第30話 魔王直属の将軍と戦闘になった

 その悪魔は、女型だった。黒いハイレグの鎧に身を包み、シッポがアナコンダサイズの大きな蛇になっている。女王様みたいな仮面で目を覆い、終始笑みを浮かべている。


「アタシは暗躍宇宙人・魔将アストレア。魔王デュロイル直属の部下さ」


 女性型の宇宙人が、僕たちに語りかけてくる。しゃべっているのは、シッポの蛇の方だ。


「あんたのような地球人には、アスタロトって言ったほうが通じるかねえ?」


 アスタロトって、めちゃめちゃ強い悪魔じゃないか。いろんなゲームでも、強敵として出てくる。


「魔将アストレア! わが婚約者には、指一本触れさせぬ!」


 勇ましく、ゴーチエ王子が剣を構えた。


 モンスターの大半は、ゴーチエ王子が倒している。腕は相当なものだが。


「まあ、男らしいね。でも、実力が伴っていないんじゃあね!」


 アストレアが手をかざし、突風を起こす。


「うわ!」


 ゴーチエ王子が、吹き飛ばされそうになった。


 僕が盾を構え、王子の前に立つ。


「城まで逃げてください。今は、婚約者さんの命が大事です」

「すまん!」


 ゴーチエ王子が、お姫様を連れて逃げていく。


「逃さないよ!」

「僕が相手になります!」


 アストレアの行き先を、僕たちで阻む。


「あんたは地球人ってだけで、厄介なんだよ! 現地人含めて、全員レベル五〇超えとか! 魔王軍を軽く凌駕してるじゃないかっ!」

「なにか、ワケありですね?」

「忌々しい、地球人め。貴様らさえいなければ、もっと世界支配は楽だったのに!」


 魔王軍とアストレア率いる魔物たちは、長年ずっと戦ってきたという。


「巨大モンスターを使えば、すぐだったのでは?」

「その切り札である巨大魔物が、ことごとくやられているんだよ。地球人のせいで!」


 巨人の正体は、やはりユウキだったんだ。こんなヤツらと、ユウキはずっと戦ってきたのか。


 魔王たちは、地球人の存在を恐れている?


「地球人は、この世界の魔力と親和性が高い。我々のような召喚されたものより遥かに」


 しかも、地球人は等しく女神の恩恵を受けているらしい。魔族と対立してる最強の存在から、パワーを得ているのだ。


「おのれ。レベルアップは早いわ、レアアイテムはポンポン拾うわ。死ににくいわで、こちらは対応に追われているんだよ!」

「だから、ダンスパーティで王族をひとまとめに捕らえて、僕たちを足止めしようとしたんですね?」


 アストレアが、口をパクパクさせた。


「ああ、ネタバレしちゃいました?」

「死ねえ、地球人がぁ!」


 怒り狂ったアストレアが、蛇の口からサーベルを吐き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る