第16話 囚人たちを助け出した

 僕と囚人たちの間には、鉄格子があった。よく見ると、なにかの文字のようなものが刻まれている。これはなんだ? 


 手を触れようとすると、囚人たちが首を振る。やはり、なにか仕掛けがあるのか。


「今、助け出すよ!」


 鉄格子を、マルちゃんが掴もうとした。力で強引にこじ開けるつもりだろう。


「待って!」


 慌てて、僕は止める。


「どうした? 早く助けないと!」

「わかってる! でも、ワナの危険もある」


 その辺の石ころを、鉄格子へ当ててみた。


 バチッ! と石の塊が粉々に。


「うへええ」


 マルちゃんの耳が、しおれた。


 やはり、鉄格子にはワナがしかけられている。


「それに、みんな丸腰だ。武器を取り上げられたんだろう」


 今脱走させたとしても、逃げる手段がない。


「先に装備を取り戻します。どこにあるかわかりますか?」

「奥の倉庫だ。頼む」

「行ってきます!」


 僕たちは、牢屋の奥にある倉庫へ。


「曲者だ!」


 見張りが僕たちに気づいた頃には、みんなで敵を昏倒させていた。僕の体術、エリちゃんの催眠ガス、マルちゃんの高速移動で。


「カギがかかっているぞ」

「任せて」


 見張りが持っていた鍵束から、それっぽい物を見つける。


「これが一番大きい。倉庫の扉が開くかもしれない」


 鍵を開けると、冒険者たちの装備品が大量に見つかった。急いでアイテムボックスの中へ。


 あとは、彼らを逃がすだけ。しかし、キーの差込口に石を投げ入れたら、やはり石が砂に変わった。あのまま鍵を差し込んでいたら……。


 扉の仕掛けを壊さないと。


「この構造について、なにか知っていますか?」


 再び、囚人から話を聞く。


「別室に、制御室があるらしい」


 詳しい場所を聞いて、上の階に。


「監視カメラとか、無線機がなくてよかったよ」


 さすがに、電気までは発達していないらしい。

 そこまで文明を、維持できないのだろう。電流トラップも、仕掛けは魔法で細工しているようだ。


 仮に逃げられたとしても、すぐに捕まえたほうが早いのかもしれない。

 敵はそれだけ、腕に自身があるのだろう。


「まだ魔物がいるぞ」


 大木槌を持った毛むくじゃらの大男と、下半身が蛇の魔法使いが襲ってきた。


「やーっ!」


 マルちゃんが、大男をヒザ蹴りで撃退する。


「くらいなさいっ。ブレイズ!」


 エリちゃんがオイルを床にまいて、火球でモンスターを焼く。


 相手が怯んだところで、僕がとどめを刺した。


「強めの武器が手に入ったよ。交換しておこう」


 魔物を撃退しつつ、装備を更新していく。


 野盗たちとも交戦になったが、相手はたいして驚いていない。しょっちゅう襲撃を受けているのだろう。やはりここはダンジョンの扱いで、敵襲も想定済みのようだ。


 上の階に到着した。制御室に、屈強な男性が立っている。


「ケガをしたくなかったら、こんなことはやめなさい」

「ハン! ボスから力をもらったオレサマに、説教とは!」


 野盗の身体が、膨れ上がった。皮膚を突き破って、モンスターの姿となる。


 なんだ、このバケモノは?

 顔がコブラのような半人半獣で、右手はカマになっていた。身体の弱い部分を補うかのように、機械が各所に埋め込まれている。


 僕が知識として知っているファンタジー系魔物とは、似ても似つかない。


 そういえば、マルちゃんが戦った魔族も、あんな感じだった。


 大量に、こういった怪人を作り出している?


「くらいなさいバケモノ!」


 エリちゃんが、火の玉をモンスターに撃ち込んだ。


「フン!」


 だが、魔物はカマの手を振るっただけで、火球を弾き飛ばしてしまう。


「やっつけるぞ!」


 マルちゃんが飛びかかろうとしたのを、ボクは止めた。今やるべきことは。


「僕が戦う! みんなは制御室を壊して」

「わかった! ぶっ壊せばいい?」

「多分!」


 人の手が触れるんだ。こっちにはトラップなんてないだろう。


 マルちゃんが、コンソールを破壊していく。エリちゃんも、毒ポーションをコンソールの破損部分に流し込む。



「おのれ! 我々の実験場を!」


 カマを振り回し、魔物が襲ってきた。


「囚人たちは、逃したわ!」


 下の階から、エリちゃんの声が。鍵を開けてくれたようだ。


「お前の相手はこっちだ!」


 僕は、怪人の行く手を遮る。

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