終活を異世界で~モフモフする為に旅立ったのに世界を救う事になりそうです
すみ 小桜
第1話
どうしたらいいんだろうか。僕は、森の中を彷徨っていた。
鬱蒼と茂る木々に草や蔦。まるでジャングルだ。これ僕、すぐに死んじゃうじゃない?
数歩進んでは、辺りを見渡しながら慎重に歩く。そんな事をしてもモンスターに出会ったら逃げられないのに。せめて、武器か防具が欲しかった。
なんて言うと、神様や女神様が間違って死なせてしまったなんてくだりと思うかもしれないけど、違う。あぶれた魂だった――。
気が付けば、真っ暗闇にいた。それは僕だけでなく、人の形をした光が周りに数十人。人としてとらえるならだけど。見れば僕もそうだ。
――もうそろそろ転生する魂達よ。君達は、同じ
突然声が頭に響く。周りの者もきょろきょろとしているところを見れば、僕だけでなく皆に聞こえているみたい。
――なので君達には違う世界に転生してもらう予定だが……。
神なんだろうか。姿は見えない。男性っぽい声だけ。
――他の世界の転生は一度だけ。つまりこれが最後の人生だ。
え? 最後? うーん。という事は、僕は何度も転生をしていた事になる。……のに、前世さえ思い出せない。名前とか記憶にない。ただ意味などはわかるらしい。不思議。
周りの人達は語らないのに、ざわついている感じがする。これも不思議。
――その君達に、ささやかな
僕達の目の前に色んなモノが現れた。武器防具はもちろん、傘? 鍋? などもある。バラエティーに富んでいるなぁ。
――それは、一人一つどれか当たるように……って、最後まで話を聞かないやつらだ。
声が一人一個だと言ったとたん、周りの者達が一斉に走り出した。そして、
――一番最初に手にしたアイテムが選ばれたアイテムになる。そして、そのアイテム自体は、変哲もない普通のモノ。つまり特別なモノではない。
なんか抗議しているっぽい。どうやら手にしたアイテムが気に入らないようだ。たぶん、欲しいアイテムを手にする為に、目の前のアイテムをどけようとして手にしてしまった。それが選んだアイテムになって文句をいっているのだろう。
――選んだモノに一つだけ好きな効果を付ける事ができる。あまり凄い効果を付けるとレベル制になって、レベルが上がらないと望んだ効果にならないとだけ言っておこう。効果が確定しだい、それに応じた転生先に飛ばす。ラストライフに祝福を!
望んだ効果? それなら武器防具に固執しなくてもいいかもしれない。
って、考えていたらアイテムが!!!
絶対当たるとは言え、使いようがないものでも困る。
ガシ。
ふう。なんとか鞄を手にした。これならまだ効果が思いつく。傘とかだと、僕では使いこなせない。
さて、どうしようかな。
少しずつ人が減っていっている。皆決断が早いな。僕的には、
候補としては、ありきたりだけど「無限に入る」。というか、それしか浮かばない。でもこれじゃ生きていけないよね。入れるモノが無ければ意味がないから。
困った。鞄ならなんとかなると思ったけど、でもすでに武器防具はなかったし。
装備すれば「攻撃を防ぐ」とか? でもなぁ。それじゃ攻撃できないじゃないか。逃げ回るしかない。
そういえば、『効果が確定しだい、それに応じた転生先に飛ばす』って言っていたよね。普通の鞄だったらモンスターがいない世界へ転生になるのだろうか。
でもそうじゃなかったら意味がないし、そもそもお金がなければ生きていけない!?
考えていたらわかんなくなってきた。なんか無難な効果はないだろうか。
「鞄というアイテムを最大限活かして、尚且つ生きていくのに役に立つ効果がほしい!」
ちょっと口に出してみた。うん。凄く都合がいいな。って、話せたんだ僕。いやきっと声に出したつもりになっているだけだ。だって、他の人の声が一度も聞こえて来ていないから。
――その鞄には、「鞄というアイテムを最大限活かして、尚且つ生きていくのに役に立つ」という効果を付け新しい世界へ
うんそれね。それが思いつかないから……えぇ!!
「ちょ、ちょっとまっ……」
――ちなみに言語理解は標準装備だ。
神様かなんだかわからないけど、もう少し配慮して~! 確認というワンクッションがほしかった。
「はぁ……ここ、どこ?」
周りを見渡せば木しか見えない。森のようだ。
鞄だけしかないのに森でどうすれと!!
一応、鞄の中を覗いてみたけど、空っぽ。何も入っていない。
一体どんな効果がついたのだろうか。
それを探ろうと、肩から外したり、振ってみたり、頭を付けてみたりしたけど、何もわからない。もしかしてだけど、効果を知るのにはそういうスキルや魔法が必要なの? それって終わっている。アバウトな感じの効果だからどんなのか思いつかない。
とりあえず、物を入れる行為の効果だとは思うけど。
「はぁ。あれってきっと神様じゃないよ。きっとそういう仕事の担当者だよ。じゃなきゃ、適当すぎるでしょう!」
ふう。叫んだら少しはスッキリした。
とにかくここに黙って居ても仕方がない。村か街を探そう。夜があるかわからないけど、夜になるならその前に森から出たい。
僕は、こうして歩き出したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます