第24話 お姫様と仲間の関係を知った

 王都へ向かう前に、とある村に立ち寄って話を聞くことに。

 宿を借りて、お姫様たちが僕たちの部屋に集まった。


「わたくしはシルヴェーヌ・シャンテニエー。アムンセン、あなたがたでいう王都の第一王女ですわ」


 リラックスした格好で、食卓を囲む。


「ご丁寧にどうも」


 僕たちもそれぞれ名乗った。


 執事さんが、シルヴェーヌさんにワインを注ぐ。


「ありがとう。お身体はどう?」

「ええ、とても。エリアーヌ様、ありがとうございます」


 執事さんが、エリちゃんに頭を下げた。彼も、すっかり元気になったようである。


 他の兵隊さんは、交代で見張りをしつつ別室で休んでいるらしい。


「アユムさま、マルグリットさま、エリアーヌと仲良くしてくださって、本当にありがとう」


 シルヴェーヌさんが頭を下げたあと、しばらく食事の時間となった。


「ところで、殿下はどうしてお外に?」


 お腹が落ち着いてから、話を聞くことに。


「公務ですわ。ジルダに不穏な影を見たというので、確かめに行きましたの。魔族の動きも気になりましたし。民の危機とあれば動くのが我々王族の務めです」


 ジルダに資金援助をして、他の都市や村を回った帰りだったそうで。


「それに、わたくしはエリアーヌに一目会いたくて」


 シルヴェーヌ姫が、エリちゃんの手に自分の手を添えた。

 だが、エリちゃんはその手を避ける。


「あの、二人はどういったご関係で?」

「この子は、わたくしの腹違いの妹です」


 なんでもエリちゃんは、アムンセンの王様が侍女に手を出して生まれた子だという。


 しかし妊娠が発覚すると、侍女は出ていってしまった。

 王家に迷惑をかけまいと。


「この子の母親は、一人で故郷まで帰ってエリアーヌを生みました」

「その村って、たしか」

「はい。魔王に焼かれて、もうありません」


 メファさんがエリちゃんの面倒を見ていたのは、アムンセン王妃の指示だったんだって。


「魔王デュロイルは、かつてはそんなに強い魔王ではありませんでした」


 外側の世界から人々を召喚するしか能のなかったデュロルイは、先代の魔王から追放されたという。


「デュロルイはその後、大量の凶悪な宇宙人を大量に召喚して魔王の座を乗っ取りました。彼の悪行は、世界の生態系すら塗り替えてしまいました。彼にとって世界じゅうのすべては、ただうとましいだけの存在なのです。彼が目指しているのは、混沌とした安らぎのない世界」


 悲しい悪役と言ってしまえばそれまでだが、やっていることはひどすぎる。同情できない。


「魔王に目をつけられないうちに、こちらでエリアーヌを保護しようと思ったのですが」

「エリちゃんは、王家ではうとましくは思われていない?」

「はい。こちらで面倒を見ますよ、と再三申したのですが、この子は聞かなくて」


 エリちゃんは、首を振る。


「エリアーヌ、突然いなくなるなんて。ルルジョンに使いまでよこしましたのよ」

「連絡せずに、ごめんなさい」

「いいえ。あなたが無事でなによりです。城に住むわけにはいきませんの?」


 シルヴェーヌさんは聞くが、エリちゃんは首を振った。


「みなさんのお気持ちは、うれしいの。でも王族になったって、うまくやっていく自信がないわ。本当の親はあのとき死んだのよ。その気持を背負ったまま、私だけ幸せになんてなれない」「あなたが戦うのは、ご両親の復讐をするためなのでして?」


 シルヴェーヌさんは、エリちゃんから話を聞いてから、話を切り出す。


「魔王討伐に執念を燃やすあなたの気持ちは、わかりますわ。母親を失ったのですもの。けれど、あなたまで失ったらわたくしは」

「私は、死んだことにしてちょうだい」

「エリアーヌ!」

「家族の仇は、もちろん取りたいわ! でも、半分はみんなと過ごしたいと思っているの。冒険が、楽しいのよ」


 エリちゃんは、僕たちとの旅を楽しいと言ってくれた。


 ソレだけでも、救われた気持ちになる。

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