが

渡り廊下で話しをていた


やめろ!

泣かすな!


遠くからでも

頰伝う涙が見える


呆然と立ち尽くす君

悲しみが一気に押し寄せ

泣きじゃくる君を

この腕に抱き締めたかった


君は

どのくらい泣いていただろうか


泣き疲れたなら

少しだけ顔上げて前を見て

ほらお調子者の

俺が見えるだろう?


待ってて

飛んで行くから

今はただ隣にいさせて


慰める言葉なんて

いつもポケットなんかに

入っているわけないけど


それでも

何かを言わずにいられない


思いを伝える言葉は

いつも胸の奥で叫んでいるのに

出て来ゃしない

ヘタレな俺の想い!


冗談ばかり言ってと笑う君

もっともっと言わせて

君に笑顔をあげたくて

俺は君の隣にいるよ

もう後悔したくないから

そう

まずはそこから始めるから


大切な君に投げ込むぞ 


渾身のジョークと


初めての恋心を!

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