リザルト2
突然振動と共にピピピと鳴り出したスマホを手に取り、画面を確認する。
すると予想通りと言うべきか、前回の魔王戦と同様のメッセージが記載されていた。
やはり創造の破綻関連の連絡だったか。
そうだと思ったんだよな。
【おめでとうございます! この時代における決定的な問題を解決した事で、『創造の破綻』をまた一つ回避しました! これにより、『ストーリーモード・チャプター2』を終了します。お疲れ様でした】
はいはい、チャプター2終了ね、了解。
ただここで問題になるのが、この時代で時間移動をすると次は千年後にこの迷宮で再出現すると言う事だ。
これは恐らく間違いないだろう。
なにせタイムマシンの時間移動のブロックが百年後、千年後、1万年後、となっている上で前回は百年後に飛んだのだ。
であるならば、順当にいけば次に飛ぶ時間先はもう決まっている。
その上で、果たしてこの役目を終えた迷宮空間が千年後に残っているのかどうか。
もし仮に残っていなかった場合、空間の無いこの地に日本から転移しなくてはならない俺は生き埋めになる可能性がある。
なるべく早く脱出しなくてはならないだろう。
そこで俺はとりあえずリザルト画面を確認しつつも、前回と相違ない事を理解しながら魔力知覚を発動する。
そして魔力知覚で意思疎通が可能となった浮遊精霊へ世界樹への伝言を頼み込む。
用件は迷宮の保護だ。
世界樹にこの空間の維持を頼んでおけば、力を取り戻した彼女が俺の出現位置を生き埋めにする事はないだろう。
さて、これで準備は整ったな。
さっそくだが脱出させてもらうとしよう。
チャプターの終了と共に転移時間が迫って来た俺は、黒子お嬢さんとミゼットを神殿に避難させ、俺自身もデウスと共にこの迷宮から脱出するのであった。
◇
日本に戻って来た。
神殿内部に避難させていたメンバーは全て次元収納へとさらに隔離させ、アプリ内部で起こっている急激な時間変異から切り離している。
まだ契約に対する明確な返事をしていないデウスだけは、決着がつかないまま話を先送りにされるのが嫌なのか最後まで次元収納される事を拒んでいたが、次元収納せずにアプリ内部の時間が加速すると一千年のタイムラグが発生するので問答無用で放り込んでおいた。
緊急事態なので致し方なしと言った所だ。
「にしても、やけに空が暗いな……」
デジタル時計を見るとまだ真昼間の2時だというのに、空が闇に覆われ月明り一つない。
というか電灯も消え去り、代わりに青白い火の玉がふよふよと夜道を照らしていた。
明らかに異常事態だ。
異世界では3ヶ月程を消費したと言っても、こちらの世界ではまだ2週間も経っていないはず。
いくら九尾が復活しかけているとはいえ、日本壊滅が早くないか?
というか、テレビをつけようにも電気が通っていない。
部屋の中も真っ暗だ。
仕方なく俺の魔力で光弾を生み出し、その場で維持する事で蛍光灯替わりにしているが、一体どうなってしまったんだ……。
これがもし九尾一族の仕業だとして、あの源三の爺さんと傭兵ハリー・テイラーがたった2週間も耐えきれなかったなんて事、ありえるだろうか?
いや、絶対に無いとは言い切れないし、九尾復活のタイミングが早まったら万が一だってある。
ただ、それを想定していない二人ではないだろうし、ただ降って湧いた力を持っている俺とは違い、その道のプロである彼らがアクシデントの一つ二つで失敗するはずがない。
一ヶ月は耐えて見せると約束していたのだ。
であるならば、2週間弱ならば余裕をもって対処してくれている事だろう。
「となると、これは九尾の異能によって日本が壊滅したのではなく、この都市だけが異能に巻き込まれていると考えた方がいいな。詳しくは分からんけど……」
そう結論付けた俺は一先ず安心し、深呼吸する。
思っていた以上に深刻な事態にはなっていたが、まだ時間はあるようだ。
というか、こういう時こそ状況の分析にジーンの力を借りたいのだが、身代わりジーンは勝手に死んで次の身代わりジーンに乗り移っちまったしなぁ。
相変わらず自由な奴だ。
が、居ない者に文句を言っても仕方がない。
「とりあえずリザルトを確認するか」
本当はここで呑気に加速している異世界を【ログ】で確認しつつ眺めて居たいのだが、そうもいかない。
今は明らかな異常事態であるので、やるべき事に優先順位をつけて確認していく事にする。
まず行わなければならないのは、アプリから貰えるプレゼントの選択。
前回同様ならここで三つの選択肢が出るはずだが、さて……。
【チャプター2を終了した優秀な創造神である貴方に、アプリから一つだけプレゼントがあります。プレゼントはいくつか候補がありますが、今回もどれか一つしか選べないので慎重にお選び下さい】
【プレゼント一覧】
一、質問をする権利(一度のみ)。
二、キャラクターへの経験値ボーナス(基本職レベル50ポイント分)。
三、クリエーションモードに依存しない究極武器(不壊属性)。
「ここは前回と同じか……」
前回は質問をする権利を得たが、今回はさすがに質問は悪手だろう。
前回の内容をさらに詳しく追及したい場合は、次はチャプター3をクリアして余裕をもってするしかない。
とにかく、今欲しいのは戦力だ。
で、消去法でプレゼント二、プレゼント三、のどちらかになるのだが、ここで三を選ぶのはギャンブル過ぎる。
不壊属性の究極武器が強力なのは一目瞭然だが、それがどんな武器なのかが全く明記されていないからだ。
剣なのか銃なのか弓なのか、そのまた別の何かなのか。
運よく俺と相性の良い武器が出てくれれば選ぶ価値もあるだろうが、ここで賭けに失敗したらと思うと候補には上がらない。
それと比較して二のプレゼントであれば、確実な強化が見込める。
さらに言えば、現在の俺の職業が聖騎士と悪魔である事に加えて、空き枠になっている残りの1枠を埋めてからこの権利を行使すれば、レベル1の基本職のパワーレベリングが可能なのだ。
これ以上ない報酬と言えるだろう。
「さて、受け取る報酬は決まったが、問題は残り1枠を何にするかだよな……。って、え?」
アプリでキャラクター画面を開き職業欄を確認すると、そこにはいつもと違う項目が現れていた。
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