第19話 街に巨大生物と、巨人が現れた
「なに、どうなってるの?」
エリちゃんが、何が起きているのかわからずにうろたえていた。
「こいつら家具類も宇宙人……魔王の仲間だったんだ」
宇宙人という単語は理解されないと思って、それっぽい理由をつけてみた。
「エリちゃんのポーションで、ダメージを受けている。もっとやっちゃって!」
「いいの?」
いちいち聞くってことは、ヤバイポーションなのかな?
「さっき【毒耐性】にスキルを振ったから、僕は平気だ! やってくれ!」
「わかったわ!」
エリちゃんが次々と、ポーションを床にぶち撒ける。
「どう? 植えている土壌さえ猛毒にするキョウチクトウと、硫黄を混ぜた特製の毒ポーションよ!」
毒ポーションを吸って、家具たちが暴れだした。ポルターガイスト現象みたいに。実際、彼らはポルターガイストのように実体がないのかも。
マルちゃんが、エリちゃんを押さえつけようとする冒険者たちを気絶させた。昏倒した冒険者を、部屋から運び出す。
「この部屋ごと焼き尽くして、エリちゃん!」
「OK! ファイアーボール!」
エリちゃんが、火球を床に叩き込む。
火が燃え移って、家具一式が燃え盛る。
「何事!?」
リゴス星人が慌てたのを確認し、僕は武器を取り戻した。
「くそ、目がぁ!」
ポーションの煙がしみて、リゴス星人は目が開けられない。
「くらえ!」
星人に、僕は突撃した。リゴス星人の目に、剣を突き刺す。そのまま、壁に押し込んだ。
そのおかげか、冒険者たちも正気に戻る。
「あなたが、本体だったようですね?」
「ええ。私が死ぬことで、すべてのリゴス星人は死に絶え、この世界からいなくなるわ」
段々と、リゴス星人が冷たくなっていく。
「けど、油断しないことね。侵略者は私だけじゃない。魔王は私たち異星人たちの文明すら取り込んで、力を得ようとしている。あなたたちに、勝ち目はないわ」
虫の息になりながらも、星人はクスクスと笑う。
「その前に、僕の友だちが魔王をやっつけるさ。彼は、異形退治の専門家だからね」
「せいぜい、ほざいてなさい、よ」
星人の目から、光が消えていった。今度こそ、リゴス星人は息絶える。
「終わったの?」
「ああ。宇宙じ……モンスターは死んだよ」
すべてが終わったあと、僕たちはアジトを焼く。二人して氷魔法で障壁を作って、火が森に燃え移らないようにする。
「まさか、異世界から異常に強いモンスターを召喚しているなんて」
「僕たちも、強くならないといけないね」
アジトが灰になったあと、地響きが。
「な、なに!?」
「街の方だ!」
いけない。街には孤児たちがいる! 彼女たちになにかあったら!
急いで、街へ帰る。
遠くの方で、火の手が上がっていた。
「みんな、無事か!?」
孤児院に戻り、全員の無事を確認する。かわいそうに、みんな円になって怯えていた。
屋根に登って、何が起きているのか確認しに向かう。
「あれはなんだ?」
巨大なバケモノが、遠くの方で暴れている。目測で、四〇メートルくらいだ。煙で、シルエット以外は何もわからない。
「ドラゴンだ! ドラゴン!」
「いいえ。ドラゴンはあんな細くないわ。形もぜんぜん違う」
確かに、エリちゃんのいうとおりだ。ドラゴンにしては、いかんせん小さいのだろう。
「見て。後ろになにか、巨人までいるわ!」
魔物の背後には、漆黒の巨人の影が。シルエットだけなので、もっとカラフルなのかもしれない。
「敵ではないことは確かだ」
「なんでわかるのよ」
「彼は、魔物しか見ていない」
巨人の両腕が、光った。腕を天に掲げ、火球を作り出す。
『ヅエエエエア!』
こちらまで聞こえてくるような雄叫びを上げて、火球を怪獣へ向けて投げ飛ばした。
あれだけの巨体を誇っていたモンスターが、一発で消し炭に。
すべてが終わり、巨人は街に水をかけ始めた。
街の火が消えていく。
消火活動を終えると、巨人も姿を消した。
僕は、この間のギルマスの話を思い出す。
――あれはメテオじゃねえ。ファイアーボールだ。
もしかして、あれが、ユウキだってのか?
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