第3話 アリサの答え

 一人ひとり、平行世界の岸和田競輪場に取り残されたアリサ。

 は、今の自分がパジャマ姿ではなかったことだ。本来いた世界では、妹の見事と会った後、買い物へ行くつもりだった。服装は外出用に着替えていたのが幸いした。


「ハァ・・・」と、ため息を吐くが、していても仕方ない。予想しよう。少年版・競輪の神様からもらった専門予想紙ギフトを読みながら、予想を開始した。この展開に馴れてきている自分が怖いが。


                *****************


 運命の16時27分を迎えた。決勝戦・電話投票締め切り時刻だ。

 岸和田競輪場内にいた客が競争路バンクの方に移動し始める。皆、決勝戦を目の前で観るためだ。

 そして、アリサの目の前には、新たに就任した競輪の神様がいた。


「約束の時間だよ。キミの答えを聞きに来た」

 競輪の神様は、静かにアリサへ問い掛ける。こうして余計なことを言わない分には、ただの美少年。前任の神様よりもいいかもしれない。

「いいわ。じゃあ、私の答えを伝える」

 アリサは静かに深呼吸して話し始める。

「2車単の本命は、①②③⑤⑨のBOX。中穴で①②④⑤⑧のBOX。そして、大穴で⑤⑦⑧⑨のBOX。プラスして③⑧のBOX。合計で五千円。ただし、被る買い目は除外しているわ」

「確かに。ピッタリ五千円だ」

 アリサの答えを聞き、美少年・競輪の神様は静かに頷く。その振る舞いは、可愛かわいいと言うよりも、ものわぬ威厳いげんがあり、前任の競輪の神様より緊張感があった。


「では、僕らもホームストレッチへ向かおう。答えを確認するために」

 競輪の神様は手招きするように言う。アリサは競輪の神様とともに岸和田競輪場のホームストレッチに向かった。



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