第26話 ドワーフのお店を見学させてもらった

 イーサクさんのお店を色々見せてもらった。


「なんでもあるんですね?」

「作業中はヒマでしょ? この店だけでも、王都に何があるかがわかるようにしているんだ」


 金槌を振り下ろしながら、イーサクさんは答える。今作ってもらっているのは、新しい盾だ。


 たしかに、お店の陳列具合がマップ状になっていた。


 釣り竿の場所は港、魔導書の置き場所は本屋、お菓子が陳列してあるスペースは、市場だ。


 ここは、小さな王都である。いきなり街なかを見て回る前に、行き先の目星をつけてもらうのが目的らしい。考えてあるんだなぁ。


「冒険者って、ガイドマップなんて見ないからさぁ。この店にいれば、自然とどの方角になにがあるか覚えるわけ」

「なるほど」


 お客さんの目を引きつつ、何がしたいときにどこへいけばいいかの案内にもなっているのか。


 となると、この下着類が置かれている場所は。


「これなんだ?」


 マルちゃんが、ゴム風船のようなものを手に取った。


「それは……」


 言いづらそうに、エリちゃんがマルちゃんに耳打ちする。


「すごいな。こんなものまであるのか」


 わかりやすく、マルちゃんが赤面した。


「一個サービスしようか?」


 イーサクさんが聞くと、マルちゃんはブンブンと首を横に振る。


「いや避妊具じゃなくて。アイテムを一つおまけしてやる、って言ったんだけど?」


 変な誤解をしてしまって、ますますマルちゃんは苦笑いを浮かべた。


「ヘヌリおじさんを助けてくれたお礼だ。なんでも持っていっていいよ」

「じゃあ、これを」


 エリちゃんは、攻撃魔法の書物を。


「あたしは、これかな」


 シノビ装束を、マルちゃんは手に入れた。スリットが入って胸も足回りも際どいながら、鋼鉄より防御力が高い。


 イーサクさんは作業を進める。


「あんたは?」

「タダで装備一式を作ってもらっているので、僕はいいです」

「そっか。じゃ、まずはこれを」


 もうできあがったのか。


「早いですね」

「そういうスキル持ちだからさ。他の装備は時間がかかりそうだね。予備として、こいつを持っていきな」


 予備のヨロイとショートソードを、僕は受け取った。これだけでも、今までの装備と比べて数倍の強さがある。


「ささ、お城へ行く時間じゃないのかい?」


 そうだ。王様に呼ばれているんだよね。


「ありがとうございます。行ってきます」

「気をつけてね」


 イーサクさんの工房を後にした。


「エリちゃん、いい?」


 王族の血を引いているエリちゃんが、お城でどう思われるか。僕はそれが心配だ。


「ええ。ここまで来たら、どうにでもなれよ」

 

 それにしても。


「気をつけて」、か。

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