第2話
ガサガサガサ。
歩き出して数分でエンカウントした?
生い茂る草をかき分け現れたモンス……ターじゃない? 人だ! よかった。
「お前、どこの子だ?」
「やっぱり悲鳴だったか」
二人とも銀の髪にグリーンの瞳で、耳がちょっととんがって……る! エルフだ。
僕、子供の姿なのか。確かに彼らが大人なら僕は背丈的には子供だ。いやそれはいい。肝心なのは、僕もエルフかって事!
そっと自分の耳に触れてみた。ちょっとつんとしている感じ。僕もエルフだった~!
「別に何か出たわけでもないか。ここで何をしていた?」
「あ、えーと」
子供の見た目だし、こてんと首を傾げてみる。つまりわかりませんアピール。
「とりあえず、片付けてから連れて行こう」
「そうだな。君、こっちへ」
手招きして歩き出す。それに慌てて僕はついて行った。ちょっと行けば、何かが倒れている。
チャリンチャリンチャリン。
イノシシっぽいけど、もしかしてこの世界のモンスターとか?
チャリンチャリンチャリン。
って、さっきからこの音何? 二人は全然気にした感じではない。聞こえていないのか、これが普通なのか。辺りを見渡すもそんな音がなるようなモノがあるように見えない。
「あの、何かチャリンっていう音聞こえませんでした?」
「音? いや。聞こえたか?」
「いいや」
二人には聞こえてないのか。僕にだけ? なんだろうか。……もしかして、レベルアップした音とか? 僕が倒したわけではないけど、経験値が入っちゃったとか?
「あ!」
「どうした?」
つい思いついて、声を出すと二人が振り向いた。
「いえ……えーと、何をしているのですか?」
「これか? 仕留めたイノシシを持って帰る準備」
「イノシシなのか……」
モンスターではなかった。二人はどうやら狩りの最中だったみたい。
そうだった。ステータス。思い出したけど、そう言ったりしたら何か表示されるかもしれない。
「ステータス」
ボソッと呟いてみるも何も変化はない。それじゃ……。
「ステータスオープン」
何も起こらない。はぁ。どうすれと言うんだぁ。使い方がわからない鞄だけあっても仕方がないのだけど! 武器防具なら効果がわからなくてもそれなりに役に立つ。鞄だってそりゃ物を入れられて便利だけど、今現在、お金もない状態なので何も買えません。
二人について行って、状況把握しよう。少なくとも彼らの態度から着いたら殺されるって事はなさそうだし。
「よし、行こうか」
「ところで名前は? 俺はレン。こっちがアル」
「………」
名前なんてない。というか、覚えてない。うーん。どうしよう。
「どうした? 名前わからないのか?」
ちょっと困った顔をしたらレンさんが聞いて来た。僕はこくんと頷く。二人が顔を見合わせた。
「まあ、本当かどうかは、戻ればわかるか」
アルさんがボソッと呟いたのが聞こえた。どうやら何か方法があるみたい。アルさんは、僕に少し警戒心を持っているようだ。まあ子供とはいえ、知らない者だからね。
たぶん一時間ぐらいは歩いたと思う。やっと森を抜けた。見晴らしがよくなると、建物が見える。木で作った建物。さらにそこまで歩いた。着いた時にはへろへろだ。
「マテ様、彼が森におりました」
様をつけて呼んでいるから偉い人なのかもしれないけど、別に膝をついてっという風ではなくイノシシを担いで、会ったついでに言っていた。
それよりエルフってみんな銀髪にグリーンの瞳で、区別がつかないのだけど。差があるとしたら声ぐらいだ。偉いであろうマテ様だって、集団に混ざってしまえば僕にはわからない。
「食料の調達ありがとう。さて見かけないお客様。あなたはどこからおいでかな?」
「聞くまでもないだろう。黒髪なのだから」
マテ様が僕に聞くも答えたのは、すっとマテ様の横に現れた男! この人はエルフじゃない。耳がとがってないのもそうだけど、見た目が全然違う。長髪の色がグリーン。しかも先にいくほど透明感がある感じで、声も頭に響く感じ。
って、この人には跪いている。
僕だけ突っ立っているのもなんなので、みんなに合わせ跪いた。
「クロバー様、やはりそうなのですか」
「あぁ、この世界の者ではないようだ」
ううう。バレてる。いや、何もされないのならバレてもいいけど。このクロバー様って何者?
って、僕はエルフだけど黒い髪だったのか。
「私は、この辺り一帯の妖精達を束ねている者だ」
僕の考えが読めるの?
「あぁ、ある程度はな。さて君の目的はなんだ」
「ラストライフをエンジョイする事です。たぶん」
「たぶん?」
最後だって言われたけど、何をどうすれとは言われてない。与えられたのは鞄のみ。これでこの世界で暮らしていけるかは疑問だけど。
「なるほどマジックアイテムか。で、名前は?」
「わかりません」
前世さえ覚えてない。まあ、この世界ではきっと浮く名前だろうから別に新しく考えてもいいかも。うーん。何にしよう。
「では、名を授けよう。コクターンなどどうだ。この世界で黒を意味する言葉だ」
「え? 別にいいけど……僕に害がなければ」
下僕になっちゃうとか、命令されたら嫌でも実行しちゃうとか、ないよね?
「心配ない。我々に危害を加えられなくなるだけだ」
「わかりました。コクターンと名乗ります」
そもそも危害を加えるつもりなんてないしね。
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