第11話 伊刈高広02
「赤鬼殿、そろそろ因幡の国ですね」
「そうじゃな、それにしても何もおきないな。
大軍がむかっているのはわかっているじゃろう。
それなのに、だれも出てこないというのは、我らに恐れをなしたのかな。ハハハハハハ」
赤鬼殿は豪快に笑う。
本当に鬼みたいな武将だ。
こいつの戦いは前線で何度も見ている。
一騎当千というのはこの男のことを言うのだろう。
虎丸なきあと、武だけでいえばこいつに敵うものはいないだろう。
「それにしてものどかすぎませんか。
これだけの軍がいるのに、農家は農作業をしているし、街道には茶店まで立っているようですな。
たぶん、因幡城のものは民たちになにも伝えてないのかもしれませんね。
これから、われらの領民となる民たちです。
あまり荒らさないようにしましょう」
「それはダメだ。
我らの恐ろしさを知らしめる良い機会じゃ。
ここら一帯はとことん蹂躙させてもらう。
わが軍には虎丸に恨みを持っているものも多いのだ。
それをきちんと発散させてもらわないとな」
そう、赤鬼軍は基本的にならず者の集まり。
軍隊というより、愚連隊だ。
考えた戦はできないが、個々の力は強い。
しかし、統制はとれていない。
それでも、虎丸の力で押さえつけられていたのだ。
その虎丸がいなくなったのだから、誰もこの部隊を止められない。
九里に仕えているのは、ただ利害関係だけ。
いずれなんとかしないといけないやつらなのだ。
「殿、何か看板が立っています」
部下から報告がある。
「なんだ。なんと書いてある」
「ようこそ、因幡の国へ。
自由に立ち入っていいにゃん。
でも、攻めてきたらダメにゃんって書いてあります」
「なんだそのゆる看板は」
「ガハハハ、引き抜いてしまえ。
もう、因幡の国はなくなるんじゃからな」
そう言って部下に引き抜かせる。
赤鬼の部下たちはその看板を掲げてはしゃぐ。
「ここからは因幡の国、略奪破壊なんでもありじゃ。
そして猫丸の首をとったものには、多大な褒美を与える。
みなのもの、褒美が欲しければ働くのじゃ」
そう言って剣を振り上げる赤鬼。
しかし、なぜかわたしは国境を超えたとたん、何かいやなものを感じるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます