使徒2
ミゼットを使徒にする事が決定され、さっそく創造神の大神殿に併設された祭壇でコントラクトモードを執り行う事になった。
どうせ今日中に二人を使徒にするのだから、どちらが一番乗りでもそんなに大差はないと思うのだが、ミゼット的には紅葉に先を越されるのが嫌なのだとか。
という訳で、まずは彼女との契約を優先する。
契約の内容は単純で、用意された祭壇の上に対象が居る状態でパソコン画面をポチポチと操作するだけである。
こう、ディスプレイに表示された【契約は解除できませんが宜しいですか?】とか、【対象の許可は取りましたか?】とかいう項目にチェックを入れるだけだったりする。
神聖さの欠片も無く、なんというか役所の手続き感が半端じゃない。
だがこの項目を入れる度にミゼットの表情に反応があるので、どうやらチェックシートの内容は向こうにも伝わっているらしい事が分かった。
どうやらお互いの認識が一致しているかどうか、これで分かるらしい。
まあ、そうじゃなきゃチェックシートの意味がないけどな。
そして全部で数十項目にもなるシートの要項をマークしていくと、最後に記入式の項目が現れた。
【最後の質問です。あなたは使徒となるこの者に何を望みますか?】
どうやらこの問いに答える事で契約が完了するらしい。
ただ、ちょっと感覚的な質問であったので少し考え込んでしまう。
そもそも俺がミゼットを使徒にしようとしたのは、使徒にして何かをやらせたかったからではない。
ただ力を与える事によってこれからの困難を共に乗り越え、一緒に旅を続けていく事ができると思い契約に踏み切る事にしたのだ。
故に、使徒として何を望みますかと言われても返答に困る。
別にミゼットをこき使いたい訳ではないのだから。
だが、そうだな。
それでも尚、強いて言うならば────。
────これから先も、俺の最も信頼する相棒であるミゼット・ガルハートのあるがままを望む。
そう答えた時、俺の契約の内容が向こうにも伝わったのか、ミゼットは頬を上気させて満面の笑顔を零した。
まるで俺がそう答えると信じていたと、確信していたと言わんばかりの笑顔である。
「……参ったなこりゃ」
ちょっとどころか、めっちゃ可愛い。
俺はロリコンではないはずだが、それでもグッとくるレベルの魅力がそこにはあった。
本当に今夜押し倒されたらこの魅力に抗えないまであるぞ。
そして、そうこうしている間にも契約は成立する。
【契約条件を満たしました。ミゼット・ガルハートを
【種族進化の条件を満たしました。ミゼット・ガルハートの種族をヒト族から英雄に変更。さらに進化条件を満たしました。ミゼット・ガルハートの種族を英雄から天族に変更】
【職業進化の条件を満たしました。ミゼット・ガルハートの職業を聖騎士から守護神に変更】
────以上でアップデートを終わりますと、そう告げて全ての変化が収まった。
特に契約中に光ったりとかエフェクトが流れたりとか言うのは無かったが、それでもログによれば種族進化を飛び級して、さらに職業進化も果たしたらしい。
見た目はいつものミゼットのままなので、何が起こったのか分からない紅葉とシーエはきょとんしたままだ。
ただ、シーエの腕からスライムみたいににょきっと顔を出現させていたデウスには何か感じ取ることが出来たのか、真剣な表情をしている。
「どうだ? 何か変わったか?」
「ええ、ばっちりよ。でも今はそれよりも先に言いたい事があるの。……ありがとう、信じてたわケンジ」
「んぉ!?」
突然祭壇から飛び降りたミゼットが俺に抱き着き、熱烈なキスをした。
あ、めっちゃ甘い香り────。
────じゃなくて!
いまこれするのはマズいから!
俺の紳士が理性を保てず悲鳴を上げてるぞ!
おいこら、後ろで「ひゅーひゅー!」とか言ってるの誰だ!?
どうせ紅葉だろ、分かってるぞ!
だが、いずれこうなるのは分かっていたが、まだまだ少女の段階であるミゼットに手を出す訳にはいかん。
俺は限界まで理性を総動員してなんとか耐えると、不自然ではない程度に時間を置いて口を離した。
きっと彼女が信じていたというのは、最後の問いの事なのだろう。
まあ、あれだけ嬉しそうな顔をみせられちゃあ、いくら鈍い俺でも理解はできる。
「あ、あー、そのだな。なんというか……」
「んふふ! 顔が真っ赤ねケンジ」
「なっ!?」
「まあ良いわ。あなたが私に気を使ってくれているのは分かるから、今は引いてあげる。……でもそろそろ、私も我慢ができそうにないから、今後は覚悟しておくことね。特に夜はね」
それだけ言うとミゼットは固まる俺を放置して過ぎ去り、「今度はあんたの番よ」と紅葉を祭壇に引っ張っていった。
おいおい、勘弁してくれ。
これ以上グイグイ来るつもりなのかこのお嬢様は。
そんな事を思いながらも、のぼせてしまい回らない頭をなんとか働かせ、次のチェック項目に移る。
あ、こら、祭壇の上で奇妙な踊りを踊るんじゃない。
何なんだその踊りは。
「ちょっとてんしょんとやらが上がってしもうた」
「そ、そうか……」
「うむ」
それを聞いた俺は、こいつの事は深く考えても仕方がないので放置する事にしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます