第25話 王都で、装備新調のお願いをした

 魔族、というか魔族呼ばわりされている宇宙人を撃退したことで、立ち寄った村からワインをいただく。昨夜、シルヴェーヌ姫様が飲んでいたものだ。あれを、何本かもらう。


「すいません、王女殿下がお収めください」

「アユムさま、よろしいので?」

「はい。僕たち全員、飲めないので」


 僕たちが遠慮すると、シルヴェ―ヌ王女がため息をついた。


「それは、困りましたわね」

「なにがです?」

「父は、アユムさまがたをパーティに誘いたいとおっしゃっていて」


 バカ高いお酒を用意して待っているのだとか。娘とも再開できるので、楽しみなのだろう。


「全員がお酒をたしなまないのでしたら、わたくしが独り占めしてしまいますが」

「どうぞどうぞ。好きな人が飲んでくださいな」

「ありがとう、みなさん」


 心なしか、姫様はウキウキしているな。


 そんなこんなで、特に危なげもなく王都アムンセンへ到着した。


 僕たちが用意した保存食の手羽先と、村からもらったワインで、姫様は終始上機嫌である。


「いやあ、幸せは庶民的な味からでも堪能できますのね!」


 姫様は「うへへぇ」と、表では絶対にさらしてはいけない顔になっていた。腹違いの妹が失踪したことと、宇宙人の襲撃によって、ストレスが半端なかったのだろう。


「わたくしは先に城へ帰っています。わたくしから、話を通しておきますわ。みなさんは、用事を済ませてからいらして」

「ありがとうございます」


 先に宿を取って、装備調節のためにドワーフの鍛冶屋へ。


「えっと、イーサクさんだったよね?」


 イーサクさんの店を聞いて回っていると、段々と裏路地へ向かうことに。


「ホントに、ここなんでしょうね?」


 そこは、武器屋とは呼べない場所だった。


「雑貨屋だ!」


 マルちゃんが、大声で店の様子をそう表現する。


 店頭には平積みの魔導書と、なんと釣り竿があった。その隣は、美容液のコーナーだ。


 なんなんだろう、ここは? まるで、ドラッグストアみたいに乱雑じゃないか。


「あらあ、どなた?」


 キャミソール一枚の女性が、店の奥からやってきた。


 見た目は小柄で、どうもノームっぽい。ピンクのキャミはスケスケで、色々と隠せていない。


「アユム、この人、おっぱムグ」

「はいはい。マルちゃんは黙っていようね」


 マルちゃんの口を手で押さえる。


「なんの用?」と、ノームの女性が聞いてきた。

「イーサクさんというドワーフに、用事があってきたんですが? こちらで間違いないですか?」

「はいはい……あんたぁ! お客!」


 ノームの女性が、奥の間へ大声を張り上げる。


 やがて、のそりのそりと人影が見えてきた。


「おや、お客さんかな?」


 パイプをくゆらせて出てきたのは、男爵ヒゲを携えた小太りの少年だ。ランチョンマットに副流煙がかかるのも構わず、パイプの火を消さない。


「ゲホゲホ。ヘヌリさんに呼ばれてきました」


 煙を払いながら、自己紹介をした。


「ああ、ヘヌリおじさんのお知り合いで」

「これが、紹介状です。ゴホゴホ」

「ふむう」


 僕の用意した紙を、イーサクさんは確かめる。


「たしかに、おじさんの字だね。ボクがイーサクだ。こっちはボクの家内だよ」


 イーサクさんは「お昼作ってあげて」と、奥さんを部屋へ引っ込ませた。サクサクと、台所から調理の音がする。


 リビングで簡単な昼食までいただき、本題へ。


 僕たちも自己紹介をしつつ、事情を説明した。


「なるほど、装備品ね。聞いているよ。素材とかはある?」


 ここでようやく、イーサクさんはパイプの火を消す。


「はい。あらかた、ありますね」


 これまでの戦いで得た戦利品を、僕たちはイーサクさんの前に広げてみた。


「うわあ。キミたち、タダもんじゃないねぇ」


 さっきまでの好色な男性像が鳴りを潜めて、イーサクさんが目を輝かせる。


「お城に呼ばれてるんだよね? 行ってきなよ。その間に、いいのを作っておくからさ」

「お願いします」

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