第14話 謎の一団の、正体を探る
日頃から毒物に対抗する訓練を受けているから、麻薬とかは効果がないらしい。悪党が作っている麻薬も、製法が悪いから粗悪品っぽいしね。
「副作用もないの?」
「ないぞ。あとエリアーヌの治療もあって、後遺症とかも残ってない。ありがとうだぞ」
「どういたしまして」
発見当時は、単に気絶させられていただけらしい。繋いでいた鎖も、普通のものだったし。術師ってタイプでもないから、力も奪えなかったようだ。空腹にするしか、マルちゃんは抑え込めなかったようだね。
「あんたを倒すくらいだから、相当に強い魔物だったんでしょうね?」
「うん。接戦だったぞ」
しかし、集団で攻められて昏倒させられたという。
「腹も減ってたし、人質も取られて捕まるしかなかったぞ」
「あの盗賊団なら、卑劣な手段に出るのもうなずけるわね」
悔しそうに、マルちゃんは頬を膨らませた。
「なにか、能力を使われた?」
マルちゃんクラスの相手を捕らえるなら、並の冒険者ではムリだ。魔族すら相手にならないんだから。人質を盾にされたとしても、あれだけの動きができる人間を止めるなんて不可能だろう。マルちゃんなら、野盗が人質に手をかける前に倒せる。
「おう。そうなんだよ! 金縛りにあったみたいに、動けなくなったんだ!」
やっぱり。特殊な力を持った相手が、敵側にいたと考えるのが自然だ。それにしても、いったい誰が……あっ。
「そういえばさ、屋敷で妙な一団を見かけたんだ」
僕は、屋敷から助け出したお嬢様の話をした。
「あんたはまた、変なトコロでフラグを立ててくるわねえ」
呆れた様子で、エリちゃんが頬杖をつく。
「ところがだよ? その人たちの情報が、一切入ってこないんだ」
保護されたなら、ギルドに記録してあるはずだ。しかし、なにもない。煙の方に、ふわっと消えてしまった。
「どうせ、愛人でしょ? そんなもんよ。表立って出てこられないだけよ」
「そうかな? 愛人だったら、余計に出張ってくると思うけど」
「……そっか。財産没収なんですものね」
たいてい愛人とは、お金に困っている人がなるものだろう。
どこぞのお姫様と禁断の関係なら、別だ。とはいえ、そんな甲斐性なんてあの男からは感じない。
そんなやましい情報を持つ人間が、裏切りかねない女を脇に置くとは考えにくい。
だから、あの女性が何者なのか気になっている。
「その女が魔族だっていいたいの?」
「うん。ギルドで聞いてみよう」
後日、冒険者ギルドでそれとなく聞いてみた。
「あーん。そういえばここ数年、妙な一団がダンジョンを形成しているのを見たぜ」
倒せる相手がほとんどだが、たいていは逃げられるという。
「なんか妙なんだ。天空城ってのか? そういうのに乗っていたり、地中を掘り進んで見えなくなるヤツもいた。消えちまった個体もいたな」
なんだそれは。まるでSFじゃないか。
とにかく、この世界は厄介なヤツラから狙われているってのはわかった。
「その妙な一団だが、ここから近いダンジョンに逃げ込んだらしい。野盗の残党もいるかもしれねえ」
腕利きを先発隊としてダンジョンを探らせているという。だが、戻ってこないらしい。
「どうも、胸騒ぎがしてならねえ」
「気をつけます。では行ってきますね」
ダンジョンへ向かう前に、商業ギルドへ。子どもたちの面倒を見てもらうためだ。
「我々は、もうここへは戻ってこないです。あとは商業ギルドさんにお任せしますね」
「はい。商業ギルドの管轄とします。大人の世話役を数名配置しました」
彼女たちは今後、ギルドお抱えの職員となる。ギルドが選んだ顧客を相手にし、横暴な客の相手はしなくていい。性的な要求も、応じなくてもいいそうだ。
なら、安心か。
「お願いします。では、ダンジョンを攻略したら戻ってきますね。そこからは、またたびに出ますので」
「いってらっしゃいませ。お気をつけて」
僕たちは、ダンジョンへと向かう。
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