第17話 実験体と戦闘になった

 ハクスラで手に入れた強めのショートソードで、迎え撃つ。


「くらえ!」

「なんの!」


 敵のカマを、ソードで弾く。


「おお、強い!」


 ドロップ運がよくて助かった。なまくらでは、コイツのカマを受けきれなかった。


「こしゃくな!」


 敵もフェントを交えつつ、攻撃を繰り出してくる。


 戦士のスキル【先読み】によって、僕は相手の動きをかろうじて避けた。基礎的なスキルだが、効果的だ。女神の恩恵があるためか、読みの速度も早い。


 レベルも、相当に上がっている。どうにか、対抗できていた。少しずつだが、強くなっているような。


 とはいえ、まだ攻撃力が低い。攻撃力は完全に、武器に依存している。


『決め手には欠けるが、死ににくい』という感じのビルド、つまり育成構図だ。


「さすがだ。ここまで来るだけのことはある! ボスがお前を見たら、大喜びするだろう!」

「お前たちのボスは、何者だ!?」

「勝ったら、会わせてやろう! 勝てればの話だがな!」


 モンスターが、カマを振り落としてきた。


 僕はギリギリまで引き付ける。


「ヌハハァ! 避けきれぬと、首を差し出すか! それもよい!」


 剣の柄頭で、僕はカマを受け止めた。


「なにい!?」


 機械の部分に、足先でケリを入れる。


 マルちゃんの攻撃を再現してみただけだ。彼女は敵のスキを突き、もっとも弱い部分に攻撃を当てていた。


「ごおおお!」


 やはりだ。機械の部分は強化はされているものの、パーツの隙間はもろい。


 ローリングソバットで、敵の首を粉砕した。


 僕、体術系でいけるかも?


 まだ、敵は動いている。どうするか。ムリをしたから、武器は壊れてしまった。刀身が、柄から外れてしまっている。


「見事だ。ボスは、奥の間にいる」


 奥の壁を指差して、怪人は事切れた。


 大量のアイテムを、ゲットする。レア度の高いロングソードに、軽い金属製のヨロイだ。


 いやあ、助かった。さっきまでのドロップ品は、ほとんどがエリちゃんたち向けの装備ばかりだったからね。


「僕が思っていた通りだ」


 装備を付け替えながら、僕は今までの戦闘を振り返る。


 この世界での戦闘は、戦闘に多く貢献していた人の装備がドロップするようだ。


 僕はいつも、足を引っ張っていたんだな。


 とはいえ、まだまだ僕はヒヨッコだ。エリちゃんやマルちゃんには及ばないだろう。


「エリちゃんたちは、脱出したよね?」


 怪人が差していた方向へ、僕は歩く。


 ワナがないか慎重に探っていると、壁がひとりでに開いた。人が一人だけ入れるくらいに。


 誘い込まれている?


「お、お邪魔します」


 扉の内側へ、そっと足を踏み入れた。


 部屋は、大量の豪華な家具類で溢れている。でも、どれも布で覆われていた。転売でもするのかな?


「ごきげんよう。屋敷以来かしら?」


 そこにいたのは、ゴスロリの女性とメイドさんの一団だった。


「あっ、あなたは」


 ドクロ党を仕切っていた貴族の屋敷にいた、お嬢さんである。


「お人好しね。黒幕である私を逃してしまうなんて」

「やはり、一連の騒動はあなたの仕業でしたか」

「ええ。私はこの世界を支配するために、あの野盗共から召喚されたの。別の宇宙から」


 別の宇宙だって?


「あの、言っている意味がよくわからないんですが……」


 僕が尋ねると、少女は愉快そうに笑った。 


「おバカさんね。いつから、異世界転移するのが『地球人だけだ』と錯覚していたの?」


 と、いうことは。


「あなたは、地球人ではない?」

「ジャガイモがあるのよ。宇宙人がいたっていいでしょ?」


 小バカにしたように、お嬢さんは真顔になる。


 見た目からして、とても宇宙人とは思えない。


「では、わかりやすく本性を見せてあげましょう」


 ゴスロリ少女の服を、メイドさんたちが脱がし始めた。


「ちょちょちょっと!」

「いいのよ。気を遣わなくても。服のほうが本体だから」


 なんと、ゴスロリ少女の服が真っ二つに。メイドさんたちが、割れた服をつなぎ合わせる。


 ゴスロリ服が、グルっと振り返った。

 肩甲骨の部分が、目のように開く。


「私は、リゴス星人。侵略者よ」

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