第三章 ダンジョンのあとしまつ
第15話 ダンジョンに潜った
ダンジョンと聞いて、ボクはてっきり洞窟やら遺跡のような場所をイメージしていた。
「これが、ダンジョン?」
冒険者ギルドのあるジルダの街から半日かけてダンジョンに到着し、ボクは口がポカンとなる。
世界観が、そこだけ異質なのだ。
なんというか、もろSFに出てきそうな扉と、外壁なのである。どう考えても、こちらの世界にあるような建造物ではない。
「変な建物ね、アユム?」
「ダンジョンっていうより、悪者の秘密基地だよね。これ?」
構造が、近代的すぎる。どことなく、七〇年代っぽいんだよね。
サイケデリックさとか、違和感満載な色合いとか。
目立つのだが、地味さがある。
「アユム、玄関見つけた!」
ケモミミニンジャのマルちゃんが、うれしそうに扉を指差す。
「これはまた、わかりやすいね」
いかにも、「ここは悪党のアジトです!」と主張するマークまで玄関にあるではないか。
ところどころ苔むしており、この世界に溶け込もうという努力は伺えた。それでも、異物感は取り除けていない。
「これだけのダンジョン、不思議だと思わなかったのかな?」
「思っていたでしょう。でも実際、調査隊は次々と行方不明になっているって、ギルマスも言っていたじゃない」
調べてみたが、なにもわからなかったと。
「入ってみよう」
「出られないってことは、ないでしょうね?」
「それも込みで、調査しよう」
僕たちは、正面から堂々と中へ。見張りはいない。というか、マルちゃんがとっくに倒してくれていた。
変装するか? いや、相手に面は割れているから意味がない。敵の衣装がフルフェイスなら、考えたけど。
「アユム扉が!」
小声で、エリちゃんが後ろを指で示す。
玄関が、閉まっている。出すつもりはないか。これは、敵を倒すまで出られないな。
野盗が出入りしているのだ。比較的構造も簡単なのかも。
狭い通路を、警戒しながら歩く。
監視カメラ的な類は、ないみたい。しかし、いつ見つかってもおかしくはないな。
「ビイイイ!」
やはり、見つかったか!
「魔物だ!」
犬型の魔物に、発見される。ですよね、鼻が利くヤツを置いておくよね。
「すぐにやっつける!」
「待って。僕がやる!」
マルちゃんを下がらせて、僕が剣を構える。
ここのところ、ロクにレベル上げをしていない。マルちゃんの足を引っ張らないためにも、僕たちで倒す。
古い方のヨロイを犠牲にして、相手の注意を引く。
ヨロイを引きちぎるのに夢中になっている間に、首を斬る。
相手が動かなくなったところを確認して、先へ急いだ。
今のモンスターは、犬の要素が強かったからまだ倒せた。次は、こうはいかないだろう。
「マルちゃんは、相手の匂いをかいで道を示してほしい。魔物たちは、僕が蹴散らすよ」
できれば、マルちゃんの戦力は温存しておきたい。僕とエリちゃんのレベルを上げつつ、進む。
ダンジョン内部は、建物部分は一階だけだった。
あとは、地下へ地下へと広がっている。
とはいえ鉄骨が使われていたりと、やはりこの世界とは文明レベルが違う。
妙だと思ったのは、魔物が普通に住み着いていることだ。
アジトならもっと、統率が取れていると思ったのだが。
まあゲームでも、指示を聞かなそうな魔物とかが基地内を徘徊していたりするけど。
「元々あったダンジョンを、自分たちでリノベーションした、って感じだね」
僕は、そう推理してみる。
「どういうこと?」
「ダンジョンマスターは、この世界の住人じゃないってこと」
ドクロ党の一味もいるが、彼らは悪者でいう戦闘員ポジションみたいだ。
大した命令を受けず、言われたことを実行しているに過ぎないみたい。
おそらくダンジョンマスターこそ、別世界から来た侵略者なのでは。
「ギルドはおろか、マルちゃんでも歯が立たない。おそらく、こちらの世界の法則が通用しないのかも。警戒しよう」
慎重に先へ進んでいく。
「あっ!」
ダンジョンの奥に、牢屋があった。
たくましい男女が、牢屋に入れられている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます