第3話
「ちっ..........きずかれたか」
ナイフを持った不審者がそこに居たのだ。
「あっ、あなた何してるんですか!」
間違いない、泥棒だ。
この人が持っているナイフから殺意を感じ、容姿からは威圧的な大きさを感じられる。俺は命の危機から本能的に落ち着くことができなかった。
大声を上げて助けを呼びたいが、残念ながらと言えばいいのかこの家に住んでいるのは、俺の妹の穂花だけだ。
かよわい女の子に助けを呼ぶなんて、命がかかっても俺には出来ないことだ。そしてなによりも俺の大切な妹だから。
そして、こいつに妹の存在を知って欲しくない。ここで大声を出せば敏感な穂花は必ず起きてくるからそんなことはあってはいけない。
俺がもし殺されても........。
ダメだ、弱気でいては何事も進まない。
対抗せぬと相手を睨むが、圧倒的に俺の方が不利だ。ここで俺が暴れて、この人を殺したら正当防衛にはならない。
しかし、そうしないと俺が殺されるかもしれない法律というやつは本当に面倒なやつだ。
それでも、大学生の俺はビビってしまい後退りしてしまう。初めて本当に死を悟った瞬間であった。
クソッ.........。
段々とそいつはナイフを俺に向け、少しずつ進んでくる。
金目のものか?金目のものがほしいのか?
「お金なら、そこのタンスに.......」
「はぁ?うるせぇよガキが。俺がその金をとってお前を逃したところで務所行きだろうが。残念だな、
お前は寝てればよかったんだよ。」
悪魔はどんどん俺に迫ってきていた。
音を立てれば、妹が起きる。しかし、それは絶対に避けたい。
俺の人生と、あいつの人生では価値が違うと思っていた。引きこもりだが、あいつだって昔はとっても
活発的な子だったんだ。
変わればすぐにでも人気者になるだろう。容姿だって、アイドルにすらなれると思っている。
反対に俺は今も大学以外は引きこもっているだけだ、変わろとも別に思っていないただの大学生。
こいつ、サイコパスだ。人を殺すことに勢いがない、なにも戸惑いがないということだ。
大切な人、1人助けたというだけでも俺の人生には価値があったと思っていいだろう。もう、俺は終わったんだ。俺だって、逃げたい!逃げたいけどだめなんだ、妹を守らなきゃ。
どうせ死ぬならと、そいつからの追跡を遮るように。バッとお金が入ってるタンスや親が使っていたダイヤモンドの指輪などが入っている物入れなどを開けていった。
その場の思いつきだ、効果的な理由なんてない。
死に際の抗いにすぎない。
「何してるのかと思えば、金目のものをわざわざ俺に見せるなんて馬鹿なのかお前は?まぁどっちだっていい」
俺は.........死んだ。
とてつもない気の揺らぎによってショックによる気絶で不審者によっての死亡。
幸いお金になりそうな物を見せびらかしたため、2階に行かずにそのまま出て行ったのだった。
♢
あぁ.......お兄ちゃん。
孤独になりかけていた私を救ってくれた人。
いつもの時間に目を覚まして、天井を見ながら物思いに耽る。
昨日は兄ちゃんに抱きつきながら寝ちゃったんだっけ。そのまま私に抱きついて寝ちゃってもいいのに。お兄ちゃんのケチ。
本当はお兄ちゃんだって、私のこと甘やかしたいに決まってる。けど恥ずかしくて照れてるから本当は出来ないんだろうなぁ。
私はお兄ちゃん離れなんてしない。お兄ちゃんからずっと引っ付いて一緒にいるって決めたんだから。
大きくなったら、お兄ちゃんのことを甘やかされるように頑張らないと。。私に構ってくれたり、甘やかしてくれた分、絶対お兄ちゃんにお返しするんだ。そしてお兄ちゃんと一緒に幸せな家庭を築くの。
完璧。
今日も兄のことを思いながら、朝ごはんを作りに行くはずであった。
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