閑話 その頃の創造神探し2
紅葉の電話越しでもわかる上機嫌な褒めてアピールに対応しつつ、九尾一族から一連の情報を受け取った俺は現在、飛行機に乗ってイギリスへと渡っていた。
学生時代ではイギリスどころか必修科目の英語ですら怪しかった俺ではあるが、こと創造神になってからというもの言語で苦労したことはない。
もちろん外国語どころか異世界言語まで自動で翻訳する創造神補正を受けているからではあるが、あるものは使わないと損だからな。
ありがたく有効活用させてもらおう。
「う、うっそ……。なんなのよこの乗り物。百年後の世界で乗った飛空艇なんか勝負にならないくらい速いじゃない……」
初めて飛行機の速度を体感したミゼットがジャンボジェットの窓枠に顔をこすりつけ、目を丸くして驚いているが、そりゃそうだ。
さすがに文明が違いすぎる。
とはいえ、あの飛空艇は空から襲い掛かる魔物達との戦闘も想定していて、外部からの衝撃や攻撃に強いという特徴を持っていた。
ただ現代文明の旅客機と比べるといささか速度に劣るのは仕方のない事だろう。
なにせ向こうの推進力は風の魔石による気圧調整だったし、でっかい気球みたいなもんだ。
頑丈に作った分だけ重く空気抵抗のことも考えられていない。
比べてこちらは空気抵抗を極限まで利用し、機体も軽い現代科学の粋を集めたエンジン様。
スピードと安定性だけは勝負にならんという訳である。
ちなみにミゼットのパスポートは戸神の爺さんにコンタクトを取った時に、事情を理解して一瞬で戸籍と共に必要書類を用意してくれた。
さすが裏で政府と繋がっているだけある、こういうところではやりたい放題のチート陰陽師だ……。
というか陰陽師と関係ない部分で有能すぎる。
俺がどうにかこうにか頼み込む作戦を考えていたのが馬鹿みたいだ。
まあいざとなれば次元収納という案もあったが、せっかくだしこの世界の文明を体験してもらいたかったから感謝しかないよ。
それにあの爺さんときたら、電話での第一声が、「ふむ……。ならば儂がなんとかしよう」だもんな。
ほんと頼りになるというか、なんでもありである。
それにかのエリート傭兵との連絡もばっちりセット。
さすが権力者、顔が広い。
と、言う訳でそんな事を思い出しつつ凡そ半日に及ぶ空の旅が終わった。
あとは紅葉達と合流するだけだが、さて……。
「あわわわわ! 待つのじゃ異邦の民よ! そのパシャパシャする光をやめないか? のう、やめないか?」
さて、も何もなかった。
めちゃめちゃ目立ってた。
空港を出るとありえない程の人だかりが出来ているので何だろうと思いきや、さっそく尻尾と耳を隠した九尾一族のお出迎えらしい。
妖怪の部分を隠そうとも彼女らはいつも和服姿、どちらかというと巫女服に寄せたザ・ジャパニーズな姿であるからして、どうにもこうにも目立ってしまうらしい。
いまもスマホで撮影されていたり動画を取られれていたりとせわしない。
ミゼットも剣を次元収納でしまい込んでいるとはいえ、騎士服姿だからだいぶ目立つと思うのだが、いくら美少女とはいえ欧米よりの顔立ちのこの少女がコスプレしていても、文化の違う日本のコスプレ集団である九尾一族の圧には及ばなかったらしい。
ちらほらと撮影している人も見かけるが、結構自然にスルーされている。
「あ!
「いや、無理だな」
「な、なんじゃと!?」
そんな世界の終わりみたいな顔されても……。
まあ通行人を妨害する程無理な人だかりじゃないので、紅葉には悪いが先に貸し切ってあるコンドミニアムに行かせてもらおう。
歩いていればそのうち人も掃けるだろうし。
それにいざとなったらこの一族が姿を眩ませることなど朝飯前な訳で、いまこうしてスマホのカメラにパシャられているのは本人達にとってさほどでもないという事なのだろう。
まあ、あのちょっと抜けた妖怪である紅葉は動揺して本当に逃げることを忘れていそうだが。
今もなんか、「このままじゃと魂を取られてしまうのでは……?
うむ、やはりアホだ。
すると、誰に気付かれる訳でもなく、意識の合間を縫ってするすると俺に近づいてきた九尾が声をかけてきた。
ほらな、こうやるんだよ紅葉。
お前も見習え。
「ふむ、思ったよりも早かったのう婿殿? 余らが海を渡った時はもうちっとかかったんじゃが」
「え、もうちっとって……。九尾お前、まさか海外へ行くのに地力で移動したのか? 嘘だろ?」
う、嘘だろ……?
どういう身体能力してるんだよ。
いやまあ、EX職業の力を駆使すればミゼットも俺もやろうと思えばできるけどさ。
まさか国を渡るのに走って海面を移動していたとは思わないじゃん。
「何を驚く必要がある? あのような乗り物に頼っていては一族の嗅覚が鈍ってしまうわ。自分の嗅覚を頼りにしてこその、この成果じゃ」
「左様か……」
言わんとしている事は分かるけども……。
あまりにも脳筋すぎる。
「なんじゃその顔は気に食わんのう。せっかく余の一族が娘婿殿に配慮してやっているというに。悲しくて涙がでよる」
そう言ってしくしくと泣き真似をする九尾を見つつも、文明ってなんだっけと意識を遠のかせるのであった。
ま、まあ、こうして創造神の手がかりも見つかったんだしいいか。
そう言うことにしておこう。
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